社会とどうかかわるか――公共哲学からのヒント (岩波ジュニア新書 608)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005006083

感想・レビュー・書評

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  • 公共哲学というのは、一人一人の社会とのかかわりに関することを考える学問らしい。

    この本のスタンスとしては、公共と個人のあり方が、どちらかを優先させるものであるのでなく、お互いを支えるものであるべき、ということだと思った。

    その鍵となるものとしては、コミュニケーションを取るということが挙げられていて、互いをわかりあい、妥協点を見つけていくプロセスが重要であることを強調している。

    個人は社会のことも考えるし、公共は個人を生き生きとさせるためにある。

    全体的に至極真っ当な考え方を取っている。
    優等生的というか、教科書的というか、バランスが取れている分、やや退屈に感じる本でもあるが、憲法に乗っ取った考え方などを学べるため、理念や理想を学ぶことができる。
    それだけではより良い社会は生まれないかもしれないが、理念も理想をます持たなければ、目指す社会像も何もないだろう。
    そういう意味で、誰もが知っておく方がいい憲法の言葉の意味などを学ぶことの意味も見出せる本であった。

    公共の考え方や、公共善や公共悪などの専門用語の解説が非常に丁寧。

  • ジュニア新書ながらとても勉強になった。目指すべき社会を具体的にどのように実現すべきか、というところについて言及があったらさらに良かったが、全体を通して論理展開も明快でわかりやすく、時折持論も展開しながら書かれており、自分にとってはとても有意義な内容だった。

  • ・社会とのゆがんだかかわり方=滅私奉公、滅公奉私
     社会との理想的なかかわり方=活私開公
    ・自分と身内や仲間の利益だけを追求する考え、行動、
     ライフスタイルを「滅公奉私」と呼ぶ。
    ・いじめは犯罪である。
    ・「君子は和して同ぜず。小人は同じて和せず。」
    ・デューイが考えた学校は「絆のある生活」としての民主主義を、
     各自がコミュニケーションを通して学習し体得する場であった。

  • =====
    他の人や社会のこと、どう考えたらいいのだろう?その答えは、自分を殺す「滅私奉公」でも、自分のことしか考えない「滅公奉私(めっこうほうし)」でもない。公共哲学からのヒントは「活私開公(かっしかいこう)」。地元の街から学校、会社や国、そしてグローバルな世界まで、一人ひとりを活かしつつ、公共的な価値が実現する社会を考えてみよう。
    =====

    んんんんん・・・。こういう考え方の話は、嫌いなんですよ。(汗)

    言ってることもわかるし、それは大切なんだとも思う。でも、私とは相容れない考えなんでしょうね。やっぱり私は、極論的に言うと、経済が豊かになることが”正義”だと考えているからなんでしょう。

    なので著者の意見を否定はしません。

  • ○グローカル

  • お世話になった山脇先生の高校生向けの著書。
    活私開公と民主主義の問題は、学校でもっと実践されるべき。
    著者も自ら指摘の通り、理想論で、「べき」論になっているが、この「べき」を見失った社会は殺伐としているので、活私開公の理想は小さなところで実践していきたい。

  • 今まで滅私奉公を単なる昭和的価値観だと深く考えていなかったが、滅公奉私といった逆の例も詳しく説明がなされ、そのどちらも社会にも自分にもよくないことだと、言われればそうだな〜と感じた。
    和して同ぜずで、「しぶしぶ同調しながら陰口を叩くのではなく、正しいと思う意見は軽々しく譲らない」というのは頭では理解出来ているが、実行出来ているか、怪しいかもしれない。
    プラトン、ソクラテスのエピソードからは、大衆政治により少数の賢者の知性が殺されてしまう危険性が分かったが、それを乗り越えられるような仕組みを考えたいと思った。
    ジョンデューイ、アリストテレスからも、自分の生き方のヒントを得られた気がした。
    全体的に分かりやすいので、この分野に疎い自分にはいい入門書だった。

  • 明治維新によって従来の封建的な社会体制が崩れ、その後自由主義や人権といった考え方が日本に入り自由民権運動が起こってゆくが、1930年代以降滅私奉公が唱えられ、自由民権運動は完全な形で完成はしなかった。しかし戦後は滅私奉公への反省からより個人が大事にされる社会を目指して滅公奉私への流れになり、その矛盾が多く現れる今、活私開公を目指そう

    というのが本書の指摘する歴史軸なのではないかと思う。

    個人的には、滅私奉公、滅公奉私などということばで時代をひとくくりにすることに違和感を覚えるが、
    戦後の民主主義運動は、戦時中の滅私奉公の流れに対する反省から、個人がより大事にされる社会を形成し日本社会に民主主義を根付かせる運動であったのかなと、個人的に思った。
    そしてまた「滅私奉公」を掲げる政治家が力を持ちつつある今、戦後民主主義運動ははさらに民衆の間で力を入れて取り組み洗練させていかなければならない課題なのだとも感じた。

  • 読みやすい。公共哲学とは何か。

  • 今の社会は滅公奉私で、昔は滅私奉公だったと言い、そのどちらもだめだった事はわかっているので、ならば、活私開公という、新しい考え方を提案している。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。1949年生まれ。一橋大学経済学部卒業、上智大学大学院哲学研究科を経て、1982年ミュンヘン大学にて哲学博士号を取得。1988年4月から1993年3月まで東京大学教養学部助教授、1993年4月から2013年3月まで同教授および1996年4月以降東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授。2013年星槎大学教授、2019年から2023年まで同学長。
主な著書に、『ヨーロッパ社会思想史』(東京大学出版会、1992年)、『公共哲学とは何か』(ちくま新書、2004年)、『グローカル公共哲学』(東京大学出版会2008年)、『社会とどうかかわるか』(岩波ジュニア新書、2008年)、『社会思想史を学ぶ』(ちくま新書、2009年)、『公共哲学からの応答』(筑摩書房、2011年)、『教養教育と統合知』(編著、東京大学出版会、2018年)などがある。

「2024年 『ヨーロッパ社会思想史 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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