- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005005925
感想・レビュー・書評
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落合恵子の自伝小説。
若い人の恋の情熱ってすごいな、とつくづく思った。
若い人というのは落合恵子の母なのだが。 20代でかなり年上の妻子持ちの男と恋愛をし、妊娠して、一人で産み育てることを決意する。1945年の日本は、今よりもずっと婚外子に厳しく、産んだ女はもとより、親を選んで産まれた訳ではない子どもでもひどい差別を受けるのは当然という時代だった。それをわかっていながら産んだのは、相手の男を本当に愛していたからだと、娘に話す。経済的に困窮し、精神を病みながらも、男を恨んだり、憎んだりはしない。(したかもしれないが、誰にも言わなかった。)
その男が素晴らしい男だったから、というより、激しい恋愛をし、別れざるを得なかったというドラマチックな経験が、その思いを支えていたのではないかと、意地の悪い私はおもうのである。
もし、妻と別れて結婚していたら大した男じゃないと気付いたかもしれない。妻子がありながら、年取った立派な社会人でありながら若い女と恋愛する男の身勝手さと浅はかさに気付いたかもしれない。
でも、それがなかったために、死ぬまで素晴らしい男であったと慕いながら死ねた。
また、娘がそれを信じて、共感してくれたことは、どんなに救いになったことだろう。
もしかして、そんな母を疑問に思い、母と離れて生きるようになっていたら、落合さんとお母さんは全く違う人生を歩んだかもしれない。しかし、母と実際に送った人生が本当にいいものであったと落合さんが思っているのだから、これでいいのだろう。
お母さんは、恋に生き、娘に愛された。それが得られない人生が世の中にはたくさんある。その点では幸せだったと思う。
しかし、個人的には、母を批判したり否定したりする水村美苗の『母の遺産』や、その母の『高台にある家』の方がずっとしっくり来るのである。
もちろん、こちらがしっくりくる人もたくさんいるとは思うが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
916-O
閲覧新書 -
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所蔵情報
https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=072589