ヨーロッパ思想入門 (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005004416

作品紹介・あらすじ

デカルト、カント、ハイデガーらが説く多彩な哲学はすべて二つの土台の上に立つ。それはギリシアの思想とヘブライの信仰である。本書は、二つの源泉の本質は何かを、文学や美術、「聖書」などから探り、さらに近現代の哲学の深部にどう入りこんでいるかを分析。ヨーロッパ思想の核心がクリアーに見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 入門なんてとんでもない!西洋哲学をここまで明晰に読み解いた本は初めて。個々の思想書は、それなりに学んできたつもりだが、ギリシャの思想とヘブライの信仰のそれぞれに通底するものがこの本によって、ようやく腑に落ちた。この本で初めて知って驚愕したのはユダヤの現代思想家レヴィナス。是非、いつか原著を読んでみたい。宗教性の復活とは彼のような存在によってなされるのだろう。

    以下、気になった記述。
    ・ギリシア思想の本質は、1.人間の自由と平等の自覚。2.理性主義。
    ・ヘブライの信仰の本質は、1.神が天地万物の創造主。2.神は愛で、愛は他者を求める。3.キリスト教の核:敵をも愛せ。
    ・パルメニデス「思惟することと存在することとは同一なるものに属する」
    ・ソクラテスをさして、キケロは「哲学(理性)は天界(自然)から人間界(自分自身)へと呼び降ろされた」と評した。
    ・アリストテレス「幸福とは魂がその優秀性に即して活動することである」=自己実現が幸福、それも理性的な。
    ・神は人間を自分に応答するものとして出現させた。
    ・愛しうるものは自由な者でなければならない。つまり、裏切ることもある。
    ・マルクス思想の根本的な誤りは下部構造理論(=歴史的決定論)にある。
    ・「人間は自由で平等であるべきだ」という正義の理論的根拠付けをロールズは放棄した。
    ・ロールズ「能力は私のものではなく社会の共有財産」
    ・ヘーゲル哲学は弁証法の概念の網のうちに全実在をとらえようとしたが、そこには実存が抜け落ちていた。
    ・キルケゴールの最後の跳躍:罪=神から自分が離れているという自覚があるから。
    ・ニーチェ:子どもに見る、聖なる「然り」
    ・過去の一切の「そうであった」を「私がそう欲したのだ」に造り替えるのが、創造する意志:ニーチェ
    ・ハイデガー:人間は無の深淵の上に宙づりになっているから不安なのだ。この不安は欠損から来ているのではない。
    ・レヴィナス:神の痕跡としての他者。理性は同化の力、全体化の力。しかし、他者はその理性を超える。他者に出会うとは関わりたくない人と出会うことである。

  • 第二部までは面白かった。第三部は、すでに哲学をかじった人にとっては入門レベルなのだろうが、何もかじっていない自分にとっては???だった。理解力が最近のジュニアより劣っていることがわかった。

  • ・中世ヨーロッパのスコラ学がキリスト教神学とアリストテレス哲学の結合だということはよく言われているが、著者はここでもう一歩踏み込んで、今日に至るまでのヨーロッパ思想の源泉がギリシアの思想とヘブライの信仰にあることを明らかにしたうえで、両者の結合ないしは反発を通じてヨーロッパの哲学が発展していく道のりを描く。それは魔術からの解放の歩みとも言えるだろう。

    ・とりわけギリシアの思想を論じた第一部と、ヘブライの信仰を論じた第二部の出来が素晴らしい。これらと比べたとき、アウグスティヌスからレヴィナスまでのヨーロッパ哲学を100ページ弱の中に詰め込んだ第三部は欲が張りすぎたせいか散漫な印象で、前二部とうまく接続されているとも言いがたい。

    ・ロールズがヨーロッパ哲学として紹介されていることに疑問を感じたが、「彼は、基本的にアリストテレスの能力主義を前提としながら、しかし、能力は各人に理由もなく偶然(contingent)に与えられたものだから、『私』のものでなく『社会の共有財産』であると考えて、有能な者の稼ぎ出した富を社会的弱者のために費消するような社会を構想するのである」(p.132)という一文を読んで疑問が氷解。もしかするとロールズの政治哲学こそがヨーロッパ思想の(すなわちギリシアの思想とヘブライの信仰との結合の)最も正統な継承者なのかもしれない。

  • ヨーロッパ思想のふたつの礎石であるギリシアの思想(人間はみな自由で平等な存在者である)とヘブライ信仰(唯一の絶対的な神がすべての創造主である)を踏まえたうえで、ギリシア悲劇やイスラエル人の歴史、イエスの教え、思想家/哲学者のアウグスティヌスからレヴィナスまでを時系列を追って要点を絞り分かりやすく解説している良書。

    ジュシア新書というラインなので(そしてカント、ハイデガーなど数ページでは思想を紹介できない)深くはないけれど大まかなラインを知るには事足りる。

    今純粋理性批判をこつこつ読んでいるんだけど解釈が間違っていないことを知れただけでも大きな収穫だった。

  • ジュニア新書は玉石混交だが、これは石かな。いや、大人向けならば悪くない。しかし中学生には難しすぎだし(文章も引用が多く、文脈もなしではそれ無理だろ、という文が多い)、著者の意見が全面に出てる割には意見なのか事実なのか分かりづらいし、タイトルがミスリードだし。
    といっても、今の新書はタイトル詐欺がたくさんあるからそれは普通とも言える。

    ちなみにタイトルは、ヨーロッパ思想入門とあるが、実際は「キリスト教とヨーロッパ思想についての、思ったこと」といったところか。哲学を学んだ人は批判的思考ができると思っているんだけど、著者の批判的思考は残念ながら自分には向かわなかったのかなー、というのが一番の感想。

  • 難解なレヴィナス哲学の、解説のあまりの分かりやすさに衝撃を受けた。なるほど、これを理解させるための第二章だったわけか。

    (個人的メモ:細かな感想・考察は以下の個人ブログへ記述
    http://blog.livedoor.jp/saboly/archives/3846147.html

  • 第三章は、私のようなぼんくらには歯が立たない内容。何度も、「これ、岩波ジュニア新書だよね?」と表紙を確認したくらい。要再読!

  • 第1部 ギリシアの思想
     1章 ギリシア人とはなにか
     2章 ホメロス
     3章 ギリシア悲劇
     4章 ソクラテス以前の哲学
     5章 ギリシア哲学の成熟
    第2部 ヘブライの信仰
     1章 イスラエル人の歴史
     2章 『創世記』の神話
     3章 預言者
     4章 イエスの生涯
     5章 イエスの教え
     6章 パウロ
    第3部 ヨーロッパ哲学のあゆみ
     1章 中世のキリスト教哲学
     2章 理性主義の系譜
     3章 経験主義の系譜
     4章 社会の哲学
     5章 実存の哲学

  • 4-00-500441-5 244p 2003・7・18 1刷

  • 岩田靖夫(1932~2015年)は、古代ギリシア哲学専攻の哲学研究者。
    本書は、岩波ジュニア新書のラインナップながら、ヨーロッパ思想の入門書として高い評価を得ており、多くの読書案内でも取り上げられている。
    著者はまず、ヨーロッパの思想は2つの礎石に立っており、それを「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰」であるとする。そして、その後二千年に亘って華麗な展開を遂げるヨーロッパの哲学は、これら2つの源泉の深化発展、或いはそれらに対する反逆、或いは様々な形態におけるそれらの化合変容なのだという。
    そして、「ギリシアの思想」の本質は以下の2つであるという。
    1. 人間の自由と平等の自覚。この自覚に基づいて創造された民主主義は21世紀の現在においても理想であり、ギリシア人の創造した人類への最高の贈り物であった。
    2. 理性主義。それは、変転する多彩な現象世界の底に、それらを統括し支配している恒常的な法則や秩序を見透そうとする姿勢であり、これによって、不変の究極的実体の探求としての哲学、自然の因果関係によって現象を説明しようとする科学、純粋な論理を追求する数学等の学問が誕生した。
    また、ユダヤ教として生まれ、キリスト教として世界に広まった「ヘブライの信仰」の本質は以下の3つであるとする。
    1. 唯一の超越的な神が天地万物の創造主であること。これは、ヨーロッパに自然科学が成立する精神的背景になっていると言われる。
    2. 神が自己の似姿として人間を創造したこと。神が人間を創造したのは、神が愛だからであり、愛は他者を求めるからである。人間のかけがえのなさは、人間が愛を受ける者として唯一絶対の神の似姿であることに由来する。
    3. イエスの教えによって明らかにされた神の限りない優しさ。
    更に、この2つの源泉から展開するヨーロッパ哲学について、中世のキリスト教哲学(アウグスティヌス、トマス・アクィナス等)、理性主義の系譜(デカルト、カント等)、経験主義の系譜、社会の哲学(ロック、ロールズ等)、実存の哲学(キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、レヴィナス等)という観点から説明している。
    ジュニア向けに分かり易い説明を心掛けていることは感じとれるものの、ヘブライの信仰やヨーロッパ哲学に関する内容はやはり平易とは言い難い。それでも、近代文明をリードしてきたと言えるヨーロッパ人の物事の捉え方、考え方のポイントがコンパクトに纏められている点において良書と言えよう。
    (2016年8月了)

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