ルールはなぜあるのだろう: スポーツから法を考える (岩波ジュニア新書 610)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005006106

感想・レビュー・書評

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  • 〇 新書で「学校生活」を読む⑳

    大村敦志『ルールはなぜあるのだろう スポーツから法を考える』(岩波ジュニア新書、2008)

    ・分 野:「学校生活」×「体育科」
    ・目 次:
     第Ⅰ部 スポーツと法の関係を見てみよう
     第Ⅱ部 ルールはどんな性質をもっているのだろう?
     第Ⅲ部 スポーツは何を求めているのだろう?
     第Ⅳ部 スポーツと法から社会を見てみよう
     あとがき
     付録1 読書案内
     付録2 競技規則入手方法

    ・総 評
     本書は、スポーツにおける「ルール」の役割を考えることで、私たちが、社会における「法」(法律)の存在をどのように学べばいいのかを解説した本です。著者は東京大学法学部の教授を務め、法教育に関する委員にも就任したことのある人物です。
     スポーツをする際に「ルールを守る」ことは“当たり前”だと考える人が多いと思います。ただ、その“当たり前”に存在するルールは「なぜ必要なのか」と考えたことはあるでしょうか。本書では、この疑問を深掘りしていきます。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点にまとめます。

    【POINT①】ルールによって試合の「おもしろさ」が変わる
     ルールが設定される背景には「ゲームをおもしろくしよう」という意識があると言います。例えば、選手の「努力」(=絶対的な速さや絶対的な強さ)を重視するのであれば、難易度を上げたり、偶然性を排除したりするルールが求められます。一方で、力が接近した者たちが戦うおもしろさを求めるのであれば、ハンディキャップを設けるルールが必要となる場合もあります。選手たちは、こうしたルールに拘束されながらも、その中で創意工夫を重ねて自由にプレーすることができます。こうした「プレー」の部分にこそ、スポーツの楽しみがあると著者は指摘しています。

    【POINT②】ルールにおける「フェア(公平)」とは何か?
     ルールである以上は「フェア(公平)」であることが求められるのは当然でしょう。ただ、何をもってフェアとするかは意外と難しい問題です。競技によっては「身体能力の差を埋める」ため、年齢や性別に応じて制限を課す場合がありますが、著者は野球を例に、女子選手がリトルリーグや大学野球では参加が認められている一方で、高校野球ではそれが認められていないことの妥当性を問うています。その上で、体重・性別・年齢・障害などの点で異なる者に対して「異なる扱いをするのが公平」なのか「同じ扱いをするのが公平なのか」という問題を、ルールを設定する際に真剣に考える必要があると指摘しています。

    【POINT③】スポーツから法を考える
     2022年から成人年齢が18歳に引き下げられ、中高生への「法教育」の必要性がさらに唱えられるようになりました。この「法教育」では「法というものを、自分にかかわるかたちでじっさいに使ってみる」ことで「自分たちでよりよいルールを求めるという意識」を持つことが重要であり、だからこそ「スポーツに照らして、ルールの役割を考える」ことも「法教育」につながると言います。即ち、より多くの人が参加でき、競争を公平におこなう一方で、敵味方を超えて共同してスポーツを成り立たせるような仕組みを作り上げていく――そうして「法そのもの」を考えていくことが必要だと著者は指摘しています。

     本書は、スポーツの身近な話題から始まり、最後は社会における「法」を考えるという“壮大”なストーリーとなっています。後半は少し難しい話題になりますが、父と息子の会話形式で話が進んでいくため、その点では読みやすい本と言えます。私としては、著者の「ルールに従ってプレーすることは窮屈なことじゃなくて、創造的なことだと思う」という言葉が印象的でした。特にスポーツをやっている人は、そのルールが必要な理由を改めて考えてみると、そのスポーツに対する理解がより深まるのではないでしょうか。
    (1368字)

  • まさかの対話式。子供用なのかな

  • ちょっとだけクイーン父子を思わせるやりとりがよかった。
    むちゃくちゃ平易な言葉遣いでありながら、非常に深いところまで論じているようには思う。が、なんかもうちょっと具体的な事例を多くしてほしいなという気はする。

  • S780-ジユ-610 300047933

  • 2008年発行。父と息子の対話形式で、スポーツは何か、法とは何か、スポーツを通じて、法を通じて、人はどのように生きるかということが書かれている。個々の章で書かれていることはわかるものの全体として何がいいたいのかがよくわからなかった。父と息子の会話に違和感があって少々読みづらいところもあった。

  •  スポーツのルールについて考えることで、社会における法のあり方を考えようという趣旨の本。タイトルのまんま。しかし、タイトルから見ると意外に感じるかもしれないのだけれど、本書はスポーツ論も大きな側面の一つに据えている。つまり、スポーツという具体概念から法という抽象概念を導く、というのではなく、スポーツも法も並立して語られているということ。実際、「スポーツとは」という展開も多く見られる。
     また、本書には「法教育」のためのテキストとしての側面もある。「岩波ジュニア新書」であることからもわかるように、本書は子どもも読めることに価値を置いている。この本を読んだ子どもが、スポーツという身近な事象を通じて、法に対する態度を育めるように設定された本であるということだ。親子の対話形式で書かれていることも、読みやすさの向上に一役買っている。どうでもいいけど、この親子の会話が殺伐としていて笑える。なんで息子は父を「キミ」と呼ぶのだろう(笑)。

     さて、そんなこんなで、話題がてんこ盛りな本であるのだ! その結果、残念ながら内容の読み取りづらさは目立っていた。一方、内容に関しても抽象的な議論も多く、果たして子どもがすんなりと中身を受け取れるのかは疑問。

     ・・・っていうようなレビューを書こうかなあ、と思いながらこの本の終盤を読んでいたんです。すると、ほぼ同じようなことが「あとがき」に書かれていてビビった! この先読みしていた感がハンパねぇ。やんごとねぇ。


    【目次】
    読者のみなさんに
    第Ⅰ部 スポーツと法の関係を見てみよう
     初日 スポーツから法へ
     2日目 スポーツにかかわる法
     3日目 スポーツを支える法
    第Ⅱ部 ルールはどんな性質をもっているのだろう?
     4日目 ルールはどこにあるのか
     5日目 ルールは何を決めているのか
     6日目 ルールは何のためにあるのか
     7日目 ルールはどこまでおよぶのか
    第Ⅲ部 スポーツは何を求めているのだろう?
     中日 競争を考えてみよう
     9日目 公平を考えてみよう
     10日目 評価の基準は
     11日目 国際化すると
    第Ⅳ部 スポーツと法から社会を見てみよう
     12日目 観客とアマチュアがはたす役割
     13日目 クラブは民主主義の学校
     14日目 スポーツから裁判を見ると
     千秋楽 新しい社会を考える
    あとがき
    付録1 読書案内
    付録2 競技規則入手方法

  •  この本は著者と著者の子供の話を書いた、親子対話形式で書かれている。著者が説明していくことをスポーツマンの息子がスポーツマンの目線でつっこんでいく。どんなスポーツもルールがなくては成り立たない。小学校の時にドッヂボールをしたことがあるが、本格的ではないものの基本的なルールでしっかり成り立っている。この小学生の時のドッヂボールがいい例なのだが、正式なルールではないので人によってルールが違う。しかし、正式なルールではなく自分たちだけのルールを考えることも大切なのである。そのルールばかりに縛られていても面白くないと思う。だから、学校のルールも自分たちが変えたいと思えば、常識の範囲で提案したほうがいいと思った。

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著者プロフィール

学習院大学教授

「2024年 『新注釈民法(10) 債権(3)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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