- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005004638
感想・レビュー・書評
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〇 新書で「学校生活」を読む②
岡田寿彦・関戸勇著『カラー版 鎌倉 感じる&わかるガイド』
(岩波ジュニア新書、2004年)
・分 野:「学校生活」×「行事を読む」
・目 次:
はじめに
Ⅰ.鎌倉と出会う 北鎌倉から鶴岡八幡宮へ
Ⅱ.テーマでつかむ
1.鎌倉時代のまちづくり
2.海と鎌倉
3.戦いと鎌倉
4.信仰・伝説と鎌倉
5.女性史の中の鎌倉
6.環境・景観問題と鎌倉
・総 評
本書は、鎌倉の魅力について「著者たちがどんなところに注目し、どんなふうに感じたか」という視点から紹介した本です。著者(岡田氏)は元駿台予備学校論文科講師を務めていたこともある著述家です。
鎌倉と言えば、自然豊かで、多くの歴史的建造物も残っていることから、校外学習で訪れることも多い場所です。そんな見どころ満載な鎌倉の魅力を、プロの写真家でもある共著者(関戸氏)の写真とともに解説しているのが本書です。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点にまとめます。
【POINT①】鎌倉で「ほっとする」時間を楽しむ
著者は、現代の都市生活者が鎌倉に感じる魅力として「ほっとする」ことができる空間としての魅力を挙げています。即ち、豊かな緑のなかに長い歴史の跡が残る風景を四方に見ながら自分のペースで歩き、目をひくものがあったら、しばらく立ちどまって、じっくりながめる――そんなスタイルで鎌倉を散策してみることをオススメしています。本書では、そうした「ほっとする」場所として、円覚寺の見晴茶屋の風景が紹介されています(三四頁に写真あり)。新緑が広がる中に、少し古めかしい建物(東慶寺)の屋根が並んでいます。こうした光景を見ながらお茶を一杯いただくのも乙なものではないでしょうか
【POINT②】鎌倉武士たちの「死の記憶」をたどる
源頼朝が幕府の本拠地として鎌倉を選んだ背景には「外部から攻撃しにくい地理的条件を備えていた」ことがありました。しかし、実際に発生した戦闘の多くは「幕府内部の権力闘争」によるものであり、鎌倉という土地は、その闘争の中で生じた「大量の死の記憶」を重く引きずっていると著者は指摘しています。具体的には、北条氏に滅ぼされた比企一族の墓がある妙本寺、宝治合戦で滅亡した三浦一族の墓所とされるやぐら、そして幕府滅亡時に、最後の得宗であった北条高時が自刃したやぐら(腹切りやぐら:一二九頁に写真あり)などが紹介されており、著者も「ただならぬ気配」が感じられる場所だと言っています。
【POINT③】鎌倉で「景観問題」を考える
鎌倉が持つ魅力の源泉について、著者は「鎌倉にのこされた自然と歴史的建造物とが一体となってつくりだしている景観」だと指摘しています。ただ、そうした景観は常に再開発の危機にさらされてきました。過去に鶴岡八幡宮裏山の開発計画が持ち上がった際、住民たちは「鎌倉風致保存会」を結成し、寄付金や援助金を元手に開発予定地を購入して景観を守りました。一方で、便利な生活を求めて再開発を望む声もあります。本書一七八頁には、建設途中の5階建てマンションとそれに反対する住民の幟(旗)の写真が載っています。景観か生活か――実際に鎌倉を訪れ、この問題を考えてみるのもいい勉強になるでしょう。
本書では、著者が設定したテーマに沿って鎌倉の名所が紹介されているため、様々な視点から“鎌倉”を味わうことができます。まさに、著者が「はじめに」で目指していた「何度も鎌倉を訪れている人には新たな角度から鎌倉を紹介する内容にしたい」との思いが実現されています。校外学習に向けて、班ごとのコースを考えなければならない時など、手許にあると役立つ一冊です。
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2021年1月期の展示本です。
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この手のジュニア新書の修学旅行参考書シリーズは、うまくまとめてあるなぁ。
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4-00-500463--6 188p 2004・3・19 1刷