ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと (岩波ジュニア新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005005741

感想・レビュー・書評

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  • 久々に名著として推薦したい一冊。本書で触れられている長野県の小学生と著者の交流は、まさに「うちなる差別心と向き合う」人権教育、学習。アイスターホテル宿泊拒否事件、これも今のヘイトスピーチや性の多様性に関する施策をめぐる言説と通じる。また沖縄出身の著者がどんな思いで「脱走」し進学を希望したのか、人権を獲得することはどれほどにハードルのあることなのか。無関心という消極的合意、過去のお話、では決してない。

  • 著者の伊波さんは、14歳でハンセン病と診断され、沖縄愛楽園に入所したが高校に進学したい一心で脱走、長島愛生園に再入所し、ついには療養所を出て自分の力で生きていくことを選んだ。半生を綴った著書『花に逢はん』が教材として選ばれたことをきっかけに子供たちに体験を伝える活動を始め、療養所入所者への補償金をもとに「伊波基金」を設立しフィリピンで地域医療を志す人々を支援、また沖縄の近現代史を学ぶ「信州沖縄塾」の塾長となるなど、差別と偏見を乗り越えて社会や世界に尽くす伊波さんの生きざまに勇気づけられる。

  • ハンセン病って私の中では松本清張の「砂の器」のイメージが強くて、過去ものという感じでした。巻末に付いていた全国のハンセン病療養所の数と入所者数を見て、本当に自分の無知を知りました。ほんの6年前の統計で、約2900人の方が入所者されています。

    本書の著者は自らも元ハンセン病患者で、療養所での隔離政策、社会復帰後の数々の差別にさらされてきた伊波さん。自らの経験を記されています。
    伊波さんの経験ではないけれど、衝撃的だったのは2003年に元ハンセン病患者宿泊拒否事件が起こった際に、市井の人たちから療養所に匿名で送られた誹謗中傷の手紙の内容。「お前たちのような生きていても何にひとつ訳に立たない化け物が死ねばよかった。そうすれば祝日となって化け物の死を喜べたのに」とか「地域の景観を乱す粗大ゴミ」とか・・・。なんでこんなことが言えるのか理解に苦しむ。

  • 雑誌で著者、伊波敏男氏のことが取り上げられていて、差別の中で息子と別居することになり、10年後の再会を息子の意志で果たした親子関係に感銘を受け、この本の紹介もあったので読んでみた。差別は差別される側に立ってみないと、なかなか理解できないし、差別しないまでも無関心というかたちで、差別のある社会を成り立たせていることに驚きを覚えた。感銘を受けた親子関係に関しては、この本ではうまく描き切れていない印象を受け、そのことが少し残念。著者はフィリピン医療者への基金を設立している。その精神の拠り所として、中国の哲学者晏陽初の人々の中へという詩が紹介されている。「人々の中へ行き 人々ともに住み 人々を愛し 人々から学びなさい 人々が知っていることから始め 人々が持っているものの上に築きなさい しかし、本当に優れた指導者が 仕事をしたときには その仕事が完成したとき 人々はこういうでしょう 『われわれがこれをやったのだ』と」

  • ハンセン病はだれでもかかる病気ではない。確率は10分の1である。そのなかでハンセン病になった人は、なぜ私なのかとおもうだろう。よく、死にたいという人がいる。それは、ただの口だけである。生きたくても、死なないといけない人もいる。健康な人はその分だけ、一生懸命生きなくてはいけないと思う。健康に生まれてきたのも、親のおかげである。たくさんの人に感謝して生きていかなければいけないと思いました。

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著者プロフィール

1943(昭和18)年、沖縄県生まれ。作家。長野大学客員教授。
NPO法人クリオン虹の基金理事長。信州沖縄塾塾長。
ハンセン病療養施設、「沖縄愛楽園」、鹿児島県の国立療養所「星塚敬愛園」を経て、
1961(昭和36)年、岡山県の「県立邑久高等学校新良田教室」に入学。
その後、1967(昭和42)年、東京の中央労働学院で学び、1969(昭和44)年、社会福祉法人東京コロニーに入所。その後、東京コロニー及び社団法人ゼンコロ常務理事。
1997(平成9)年、『花に逢はん』(NHK出版)を上梓、第18回沖縄タイムス出版文化賞を受賞。
ついで、『夏椿、そして』(NHK出版)を著し、ハンセン病文学を問い続ける。
2004(平成16)年より、信州沖縄塾を主宰し、塾長となる。
2007(平成19)年11月、伊波基金日本委員会を創設。

主な著書
『ゆうなの花の季と』(人文書館 2007)
『ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと』(岩波ジュニア新書 2007)
『花に逢はん[改訂新版]』(人文書館 2007)
『島惑ひ 琉球沖縄のこと』(人文書館 2013)

「2015年 『父の三線と杏子の花』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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