平和ってなんだろう―「軍隊をすてた国」コスタリカから考える (岩波ジュニア新書)

著者 : 足立力也
  • 岩波書店 (2009年5月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005006229

平和ってなんだろう―「軍隊をすてた国」コスタリカから考える (岩波ジュニア新書)の感想・レビュー・書評

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  • 中米で軍隊なしでやっていくのには、どうやらパクス・アメリカーナに刃向かわず、それを受け入れた上で、かつ、それをうまく使ってやるという老獪さと外交のうまさがあったみたいです。そして、コスタリカは民主主義や人権に重きを置く国民性を持っていることも、対アメリカ外交での強いポイントになったようです。1980年代に永世中立国になる宣言をしたコスタリカをアメリカは無視したが、ときのコスタリカ大統領は欧州を説き伏せて支持を集めて、アメリカに再度迫り認めさせたとのこと。パワーを持つ国をいかに使ってやるか、という感じ。アメリカはなにせ、民主主義や人権などをかかげて、それを強要していくような戦略で世界を制覇しようするので、コスタリカが欧州からの支持を受けた上でアメリカに対して逆に、「民主主義と人権のためだ」と迫ったのはけっこうなものだったのではないか。日本もコスタリカの猿真似をしよう!というのではないし、こういう形の平和の築き方っていうのも、広いこの地球上にはあるのだ、というように読むといいのではないかと思いました。また、あらゆる立場の人が、圧力を感じずに思ったことが言えることが民主主義の前提だと、本書に出てくるコスタリカの少女が言っている。それでこそ、同じ目線での話し合いである「対話」ができる。つまり、自由・公正・公平が保証されてできるのが「対話」というわけで。これって日本じゃ希薄な価値観ではないでしょうか?大切なことなんですけどね。

  • まさかこんな国があるとは!想像を遥かに超えていました。骨を抜かれて屍と化した日本ではここまでの外交手腕を発揮するのは無理でしょうが…一つの例として、これからのお手本になる部分は非常にたくさんあるなぁと感じました。特に自分と同世代(30代)やもっと若い人たちに、読んで欲しいなぁと思った次第です。

  • 文化
    思想
    諸外国との関係
    国内問題ー経済・社会福祉

    平和とは何か。
    武力抑止論VS武力放棄という単純な図式ではなく、その国の歴史や文化から紐解く本書はとても良いと思います。

    ー日本ー
    周辺国との軋轢
    国内の経済空洞化
    格差社会と言われる今だからこそ、国・政治の在り方について考えたいと思いました。
    日本には日本のやり方や合わせ方があるので、いかに国の将来を考え、後世に生きる人々に残していくかが課題です。

    本著でも記載されているように、コスタリカであっても情勢の変化や経済至上主義・治安の悪化などが進んできていることも目を向けなければならないことです。
    その上で、将来を模索していく姿勢が求められます。
    その時に重要なのは「対話」だと思います。

    「暴力」「排除」を繰り返せば、負の連鎖が広がり、血で血を洗う未来続きます。
    ヘイトスピーチ、ナショナリズムの台頭で、今後も各国の対外姿勢は過激さを増すでしょう。
    第一次、第二次世界大戦で亡くなられた何千万人の方々の思いや現在も戦争が続いている現状を見ると歯がゆい気持ちです。

  • 経済的に先進国ではない=民主主義的ではない場合が多い、という先入観があったが、その考えに面白い問題提起をしてくれた本。
    司法、刑務所、医療、選挙については日本や他国も示唆が得られるのでは。
    国家予算をどうやりくりしているか気になる。

  • 日本も憲法で平和を謳い軍備を放棄した国だけれども
    事実上は世界でも有数の軍備を誇っているし
    国民が主体と成って国を運営していない国民不在の国である

    それに引き換えコスタリカは他と比較してスラムも多く貧しいし
    不法入国者も多く治安も悪く女性差別もひどい現状があるけれども
    国民の政治意識も高くシタタカに国際舞台でも生き延びている

    アメリカの支配を受けずにつぶされることもなく
    何とか軍隊なしで戦うことなく政治的解決でココまでこれた
    それには貧しいこととアメリカの欲しい物を持っていないことが
    幸運となっているかもしれない

    システムがあっても「仏造って魂入れず」となってしまえば
    縦目だけで事実上はまるで違う日本のような国になる
    大事なのは対等性と自在性を守れるだけの自律した倫理観を持った
    国民の意識でありそれに基づいた教育であり参加である

    コスタリカの神話:
    貧困と孤立が皆で助け合う「小農平等主義敵精神」を生み出し、
    現在のコスタリカの平和を求める姿勢につながっているのだという
    平和外交そしては:
    世界でたった一つしかない教育機関としての「国連平和大学」を誘致している
    平和に対する高校生の答えは民主主義・人権・環境・だという
    それは達成されていなからこその目標として心にあることらしい
    民主主義については「お互いに対等で問題を解決すること」と答えが帰ってくる
    又、多数決は多数派の暴力になるからそれだけでは平和になれない
    少数派だけでなく同じ方法では主張できない人もいるので
    スタートラインで調整する必用があるという
    民主主具的な選挙システム:
    選挙期間中のみ司法律法行政から独立して特権を持つ「選挙最高裁判所」によって
    選挙の運営が行われる

    戸籍住民登録・政党登録・政党及び候補者の審査・実施・当選者の確定・
    違反の検挙と裁判
    この判事は国会によって選ばれる
    お金のバラマキなどもあるらしいが受け取るのと投票は別だという考えが強く
    買収は大した問題にはならないのだという
    選挙と同時に投票に加算されないだけで12歳から17歳までの子供たちが投票する
    模擬選挙が行われ同じように公表されて比較できるのだという
    人権問題:
    刑務所を見ればそこの人権意識をおおよそ知ることが出来る
    基本的に人権の一部を剥奪して隔離するのが刑務所であり
    奴隷のように労働に服役させる場所
    あるいは社会に貢献させるべく更生させるための場所
    又は自主的に更生できる環境を整えた場所なのである

    コスタリカの場合は
    「自分にどんな権利があるの考えてもらい立ち直るチャンスをつくる場所」
    更正の第一歩は自己認識・自己評価・自己肯定・自己尊厳で
    自分を大切にする心が人権意識を呼び覚まして思想となる
    刑務所内では小学校から大学までの教育を受けられる準備があり
    技術や創造的能力を養う環境をつくろうとしているらしい
    又そこで作られた製品は適正価格で販売され家族に送ったり蓄えとなる
    従って金網の塀があるくらいの敷地に平屋建ての建物が立っているだけで
    驚くに値するのは面会部屋の他に逢引できる個室が四部屋あって
    当然監視などなく四時間自由に過ごせるという
    罪の種類や重さではなく厚生の具合等によって刑務所が選ばれるという
    日本における犯罪者の再犯率は四割近いのに対してコスタリカでは二割だという
    子供も違憲訴訟を起こせるという実例:
    人権救済における問題で原告の適格性を問わず誰でもアクセセス出来る
    小学校の10歳の子供が校長先生の駐車場に遊び場を奪われたという提訴で
    遊び場を取り戻したという実例もあるそうだ
    日本では未成年ということで制限されていることが多いいが
    コスタリカでは一般的な人権に加えて子供特有の権利も追加されているという
    2003年イラク戦争をするアメリカを支持したコスタリカ大統領に
    国民がストップを掛けメディアも一斉に非難したがなかなからちがあかず
    大統領は米国支持を変えられずにいる
    それを変えさせたのは違憲裁判である
    一人の大学生が弁護士もなしに勝訴しているし政府関係の公務員も
    テロとの戦いを支持することは無用の敵を作り市民の安全を脅かすという理由で
    内部告発して勝訴している
    最も結果として退職せざる負えない雰囲気となり国会議員に当選するという
    おまけが付いたらしい
    彼は官僚の立場の保守性とコスタリカ国民の民主性のせめぎあいの中で
    訴訟に踏み切ったのだということだ
    保険がなかろうが自国民でなかろうが国立病院や診療所での支払いなし:
    日本人の駐在員が急病で診察を受け支払いに受付に行くと
    保険がなくてもお金がなければ支払わなくてもいいと言われたそうだ
    スラムをつくり隣国からの不法滞在者が多い現状で予算に窮しているのも事実らしいが
    募金などでしのいでいるらしい
    人権外交の展開で一石二鳥の国際的評価を狙うシタタカサ:
    NGOを巻き込み国債連合人権高等弁務官を提案し成功する
    死刑全廃・中米司法裁判所を誘致・
    国連と世論のギャップを埋めるためにNGOと共同して核兵器禁止条約の提案・
    1980年米州人権裁判所を誘致
    (最初の裁判をコスタリカの留置所内事件で始めたのも宣伝効果があったという)
    未婚の母が父親を指名できる責任親権法を作り認知される子を大幅に増やす事に成功
    マチスモという男性優先思想による(家畜化された)DV・先住民・高齢者・貧富の差
    環境破壊と自然を保護することなどに取り組んでいる
    その見返りとして競争に追いたてらない安らぎと地域社会の充実と
    自然発生的な相互扶助と精神的な落ち着きによる満たされ感
    更にココならではの多様性に富んだ動植物が静かなエコ観光資源となること
    女性の自立と自律に結び付く自然をモチーフにした手工芸品開発
    個人の存在を最優先する民主主義的発想と力尽くで管理するための軍隊とでは
    その価値観のあり方がまるで違う
    片方は千変万化を可能にしているしもう片方は右へならえの強制的ファッシズムに繋がる
    支配的な合理化のために文化と文明を分離してしまった違いでもある

    更に消費的平和と積極的平和のあり方・点と線の平和のあり方・平和と健康の相似性
    あおして統合的価値観としての平和を著者は
    コスタリア人との付き合いの中で発見したと述べている
    日本など一般に平和とは戦争などの(人為的)悲惨なことが無いことと考えがちだが
    コスタリカではそれに加えること民主主義や人権や環境を考える際に重要だとする
    つまり単なるシステムでなく前向きな方向性であり価値観として捉えている
    こうして国連を舞台にした動きが防衛力にもつながっている

    この考え方に従えば平和を考える時にまず平和の裏側にある暴力を確認してから
    平和を定義するのではなく
    直接ポジティブにより楽しいとか嬉しいとか安らかだとか幸せだとかに
    向かうことにようだ
    消極的平和は点のように局部的平和であるという
    平和を守るために軍隊によって防衛しなかればならない
    丁度保険という搾取によって自分だけの未来を守るという考え方と同じだ
    反対に積極的平和は線のように継続した方向性のある平和だという
    「プラビタ」=純粋で素朴な生活=程々・そこそこが良い・ガツガツしない
    という文化がコスタリカだという
    軍隊は過大な欲望の表れであるからあってはならないということになる
    これは日本で言う「ワビサビ」にも似た深層文化で合って表面的なものではないという

    無限の経済成長など有り得ないという「神話の破壊」が環境問題の顕在化と共に意識されるようになった現代世界で、このプラビタという価値観が未来への方向性を示していると
    作者は言う

  • 日本に軍隊がないのは成り行きだ。他にも軍隊を捨てた国があるなんて思ってもみなかった。

    少し調べればわかることだけれど、その「少し調べる」こともとっちらかった日常の中では難しいこともある。
    自衛隊は軍隊の一種だし、憲法で軍隊を放棄している国は他にもある。
    日本国憲法は確かにGHQに与えられた憲法だけれど、成り行きで生まれた憲法で何が悪い?という気もする。

    表現の自由、環境を整えること、民主主義、人権。軍隊のない平和な世界。
    現実から乖離しているように見える理想でも、唱え続けることで社会全体で共有する価値観となる。

    子供を政治に参加させることで、政治によって世の中を変えることができると教えることになる。ゲーム感覚でもかまわないのだ。
    「選挙に行かないことは権利の放棄」だって脅しも、アイドルグループに選挙へ行くよう呼びかけさせる必要もない。

    システムに振り回されるのではなく、心に根付いた価値観や文化からシステムを構築する。

    平和という概念は本質的に「肯定する」性質を持つ

  • 足立力也著「平和ってなんだろう」岩波ジュニア新書(2009)
    軍隊を捨てた国として注目をあびるコスタリカの人々が考える平和とはどのようなものだろうか?あらためて平和を考える本である。
    * 民主主義と軍隊は相容れないものだ。もし軍隊があるのであれば、そこに真の民主主義はない
    * 平和問題や環境問題などに対するコスタリカの国家政策や社会システムを評価することは意味がない。それ以上にコスタリカ人の頭の中、つまりそのシステムを運用するひとびとの思想や価値観、文化が大切である。私たちにとって「軍隊をすてた国」としての平和国家を維持するコスタリカを参考にできるヒントがそこに隠されている。
    * コスタリカにおける軍隊の廃止は、ある意味では、歴史の流れの中で生まれた必然の産物である。なぜなら、軍隊は捨てたのではなく、わすれられた存在だからだ。
    * 学校の生徒に「平和とはなに?」というし質問をなげかけてかえったきた答えは「民主主義、人権、環境」であった。民主主義を「対話で問題を解決すること」と定義している
    * モンテベルデ自然保護区。コスタリカで最も早く自然が組織的に保護された場所のひとつである。
    * コスタリカ人がどこに向かおうとしているのか。そして彼らの考える平和を一言で表すとすれば、「プラ・ビタ」という言葉である。この言葉は、日本の「ワビ・サビ」のようにコスタリカ人が共有する深層文化を端的に表現している。直訳すると「純粋で素朴な生活や人生」という意味である。
    * 私たちは、自分たちがもつアドバンテージをないがしろにしているのではないかと思うことがある。これらのアドバンテージを最大限に発揮するためには、自らがもつ思想が重要になってくる。いくらすばらしいシステムや技術を持っていたとしても、それらを使う人間の思想が停滞してしまうと、無用の長物とかしてしまうためである。

  • [ 内容 ]
    「軍隊をすてた国」として注目を浴びる国、中米コスタリカ。
    コスタリカの人びとが考える平和とはどのようなものなのだろう?
    民主的な選挙システムや憲法小法廷、窓口負担無料の医療制度、環境を守る活動などを紹介。
    自由と民主主義を重んじる社会の中で育まれる人々の意識を探りながら、あらためて平和とはなにかを考える。

    [ 目次 ]
    第1章 「王様は裸だ!」と言った人たち
    第2章 コスタリカ略史
    第3章 平和の礎としての民主主義
    第4章 人権先進国としてのアピールと実情
    第5章 「環境先進国」を目指して
    第6章 コスタリカにおける平和の文化

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • コスタリカが軍隊を廃止するに至る
    経緯とそれを実現した
    コスタリカの文化や思想に触れることで
    平和というものがどのようなものなのか考察している。

    最終章でコスタリカと日本における
    平和に対する考え方の違いを
    大きく3点にまとめている。

    ・消極的平和(日本)と積極的平和(コスタリカ)
    ・点の平和(日本)と線の平和(コスタリカ)
    ・「総合的価値観」としての平和

    コスタリカでは、
    「民主主義=平和・人権」といった印象があり、
    その影響を受けた制度なども興味深かった。

    映画もあるようなので機会があれば見て見ようと思う。

  • 「人間とは弱い存在であり、常に後ろ向きに引っ張ろうとする力が、いつでもどこでも誰にでも働いているからだ。それに対抗するためには、後ろ向きに引っ張ろうとする力を認識し、それに対応しなければならない。ただ、それだけでは不十分だということだ。消極的平和と積極的平和を併せ持ってはじめて、私たちは暴力に対抗しつつも、平和に向かって前に歩みを進めることができるのである。」

    【12/12読了・初読・市立図書館】

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