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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784005004218
みんなの感想まとめ
漢字の成り立ちや意味に迫ることで、知識を深める楽しさを教えてくれる一冊です。特に、日常的に使われる漢字の背景や構造を知ることで、言葉の奥深さに気づかされます。著者は、国語や漢字に対する苦手意識を持つ読...
感想・レビュー・書評
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言語学面白い
漢字のはなしではあるんだけど、言語学者の言語学の話で面白かった。言語学って、本当に人類の起源的な考古学的な分野で話にロマンがあって面白い。考古学好きだな。こうやって沢山本が読めるようになったのも、言葉が生まれて保存出来るようになったからだし、言葉が生まれたその時って明確に分かる様な話で無いのも面白いなと思った。
『漢字のはなし (岩波ジュニア新書 421)』 阿辻哲次 #ブクログ #読書 #KindleUnlimited
https://booklog.jp/item/1/4005004210
フランス語の好きな所は、音を大事にしてる所なんだけど、日本発祥の平仮名は音を大事にしてる表音文字だし、俳句とか和歌が成立するのも日本語の音が美しく価値があるからだから、フランス語の感性と日本語の感性は似てると思う。フランス人が日本文化好きな人多いの分かるよ。
『漢字のはなし (岩波ジュニア新書 421)』 阿辻哲次 #ブクログ #読書 #KindleUnlimited
https://booklog.jp/item/1/4005004210
阿辻 哲次
(あつじ てつじ、1951年〈昭和26年〉7月10日[1] - )は、日本の漢学者・言語学者・中国文学者。京都大学名誉教授。漢検協会漢字文化研究所所長。日本漢字学会初代会長。大阪府出身。家業が大淀区南浜の印刷工場であり、人名などで活字にない文字が注文された際に、既存の活字を削るなどしていたのを見て、漢字に興味を抱く[2]。大阪府立北野高等学校を経て[2]、1975年京都大学文学部中国語学中国文学科卒業。1980年京都大学大学院博士課程中退。『均社』第四代社長[3]。静岡大学助教授。京都大学大学院人間・環境学研究科教授、2017年定年退任、名誉教授。文化庁文化審議会国語分科会漢字小委員会委員で、2010年の常用漢字追加の選定に携わる。2018年に設立された漢字を専門に研究する日本初の学会・日本漢字学会では初代会長に選ばれた[4]。漢字の研究で国内外に知られ、甲骨文字発祥の地である中国河南省安陽市で開催された国際漢字大会では来賓となっている[5]。吉川幸次郎や藤堂明保の中国学の流れを受け継いでおり、白川静の学説に対しては批判的な立場にある
「ヒトが類人猿から進化するきっかけとなったのが、まっすぐに立って歩くことと手で道具を使えたこと、それに火を管理する能力を備えたことであったとすれば、文明が成立し、それが発展する契機となったのは文字の発明だった、といっても言いすぎではないでしょう。 人はだれでも、自分の言語をもっています。たとえ言語をつかさどる身体的機能や器官になにかの障害があって、日常生活でことばをうまく話すことができない人にも、もって生まれた母語はあります。だからこそその人は好きな本や雑誌を読んだり、あるいは友だちに手紙を書くことができるのです。 しかしことばというものは、もともとノドの声帯が空気をふるわせて発生した音声の連続ですから、口から発せられた次の瞬間にはもう消滅してしまい、テープレコーダーのような機械でも使わない限り、それを保存することはできません。また人間はどんなに大きな声を出しても、その声が届く範囲にはかならず限界があります。それはメガフォンやマイクロフォンを使っても、やはり同じことです。 口から発せられることばだけでは、声が届かないほど遠いところにいる人になにかを伝えることができません。だから人類は、文字が発明されるまでの長い間、人と人とが直接に顔をあわせる場か、あるいは声が届く範囲内で、さらに発せられた音声をリアルタイムで聞ける場合にしか、おたがいのコミュニケーションがとれないという状況にありました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「ここに文字の大きな役割があります。文字とはある特定の言語を書き表すために開発された符号システムであり、これを使うことによって、口から発せられ、瞬間的に消えてしまう音声によることばを、「記録」という形で、目に見えるものに定着することができました。こうして記録されたことばは、その文字に関する約束ごとを知っている人ならば、記録された内容を読むことで、そこに書かれている情報や知識を共有することが可能です。 さらにありがたいことには、文字が記録された素材はほとんどの場合、それほどかさばることがありません。ビルの壁面や山の岩肌などに記された文章、あるいは大きな石碑というようなケースでもない限り、記録を遠いところへ運ぶことも困難ではありませんでした。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「文字をもたない、あるいは文字を使わない人々や社会について、これまでともすれば「未開で遅れた状態」と考えられてきました。しかしそれは、文字をもっている世界から対岸を眺めた時の、一種の差別と偏見に基づく考え方といわねばなりません。文字をもたない世界には、文字をもっている世界とはまったく質を異にするコミュニケーションの方式があって、文字は必ずしも「文明的な世界」と「野蛮な状態」を分ける指標とはなりません。 無文字社会で文明を発達させたもっとも代表的で有名な例は、かつて南米大陸で華々しくさかえたインカ文明でしょう。 ペルー南部のクスコ盆地を中心に、十五世紀から十六世紀初めまで栄えたインカ帝国の文化は、きわめて華麗かつ高度に展開されたものでした。しかしインカの人々は文字をまったく使いませんでした。彼らは文字の代わりに「結縄」(縄を結ぶことでさまざまなことを記録する方法)を使って、多くの記録を残しました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「文字をもたない、あるいは文字を使わない人々や社会について、これまでともすれば「未開で遅れた状態」と考えられてきました。しかしそれは、文字をもっている世界から対岸を眺めた時の、一種の差別と偏見に基づく考え方といわねばなりません。文字をもたない世界には、文字をもっている世界とはまったく質を異にするコミュニケーションの方式があって、文字は必ずしも「文明的な世界」と「野蛮な状態」を分ける指標とはなりません。 無文字社会で文明を発達させたもっとも代表的で有名な例は、かつて南米大陸で華々しくさかえたインカ文明でしょう。 ペルー南部のクスコ盆地を中心に、十五世紀から十六世紀初めまで栄えたインカ帝国の文化は、きわめて華麗かつ高度に展開されたものでした。しかしインカの人々は文字をまったく使いませんでした。彼らは文字の代わりに「結縄」(縄を結ぶことでさまざまなことを記録する方法)を使って、多くの記録を残しました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「たとえば西ヨーロッパに位置する国々では、英語をはじめとしてフランス語、ドイツ語、オランダ語、イタリア語それにスペイン語などが使われ、それはもちろんそれぞれ異なった言語ですが、しかしそれらを表記するための文字は、日本で「アルファベット」、あるいは「ローマ字」と呼んでいるラテン文字ただ一種類だけです。 同じように、ロシア語やウクライナ語、それにブルガリア語など、スラブ語系統に属する言語はいずれも「キリル文字」(図 a)という文字で表記されています。これはもともと古代ブルガリア語(古代教会スラブ語)の表記に使われた文字で、九世紀にギリシアの伝道僧キリロス(別名コンスタンティノス)とメトディオスの兄弟が、ギリシア正教を布教するため福音書を翻訳した時に、キリロスがギリシア文字の大文字の形に基づいて作った文字で、だから「キリル文字」と呼ばれているのですが、今では上にあげた言語のほかにセルビア語、マケドニア語などの表記にも使われます。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「 日本人の言語生活に欠かせない漢字は、いうまでもなく中国で生まれた文字でした。しかし今では漢字は中国語以外に日本語や韓国語を書くのに使われ、以前はベトナムでも言語の表記に使われていました。 言語の数にくらべて文字の種類が格段に少なくなっているのは、このような理由によるわけです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「考古学と歴史学の書物によれば、世界ではじめて文字を使ったのは、文明の発祥地といわれる古代バビロニアで都市国家を営んだシュメール人だったそうです。 メソポタミアの南部、ユーフラテス川の左岸低地にある「ウルク( Uruk)遺跡」(現在の地名ではワルカ Warka)では、一九二〇年代末期から発掘がおこなわれ、その過程で「第四層」と呼ばれる地層から、計五七〇個の小さな粘土板が発見されました。これはだいたい紀元前三五〇〇年から三〇〇〇年の間に位置すると推定されるもので、その表面に「古拙文字」と呼ばれる文字(図 b)が刻まれていたことが注目を集めました。この文字が発展してやがて「楔形文字」になっていくのですが、この段階では文字は原始的な象形文字として書かれています。これが現在の段階で世界最古と考えられている文字です。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「いっぽう文明の古さではメソポタミアと並び称されるエジプトでも、紀元前三〇〇〇年前後から文字を使っていたようです。ヒエログリフ( Hieroglyph)と呼ばれる古代エジプトの文字(図 c)はきわめて絵画的で、ちょっと見たところでは文字か絵か見分けがつかないようなところもあります。実際にその文字はパピルス文書や宮殿の壁画などで、カラフルな文字が絵画とあいまって、きわめて美しい装飾と感じられます。 エジプトでは最初、王の周辺を中心に文字が使われていました。絵画に近いヒエログリフが神殿の壁面などに描かれると、見る者には威厳を感じさせますし、美しい装飾的効果を発揮することもできます。しかしやがて現実の政治や経済活動、あるいは法律など実務の面で文字が頻繁に使われるようになると、絵画的な文字では記録するのに手間と時間がかかり、仕事の能率が悪くなってしまいます。それで実務にあたっていた書記などが、ヒエログリフを簡略化した書体を作りました。 エジプトの文字はその後さらに簡略化された書体に変化しつつ、長時間にわたって使われてきましたが、しかし最終的には誰一人としてそれを読み書きする人間がいない「死文字」となってしまいました。現代のメソポタミア地域やエジプトでは、古代文字となんの「親戚関係」ももたない、まったく別種の文字が使われています。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「日本にはもともと固有の文字がなく、日本語を表記するために日本人がはじめて使ったのは、となりの中国で使われていた漢字でした。そしてやがて漢字を改良して、仮名という固有の民族文字を発明しました。仮名の発明は今から千年以上も前のことで、それ以来日本では、漢字と仮名という二種類(仮名をさらに分ければ三種類となります)をしかるべく使い分けて文章を書くことが、現在にいたるまでずっと継続しておこわなわれています。世界最長の歴史をもつ漢字 同じ文字を使いつづけるというのは日本だけのことではなく、そもそも漢字の本家である中国がまさにそうなのでした。漢字はこれまでに三千年以上の歴史をもっていますが、中国で文明が発生してから現代にいたるまで、漢字はずっと基本的なシステムを変えることなく使われつづけています。もともと世界でも指折りの古い歴史をもつ文字でありながら、現在にいたるまでずっと、膨大な数の人間によって読み書きされているという文字は、世界広しといえども、実は漢字だけなのです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「現在の世界で使われている主要な文字には、まず西ヨーロッパと南北アメリカ、南半球とアジアのいくつかの国で使われるラテン文字があり、旧ソ連や東ヨーロッパのいくつかの国ではキリル文字が使われています。 東アジアの中国と日本は、もちろん漢字です。同じアジアでも、インドにはきわめて多種類で複雑な様相を示すインダス系統の文字があります。またアラビア半島周辺にはアラビア文字の文化圏があります。 アラビア文字は紀元後数世紀のあいだにアラビア半島北部で作られたと考えられますが、やがてイスラム教の勃興と浸透につれて『コーラン』が各地で読まれるようになり、それに伴ってアラビア語とアラビア文字がイベリア半島からアフリカとアジアに広がりました。その結果、各地の言語がアラビア文字を使い、それに適宜改変を加えて書かれるようになって、今ではアフリカのスワヒリ語、ハウサ語、ベルベル語など、またアジアのトルコ語、マレー語、ウルドゥー語、パシュトー語、ペルシア語などの表記に使われるようになりました(ただし現在ではアラビア文字からラテン文字に変えたところもあります)。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「冒頭に記したように、これまでの世界には古今東西あわせて約四〇〇種前後もの文字が存在しましたが、私たちが暮らす東洋の社会でもっとも影響力が大きかったのは、いうまでもなく漢字でした。しかしその漢字が、いったいいつごろに、中国のどのあたりで、どのようにして、だれによって作られたのか、その正確なところは今もまだ に包まれています。 ルーツがはっきりとわからない文字は、決して漢字だけではありません。文字とは本来そういうもので、発明年代や発明者についてはわからないことの方が多いものです。 もちろん中には、作られた年代や作った人の名前がはっきりとわかっている文字もあります。たとえばチベット系のタングート族が建てた西夏国で一〇三六年に公布され、以後約四〇〇年あまりにわたって使われた「西夏文字」(全部で六千数百字あります)は、野利仁栄という人が西夏国王李元昊の命をうけて作ったことがわかっています。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「ほかにも朝鮮・韓国語の表記に使われる「ハングル」も、一四四三年に李朝第四代世宗の命で作られ、一四四六年に『訓民正音』という書物で公布されたものです。これらの文字はいずれも、作られた年代と作った人物がだいたい明らかになっています。 しかしこのような文字はむしろ例外で、世界中の文字は、制作年代もまたそれを作った人の名前もわからないのがふつうです。ましてや漢字は世界有数の古代文字であり、その誕生の経緯は歴史のはるかかなたにかすんでいます。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「蒼頡があるとき野原に出てみると、地面の上に鳥や動物の足跡がいっぱいついていました。足跡はいっぱいあるのですが、しかし彼の目の前に実際の動物や鳥はまったくいません。それでも地面の上の足跡をよく観察してみると、ウマならウマ、カラスならカラスと、その足跡を残したのが何の動物や鳥なのかが簡単にわかります。 そのように地面に残された足跡から動物や鳥を特定できるのは、足跡に各動物の特徴がうまく表現されているからにほかなりません。だからこそ足跡の形を見るだけで、実際の動物が目の前にいなくても、人はその動物を脳裏に思い浮かべることができるわけです。 その事実に気づいた蒼頡は、足跡と同じように、さまざまな事物の特徴をうまく取り出し、それを造形的に表現することによって、その事物を意味する文字を作ることに成功した、といわれています。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「蒼頡がこのようにして漢字を発明したという伝説を、「蒼頡造字伝説」と呼んでいます。それにしても、地上のどこにでもあり、普通の人間ならまず気に留めることすらない鳥や動物の足跡から、なんと文字を発明してしまったというのですから、蒼頡はモノの観察眼が非常にすぐれた人だったようです。 この常人にはとうてい及ばない観察眼を、古代の中国人は、蒼頡には目が四つあったという伝承で表現しました。もちろん人間に目が四つあるとは荒唐無稽な話です。しかし伝説は、それが信じられていた時代には歴史的事実と認識されたもので、実際に絵に描かれた蒼頡の顔には必ず目が四つついています。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「ここで実際の甲骨を見てみましょう。 図 1‐ 3は北京の天安門広場に面して建つ中国最大の博物館「中国歴史博物館」に所蔵される有名な牛の骨で、全長が三〇センチほどあります。これほど大きな甲骨は珍しいのですが、それはさておき、この骨の中央三行には、翌日から始まる新しい「旬」(一〇日間。当時の時間の区切り方で、現代の一週間に相当する)になにかよくないことが起こらないだろうか、と占った文章が刻まれています。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「占いの内容を記し、しかもかならず王の判断の通りになっているという事実を、逆から考えるならば、王が読みとったお告げが実現されるまで、その甲骨は文章を記録されないまま、いわば「白紙」(「白甲骨」?)で保存されていたことになります。そして王が読みとったお告げが実現された段階で、はじめて甲骨に文字を刻みました。 すなわち甲骨文字とは、殷を統治していた王の判断の絶対的な正しさを証明するために記録されたものだったのです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「簡体字の歴史は実は非常に古く、決して最近になってから作られたものではありません。そもそも甲骨文字以来の漢字の歩みは、書体の変化という形式をとりながら、実際には複雑な字形を簡略化してきた歴史でもありました。昔から文字を書く人はより速く、より簡単に書ける文字を求めて、すすんで簡便な書き方を追求してきたのです。 しかし、そのような簡便な形の文字は「略字」とか「俗字」とか呼ばれ、かつては一部の階層や特殊な状況のもとでしか使われず、正統的な文字とは認められませんでした。またそれを使って書かれた書物も、価値が一段低いものと見なされていました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「中国近代文学の生みの親である魯迅(一八八一─一九三六年)は、漢字を使わずラテン文字だけで中国語を書く運動を熱烈に支持した文字改革論者でした。彼は漢字の廃止を究極の理想とし、「漢字が滅ばなければ中国が必ず滅ぶ」とまで述べました。また中華人民共和国の建国を指導した毛澤東(一八九三─一九七六年)は、やがては中国の文字を漢字から世界共通の表音文字に改めなければならないと主張していました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「 「漢字」の「漢」は、実は民族名からきています。中国は広大な国で、その中には合計五六種からなる民族の人々が暮らしています。たとえば北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との国境地帯の中国側にいる人々は、国籍としては中華人民共和国の国民ですが、民族としてはほとんどの人が朝鮮族で、日常的に使っている言語は朝鮮語です。また内モンゴル自治区に暮らす人々も同じように国籍としては中国人ですが、ほとんどがモンゴル族で、彼らはモンゴル語を話しています。さらに「民族のるつぼ」とよばれるシルクロード地域や、少数民族がたくさん暮らす西南の雲南省などでは実に多種多様の民族が入り交じって暮らしており、各民族の人たちは自分たちの言語を話しています。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「このような多民族国家としての中国で、もっとも多く暮らしている人々が「漢民族」であり、実に人口の九五%前後に達します。そしてその漢民族の言語を「漢語」と呼んでいます。ちなみに日本で一般に「中国語」と呼んでいる言語は、実はこの「漢語」のことです。少しややこしい話ですが、日本語で「漢語」といえば「やまとことば」に対する「漢語」、つまり中国から導入された語という意味になりますが、中国では「漢語」を「漢民族が話す言語」という意味で使っています。その「漢民族」が話す「漢語」を書くための文字が、ほかでもなく「漢字」だというわけです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「漢字を中国から受けいれて、それで自分の国の言語を書き表してきたのは決して日本だけではありません。かつて朝鮮半島に建てられた百済や新羅などもそうでしたし、時代的には遅くなりますが、過去のベトナムもそうでした。 こうして東アジア一帯では漢字が各国内で使われ、その結果、漢字は国際共通文字としての役割を備えていくこととなりました。この地域には、話し言葉はそれぞれちがっていても漢字を通じて交流できる集団が形成されました。これを「漢字文化圏」といいます。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「もともと文字をもたなかった日本人が、はじめて接触した文字は中国の漢字でした。しかしそれは、たとえばローマ字と漢字とアラビア文字などいくつかの文字が目の前にあって、そのなかから漢字を選んだ、というわけではなく、日本人の目の前には漢字しかなかったわけです。いわば日本が置かれた地理的状況に由来する宿命だった、というわけです。 日本のすぐ近くには中国という超大国があり、江戸時代末期に産業革命を経験した西洋社会と出会うまで、日本では文化的に学ぶべき対象は、ほとんど中国とその影響を強く受けた百済などの朝鮮半島の国々しかない、という状態が長く続いていました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「 「倭」はその後も後漢へ使者を派遣したようですが、やがて国内が混乱して使者を出している余裕がなくなったようです。その混乱がようやくおさまってから歴史に名前が出てくるのが、有名な邪馬台国の卑弥呼です。 卑弥呼は景初三年(二三九)に、はじめて中国に使者を出しました。時の中国の王朝は魏で、明帝は卑弥呼を「親魏倭王」に任じて、「奴の国王」とおなじように紫綬のついた金印を授けました。さらにまた卑弥呼にはたくさんの絹や銅鏡、それに真珠などが与えられました。この時に卑弥呼がもらった鏡ではないかといわれるものが、しばらく前に奈良の黒塚古墳から発見されて、考古学ファンの熱い注目を集めました。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「 「親」という漢字は《木》と《立》と《見》の三つの組みあわせでできているが、それは親とは《木》の上に《立》って子供を《見》ている人のことだからである。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「 漢字の成り立ちをふまえた話は、しかしそんないい内容のものばかりでもありません。次に紹介するのは、もうずいぶん前の事件になりますが、「ペーパー商法」という名前で世間を騒がせた大きな詐欺事件で、独り暮らしの孤独な老人から虎の子の財産をむしりとる時に使ったとされる「殺し文句」でした。 たわいもない世間話などで孤独な老人に近づいたセールスマンは、あくどい契約を取りつけようとして、なかなか首を縦に振らない老人に、「私のいう通りにすれば、きっとお金がもうかりますよ。ほら「 かる」という字は《人》の《言》うことを《信》じる《者》と書くじゃないですか 」とことばたくみに老人をだましこんだそうです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「漢字に限らず、世界中の古代文字は絵画からはじまったといわれます。ウマがいれば、それを表す文字として古代人はウマを描き、山がそびえるさまを描いて山を表す文字としました。ウマやウシ、あるいは山や川は、世界中どこの地域の人が描いても、ほとんど同じような形になったはずです。 具体的な物をかたどった図形が文字として使われるためには、まずその図形が言語で使われる単語と一対一に結びつかねばなりません。太陽をかたどった「 」(甲骨文字の「日」)という形を見て、その時代の中国人が太陽を表す単語を頭の中に思い浮かべた時、字形と音声言語が結びつき、そうしてこれが太陽という意味を表す文字となった、といえるわけです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「日本では小学校の国語教科書の中に漢字の成り立ちに関する記述があって、そこに「ものの形からできた漢字」として、日・月・山・川・木・田など、いくつかの象形文字出身の漢字が、きれいなイラストとともに並べられています。このような形式なら、低学年の児童でも象形文字の成り立ちがよくわかるでしょう。 このようにして作られた象形文字はたくさんあって、動物を表す文字には象形文字のわかりやすい例がたくさんあります。甲骨文字ではいずれの動物も特徴が実にうまく絵画的に表現されていて、たとえば「象」や「馬」は長い鼻やたてがみを描き、「牛」や「羊」ではツノの形のちがいを利用し、「虎」や「 」では体の模様をたくみに描きだしています。 もちろん動物以外にも象形文字はたくさんあって、「日」は太陽を、「月」は空に浮かぶ半月をかたどったものですし、「木」は立ち木が枝を両側に張りだしているさまを、「雨」は空から水滴がしたたり落ちるさまを、それぞれかたどったものです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「古代中国では女が男より低い地位しかあたえられていなかったということは、他の漢字の作り方からも証明できます。めったに使われない漢字ですが、「 」という字があります。これは見てのとおり《女》を横に二つ並べた字形で、中国最古の字書である『説文解字』によれば、「やかましく言い争う」という意味とされています。いっぽう「 」はこれとまったく同じ作り方で、《男》を横に二つ並べていますが、こちらの方は単に「双子」という意味を表すだけで、「 」に見られたような人間としての資質にかかわる意味はまったく含まれていません。男女それぞれの文字を横に二つ並べただけの字形でも、表す意味に男女差別があるわけです。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「紀元前一三〇〇年頃の中国で使われていた甲骨文字の中に象が出てくるのは意外な感じがするかもしれませんが、当時の黄河流域は今よりずっと温暖で、象が野生で生息していました。甲骨文字の中には象を捕らえることができるかと占った文章もあります。古代人は野生の象を飼い慣らして、家畜として材木の運搬などに使っていたのでしょう。それを示すのが次の「為」という字です。 象の鼻を手でつかんでいる形が「為」であり、こうして象を使役することから、「仕事をする」という意味をこの字で表現するようになりました。「為」の本来の字形は「爲」で、この字の上部にある「爪」はのちに「ツメ」の意味で使われる字となったのですが、もともとはこのように手を上からかざした形でした。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「日本の小学校では、六年間で学ぶ漢字の数が全部で一〇〇六字と決められています。これは小学生の生活に深く関係することがらを表すことばを書くための重要な漢字ばかりとされ、「教育用漢字」と呼ばれています。 小学校で教えられる漢字が約一〇〇〇字、一般の社会での文字使用の目安である「常用漢字」が一九四五字(教育用漢字はこの中にすべて含まれます)、そしてそれ以外に日本人の人名に使うことが認められている「人名用漢字」が二八四字あるので、今の日本ではだいたい二〇〇〇強の漢字が使えれば、社会生活を送るのに不自由しないと一応考えられるでしょう。しかしそれだけでは不足する現実があることは、「炭疽菌」や「耳鼻咽喉科」の例で述べたとおりです。はなはだ曖昧ないい方ですが、結局のところどうやら三〇〇〇字もあれば日常的な用途には十分だろう、というのが私の感覚です。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「コンピュータの技術はこれからもどんどん発展するでしょうし、漢字もそれにつれてどんどん脱皮していく必要に迫られています。これからの日本人の漢字に対する認識は、おそらく確実に変化していくことと思います。 機械で書かれる日本語をめぐっては、これまですでにあちらこちらで論じられてきました。しかしコンピュータと漢字の関係がどのようになろうとも、つまるところ、もっとも重要なのは、文章とは自分で書くものだ、という当たり前の事実に帰結するしかありません。 日本語の表記に関して、今もっとも強く要求されているのは、文章を書く人それぞれが自分の言語的主体性をしっかりと確立することです。文章とは機械が書いてくれるものではなく、自分で書くものである、という当たり前のことは、これからもずっと当たり前であり続けることを、どうか忘れないでください。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
「漢字の中には具体的な事物の姿を写しとった象形文字が多く含まれていて、「山」や「川」「亀」「鳥」などは今も写実性をよく残しています。漢字は三千年前の中国人が作ったピクトグラムといってもいいでしょう。それは私たち漢字文化圏の人間だけでなく、世界中の人々にとっても十分に有効な情報伝達メディアであり、これを現代社会の情報伝達手段として使わない手はないだろうと思います。 漢字は、これからの情報時代における国際社会でもっとも活躍が期待できる文字であるといえるでしょう。」
—『漢字のはなし (岩波ジュニア新書)』阿辻 哲次著
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私たちが何気なく使う「言葉」と「文字」。
人類の歴史を振り返れば、そのほとんどが文字を持たない社会であり、文字のある世界はここ数千年の「最近の出来事」にすぎません。
「じゃあ、インカ文明には本当に文字がなかったの?」「アイヌ文化は?」「アイヌと1万年以上続いた縄文文明には、どんな関わりがあるのだろう?」――本書の主題からは少し外れるものの、そんな歴史のロマンへと思考が広がっていきました。
そして本書が教えてくれるのは、今も私たちが使っている最古の古代文字「漢字」の魅力です。漢字のおもしろさを伝えたくてたまらない!という筆者の熱い情熱が、ページ全体から伝わってくるような素敵な1冊でした。 -
★おすすめコメント★
私達は漢字のことを何一つわかっていない。
毎日使用し幼い事から大きなことまで理解した気になっている。その価値感が根底から崩れ落ちる。何も知らなかったと思わされる。教科書には書けない漢字の全てがここにある。象形文字?文字改革?それだけでは終わらない。この本を読み終えた時、あなたは漢字の持つ魑魅魍魎に魅了される。
ペンネーム あい。
武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000247944 -
2020年 48冊目
年始に実家の近くにある古本屋さんで出会った本。岩波ジュニア新書と言うところに惹かれました。
大人になって親になって日々知らない事だらけを感じている。知らなくは無い。色々言葉は知ってるのだけど、ちゃんと知らない。人に説明する程知らない。ふと気づくと私の知識の8割はそんなもんなのではないか…。と思う。
そんな時には岩波ジュニア新書なのだ。
と。勝手に思った。ジュニア新書と言うくらいだから中・高生向けに書かれているのだけど、私の様にいい加減に育ってきた大人には難しい事の入門書としてとても良い。
と、言う事で読んでみました。
思ったとおり、私のいい加減な知識に色々な説明を加えてくれました。
「当用漢字」と「常用漢字」の違いがわかったぞ。
だから何かと言われるとそうだけど、興味深く読めたので楽しかったです。
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[ 内容 ]
世界でもっとも長い歴史をもつ文字・漢字。
この今に生きる古代文字の三千年に及ぶ歩みのなかから、興味深いエピソードを紹介し、漢字文化の面白さを語ります。
基本漢字の驚くべき字源も解説。
でも古い話ばかりではありません。
携帯メールの流行と漢字との深いつながり…なんて、考えたことありますか。
[ 目次 ]
序章 世界の文字のなかの漢字(ことばと文字;時間と空間を超える文字 ほか)
第1章 漢字はこうして生まれた(漢字の誕生をめぐって;漢字の先祖・甲骨文字 ほか)
第2章 日本に漢字がやってきた(漢字文化圏;古代日本の文字世界 ほか)
第3章 漢字の作り方(漢字のしくみ;漢字の成り立ち ほか)
第4章 漢字の現在と未来(漢字の危機のなかで;コンピュータと漢字文化)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
現在よみすすめ中
ジュニア新書なだけに読みやすくて助かります -
漢字のはなし
国語嫌い、特に漢字嫌いだった私にとっては、どれも感心させられる事ばかり。
三千年も前に考案した古代人は凄い!!
・「親」と言う字は、<木>の上に<立>って子供を<見>る。
・「儲」と言う字は、<人>の<言>うことを<信>じる<者>。
なんか、金パチ先生が国語の授業で話しそうな内容ですね。
この本が好きな人におすすめの本
著者プロフィール
阿辻哲次の作品
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