哲学ってなんだ: 自分と社会を知る (岩波ジュニア新書 415)
- 岩波書店 (2002年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005004157
感想・レビュー・書評
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現代での哲学の問題点を知りたく読了.
問い「哲学ってなんだ」に著者が応答します.
古代から近代までの哲学の趨勢が書かれています.
第3章では哲学の弱点もわかりやすく書かれています.
第5章 「自己」を哲学する は中高生に強く薦めたい章です.
著者が何度も強調するように,
近代哲学についての著者の理解は一般的理解とずいぶん異なる(cf. p. 69)ことを意識して読むと良いと思います.
https://tinyurl.com/yxxt7k5g
「哲学は宗教=神話の次に登場した世界説明の新しい方法だった」(p. 28)
この説明すごく好きです.
タイトルのように問われた時に,こう答えようと思います.
https://note.com/hidenor/n/n173b8a2197d6詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
比較的若い読者に向けて書かれた哲学の入門書です。ただし、著者自身の哲学的立場が前面に押し出されており、「岩波ジュニア新書」が想定しているはずの中高生の読者に適切な入門書といえるのか、若干疑問もあります。同じ「岩波ジュニア新書」からはバークリの研究者である戸田剛史の『世界について』も刊行されていますが、一般的な哲学の問題に触れるためにはそちらの本を手にとったほうがいいかもしれません。
著者はすでに『自分を知るための哲学入門』(ちくま学芸文庫)という入門書を刊行しており、近代哲学における認識論のアポリアをフッサールがどのように乗り越えたのかという点に焦点を当ててみずからの哲学的主張を開陳しています。それに対して本書では、近代哲学における「自由」の問題に焦点を当て、とくにヘーゲルにおいて各人の自由の追求が相互に支えあうことのできるような社会への展望が示されたことを高く評価しています。
また本書では、フロイトの精神分析についても考察がおこなわれています。著者は、フロイトの説は人間の心についてのひとつの信憑の表明でしかないといいつつ、無意識と呼ばれる欲望のかたちによって、われわれが世界に向きあう仕方が規定されていることがフロイトによって明らかにされたことを評価します。そのうえで、みずからの身体性や欲望、あるいは著者自身のいう「エロス」がどのような対象へと向けられているかを深く了解することで、自分自身を知り、また自己の自由を世界のなかで実現していく可能性が開かれていくと論じています。 -
「借」(大学の図書館)。
哲学を勉強しようと思い、
プラトンからはいったら挫折した時に、
友人からすすめられた一冊。入門として読んだ。
「哲学とは何か。」
についてわかりやすく解説した本。
自分がいかに哲学を誤解しているかにも気づけた。
もう少し肩の力を抜いて哲学の勉強をしようと思った。
哲学をもう一度勉強しようと思えた。
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素晴らしく内容の濃い、良い入門書。しかし、これがジュニア新書という位置づけはどうなんだろうか。やさしいのはタイトルだけで、内容は大人でも若干難しい表現が多く使用されている。大人が哲学の入門書として読むには丁度良いと思う。しかし、この装丁はどう見ても子供用で、人前で手にするには恥ずかしい。このミスマッチ感は、出版社の選択ミスとしか考えられない。
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100
「自分とは何か」の問いかけに、味わい深い議論を展開している。哲学的な考え方をするということは、自分を見つめ、人間を見つめ、社会を見つめる視野を確保することにつながる。(『世界史読書案内』津野田興一著 紹介より)
「哲学というとなんだかむずかしそう。けれど、偉い人の立派な考えを学ぶのが哲学ではない。何か困難にぶつかったとき、ものごとを根本から考えてみたいとき、そこにはたくさんのノウハウがつまっている。哲学者たちは自由や社会、そして自己についてどう考えてきたのか。自分をよりよく知るための役に立つ哲学入門。」
目次
第1章 哲学との出会い
第2章 哲学の「方法」について
第3章 哲学の難問
第4章 近代の哲学者たち(近代哲学がめざしたこと;自由をつきつめる)
第5章 「自己」を哲学する(「自己」とは何か―自己意識と無意識;他者関係の現象学)
おわりに 再び哲学とは何か
著者等紹介
竹田青嗣[タケダセイジ]
1947年生まれ。1971年早稲田大学政経学部経済学科卒業。現在、明治学院大学国際学部教授、哲学者、文芸評論家 -
最後まで読み終えて、「哲学とは」ではなく、「哲学ってなんだ」というタイトルであった事にひとり納得。読み始める前は哲学という学問は何なのかという一般的な説明をしてくれる本かなと思っていたけど、哲学という思考法の捉え方の流れを著者の目線から説明している。著者の青田さんの個人的な意見が前面に出ているが、どういう立ち位置の意見であるかを著者自身が注釈を入れるように説明してくれるので、分かりやすかった。
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哲学とは一体何なのか?という単純素朴な疑問がありこの本を読む。近代以前の絶対君主的な社会から相互に契約を結ぶという「自由」を主とした社会に変革する中で、宗教的な"物語"ではなく普遍的に了解される原理を導き出すこと。これこそが哲学の本質的役割だということだろうか。
絶対的に正しい世界というものは存在せず、世界を自分がどう理解するのか、また自分と他人との関係性をどう理解するという「視点」の転換が面白い。絶対的な社会が存在することを前提に、それを見つけ出すことこそ(そしてそれには知識が不可欠であること)が哲学だと思っていたから。そうだとすれば、哲学は一部の学者の高尚な学問ではなく、誰もに関わりうる、というか精神的な困難に陥ったときに自分を支えてくれるものだと理解できる。
哲学の本なんだけど、文学について書かれた次の箇所が心に響く。まさに。
p11 表現を通して、同じような事態にぶつかって苦しんでいる人間に、それがじつは多くの人が共有している理由のある苦しみだ、ということを文学は示唆する。そこに文学の大きな力がある。そこに必ずしも解決策があるわけではない。でもそれが生き生きと表現されているということだけで、ふしぎなことに人間の苦境を救う。 -
岩波ジュニア新書からの出版なので、この本は中高生向けの本ということになっている。
しかし、哲学のテキストなどで参考文献として紹介されていたりして、内容的にはかなり質の高い入門書である。
特に近代から現代にかけての哲学が紹介されており、生活感覚に則した説明でわかりやすい。
「自由」というテーマで、近代以降の哲学者の紹介も、今日的な問題解決のための指針となり得るものであるし(第4章)、自己とは何かをヘーゲルとフロイトの思想から、展開する章(第5章)も哲学と生きていくことの関係を理解できる内容である。
ところで、私は入門書が好きである。
これまでに何冊もの入門書を読んだ。
入門書には、事柄の説明の他に「語り口」が学べる。
研究者の方々は、入門書を読んでわかったような顔をするのは、勘弁ならぬことかも知れないが、生活の中の必要性から考え、また他者に語らなければならない一般人には、やはり役に立つ。
ただ、入口の知識だけで全てを理解したような錯覚だけは避けたい。
謙虚な姿勢は忘れないようにしたい。 -
私たちは、青年期に、自分の生がたった一度に限定されていること、
自分こそこの生の取り換えがたい主人公であること、つまり、自分という
存在の絶対的な交換不可能性に気づく
哲学は、そんな私たちに、誰もが納得できる「普遍的」な世界理解の
あり方を“作り出す”ための方法を示す。しかし、哲学は、あくまで
“自分で考える”ための方法であり、自分が属している関係自身を
支えるために考えよ、と教えるものだ。
世界を知るということは、世界それ自体を知るということではなくて、
世界についての自分の理解のありかた、また自分と他人の関係の
あり方を了解するということなのである。 -
すごく分かりやすいけれども、少し偏ってるような気がしました。
哲学とは、誰もが共通に納得できる「普遍的な」世界のあり方をつくりだす方法らしい!