世界史読書案内 (岩波ジュニア新書) (岩波ジュニア新書 655)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005006557

作品紹介・あらすじ

時間と空間を、読書で自由にかけめぐってみよう!さまざまなテーマの本から迫れば、丸暗記するだけの教科ではなく、自分と今をつかむための本当の「世界史」が見えてきます。古代から現代まで、背伸びして読む専門書からマンガまで、わくわくする書目が並ぶブックガイド。歴史がもっと楽しくなります。

感想・レビュー・書評

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  • すっかり大人になってから
    「勉強する」ことは
    ほんとうに 面白い

    十代の多感な若者たちには
    わかるかなぁ…?
    わからねぇだろうなぁ…!

    そして 本書は
    「世界史を学ぶ」に特化して
    「こんな素敵な本がありますよ!」
    という読書案内

    読んできた本も
    まだ 読んでいない本も
    まぁ 魅力あふれる
    「じゃあ もういっぺん!」
    「じゃあ 手に取って!」

    本当に 愉快にさせてもらえる一冊
    ということで
    勉強する って 楽しいよ!

  • 「世界史読書案内」岩波ジュニア新書、2010年、津野田興一さん。

    「世界史についての面白い本を読むのは素敵だよね」と思っている人にとっては、麗しい一冊、コロンブスの卵のような本。

    「世界史についての本を、(たとえ多少面白くなくても)読むのが大変に好きな人。好きで、それを仕事にしてしまった人。だから、大変に長い歳月に渡って、たくさんのそういう本を読んだ人」

    そういう人が、「そうっすね、これとか、面白かったっすよ」と興奮しながら紹介する。

    と、いうダケの本なのです。これが盲点、素晴らしい。

    「こういうジャンルの、こういう感じの本…。いやそりゃ一杯あるけれど、どのあたりが自分のレベルにあっていて、かつ、オモシロイんだろうか?」
    という疑問って、どれだけネット情報が多くなっても、なかなかある程度以上はワカラナイ。(本以外の、いろんな情報の需要についても、意外と同じだったりしませんでしょうか)



    この本がまた味わい深いのは、津野田さんという作者の方が、大学の歴史学者ではないところなんです。高校の歴史の先生なんですって。

    専門的な歴史学者だと、まず自ずと専門領域がある。そして大抵は領域外のことにはあまり発言を慎む。ま、なわばりですから。さらには、「オモシロイ」「初心者にも読みやすい」「とにかくわくわくする」みたいな本は、あまり情熱的に評価したりはしないのが常です。

    そこへ行くと高校教師さんっていう立ち位置は、なかなか強くてユニークな気がします。だって、どの時代のどの地域のことだって教えなきゃならないし、読み手の側のレベルが低くても取り込んでくれる本ぢゃないと、生徒には意味がありませんものね。

    つまりは、「子供がアレルギーで」とか「腰痛が治らない」というときに、「俺はこのあたりの医者は、何十年もかけて全部行ってるし、今でも仕事としてほぼ全部の医者に回っている。その症状なら、あそこの医者がぜったいオススメだよ。だってね、あそこの先生はこういう履歴でね、人柄も、●●なんだよ。あとあそこはとにかく看護師さんが☓☓。あそこは、待ち時間が☓☓なのは覚悟していかなきゃだめ。子供の扱いはとにかくあの病院が親切で、でもアレルギー系なら、別のあそこのほうがとにかく専門で診断が詳しい…」とか、親切丁寧に、実名出して教えてくれる人がいたら、便利だし、助かるぢゃないですか。

    そういう感じです。



    というわけで、こういう本を作った岩波ジュニア新書の編集部さんに拍手喝采、さくさくワクワク読み終えました。

    最後に備忘録として、「これは、いずれ読まねば!」と強く思った本をメモっておきます。

    「歴史学ってなんだ?」小田中直樹

    「ことばと国家」田中克彦

    「物語イタリアの歴史」藤沢道郎

    「物語アメリカの歴史」猿谷要

    「大君の通貨 幕末円ドル戦争」佐藤雅美

    「ヨーロッパの歴史」フレデリック・ドルーシュ

  • いろいろな角度から世界を見つめ直す機会になりそうな本が多数紹介されている。
    私も早速たくさんリストアップした。
    もう読んだ本でもまた新たな視点で読み直すことができそうなものもあり、選書が良いと思う。

  • 授業で扱ったプリントを基にした高校生用の読書案内です。日本人の著作が多いです。外国人のものももっと取り扱ってもいいのではないかと思いました。扱っている本の価格帯は高校生でも買えるようなものですが、古いものは入手困難かも。中以上の高校生にはよいかも知れませんが、大人には物足りないです。

  • 歴史の面白さとは一つには「人間が描かれているから」であり、もう一つには「物事の理が描かれているから」。そして、学んでいて「常識がひっくり返される瞬間」にこそ喜びを感じる。
    また、歴史を学ぶ理由は「すべての歴史は現代史である」から。

    そのように考える、高校の世界史教師たる著者の世界史ブックリスト。
    とにかく世界史を学ぶ楽しさを、生徒に伝えたくてしようがない。
    どうにかして世界史の楽しさを知って好きになってほしい。
    そういう熱意が、文面から(といって落ち着いた文章ですが)ひしひしと伝わってくる。
    だからこそ興味もそそる。

    当然一人の人が作るブックリストなのである種の偏りはあるのかもしれないけど、とにかく虚栄心などない、純粋に良心に満ちた良いブックリストだと思う。

  • タイトルから(世界史上で重要な本が紹介されているのかな)と思いましたが、少し違い、世界史が反映された本十数冊の紹介でした。
    著者は世界史教諭。授業の一環として学生に紹介したリストが元となっているそうです。

    世界史というと、どうしても戦争が中心となるため、暗く重い内容のものが多いように思えます。
    十代で世界史の授業を受けていた頃、こうした本格的な本は読めただろうか?と思いますが、本当に興味を持っている人ならば、どんどん詳しく知りたくなるものでしょう。
    単なる暗記の授業としてではなく、実際に起こった出来事として歴史を捉えてほしい!という先生の熱意が伝わってきます。

    さまざまな本の紹介の中で、フランスでは、ナポレオンが「方言」に基づく名前をつけることを禁じたとありました。
    「各種の暦の中に記されている名と、昔の歴史の中の有名な人物の名だけに限られる」と規定されているそうです。
    たしかにフランス人の名前で、奇をてらったものは思い浮かびません。
    そうした法律が施行された結果、フランスでは名前の種類は500くらいしか無いのだとか。
    "日本では弥生、如月、秀吉、信長などばかりになってしまう"という著者の説明がわかりやすいものでした。
    名前においてなかなか保守的な国、フランス。
    今の日本のキラキラネームなどを知ったら、フランス人は驚くことでしょう。

    キリスト教世界とイスラム世界の力関係が、よくわかっていませんでしたが、十字軍などが行われていた頃は、まだイスラム世界の方が強かったと知りました。
    ナポレオンの力をしても、まだかなわないほど強力だったそうです。
    それが逆転したのは、第一次世界大戦で、オスマン帝国の滅亡と、イランのカージャール朝の崩壊からだそうです。

    キリスト教世界とイスラム世界の橋渡しとして「アラビアのロレンス」が思い出されます。
    映画化もされ、有名になった人物ですが、あの人物像はロレンス自身ではなく、アメリカの従軍記者ローウェル・トマスの講演や文章によって作られたものだとのこと。
    誇張とデマに満ちており、実はパレスチナ問題の発端に大きく関わっているのがロレンス自身だったのだそうです。
    だいたいにおいて、英雄像は作られたものではありますが、ここまで正反対の人物だったという点が驚きです。

    世界史といえど、日本史も含まれており、『鉄砲を捨てた日本人 日本史に学ぶ軍縮』なども紹介されています。
    リストに小説が入っているところにも、幅の広さを感じます。

    読者に問題意識を促す、著者の真面目な教育姿勢が見える本。
    ジュニア新書ですし、もっと学生に語りかけるようなくだけた内容にしてもよさそうに思いますが、出版にすることでもっと‏幅広い年代を対象にしたのかもしれません。

    古今東西のお勧め本が採り上げられている中で、内容を忘れてしまった『23分間の奇跡』と、珍しくも"おもしろい"と紹介された『バルミ 地中海沿岸の都市』、そしてなかなか手が出せずにいる『小説 十八史略』をを読んでみたいと思いました。

  • 世界史おもしろい度が急上昇!すぐに本屋さんに行きたくなること請け合い。本を読む時間がほしい!

  • 世界史を学ぶ際、教科書のように時系列で順番に、年号や名称を記憶していくのは大変苦痛である。場面ごとに、面白い本を見つける事ができたら、歴史を楽しく学べるのではないか。歴史の先生がおすすめの数十冊を紹介してくれます。探すのも大変かもしれませんが、興味深い本が多くて参考になりました。201309

  • 世界史の先生ならではの視点の、親切なブックガイドだと思います。
    一冊につき2ページくらいで概要やおすすめポイントなどをまとめてくれてあり、ざっと見ただけでも読んでみたい本が何冊もできました。
    高校時代、世界史はいちばん好きな教科でしたが、今にして思うと当時はもっぱら暗記するばかりでした。
    今からでも気になった本から順番に読んでみようと思います。
    これからも歴史好きでいたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      これを外さないのは流石!と思ったのが「荒れ野の40年」「栽培植物と農耕の起源」の二冊。
      逆に載っていても良かったのにと思ったのが「魔女狩り」...
      これを外さないのは流石!と思ったのが「荒れ野の40年」「栽培植物と農耕の起源」の二冊。
      逆に載っていても良かったのにと思ったのが「魔女狩り」「あのころはフリードリヒがいた」の二冊。どちらも岩波書店の出版物です。。。
      2013/03/04
  • 902

    歴史的に見て、隣り合う国どうしは文化的・民族的に近い位置に あるにもかかわらず、仲が悪いことが多いのです。というよりもむ しろ、近い位置にあるからこそ仲が悪いと言うべきでしょうか。 くたちが「イギリス」と呼んでいる国と、アイルランドとの関係も その典型事例です。両国の間では、まず民族が違います。アングロ ・サクソン系のイギリスに対し、アイルランドはケルト系。次に宗 教が違います。イギリスはイギリス国教会を信奉するのに対し、ア イルランドでは伝統的にカトリックが強いのです。そしてなにより も両国の間には、征服者と被征服者という不幸な歴史が存在してい ます。

    イスラームは宗教であると同時に世界観でもあります。さまざま な言葉や文化、歴史的な背景を異にする民族を、イスラームは、 つに、かつゆるやかに統合してきました。

    ハワイの産業を支えているのは、日本からやってくる大量の観光客 の存在⋯⋯。本書は、移民、戦争、観光をキーワードにして、ハワ イの歴史を解説しています。そしてそのすべての場面で、日本の影 がちらついているのです。 さらに言うならば、ハワイに移民したのは日本人だけでなく、ポ ルトガル人やドイツ人、プエルトリコ人、中国人なども多くいまし た。中でも朝鮮人や琉球人の置かれた位置について述べてあるとこ ろは必読です。ハワイの歴史は、異文化交流についての一つのモデルです。

    なお、ハワイ観光の最大の日玉であるオアフ島のワイキキビーチ の白い砂は、観光のために大量に持ち込まれて海岸に敷き詰められ た「人工の砂浜」なのだそうです。さあそろそろ、本書を読んで、 本当のハワイを見つめなおしてみよう!

    歴史というものは、人間の営みの集成ですから、本来さまざまな見方や解釈ができる ものです。本書はそのあたりの自由度が高いし、多面的になっています。つまり、本の 中で執筆者どうしが対話をしているのです。だから読んでいて、「ああなるほど」とか、「こういう観点もあるのか」とたくさんの発見があるのです。

    歴史を見るということは、裏側から(逆から)日本の近代史を見ることになるのです。人 は自分自身の顔を自分の力で見ることはできません。鏡や水などに映してはじめて、間 接的に見ることができるのです。ぼくたちが世界史を学ぶ意味もおそらくここにありま す。自分の姿1日本の姿を見るためには、他者の歴史(鏡や水)に照らすのが有効でしょ う。そしてそれは日本と関係の深い国であればなおさらのことで、朝鮮や中国などは格 好の素材をもたらしてくれるはずです。

    日本に住むぼくたちが、自分自身と切り離して他国のことを調べても、何の役にも立 たないだけでなく、時として大きな落とし穴にはまる危険性があります。世界のさまざ まな国を知るのも、もちろんいいのですが、でもまずは自分の足元を見つめることから 始めてみたいと思うのです。

    『石の花』
    坂口尚 講談社漫画文庫(一九九六年) これは世界史を学ぶ人すべてに読んでもらいたいマンガの一つです。 舞台は一九四一年から四五年のユーゴスラヴィア。複合多民族国家の典型ともいえる この国は、第一次世界大戦後の民族自決原則の適用を受け、南のスラヴ族(=ューゴ・ スラヴィア)の寄せ集めとして誕生しました。スロヴェニア人、クロアチア人、セルビ ア人、マケドニア人など、どの民族を取り上げても単独では多数となり得ない国。 つの国境線、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つ の国家」と揶撤される、世界に類を見ない複雑な構成を持つ国。社会主義国でありなが ら自主管理をおこなってソ連に対する独自路線を貫き、非同盟諸国のリーダーでもあっ た国。ここからは「国家とは何か」「民族とは何か」「社会主義とは何か」「宗教と国 家との関わりについて」など、さまざまな問題のケーススタディを導くことができるで しょう。そしてまた、ボスニア内戦のような悲劇の再現をふせぐためにも、その歴史か ら学ぶことはこれからも大いに必要になることでしょう。

    一級の学問研究というのは、その根底のところで、他のさ まざまな学問分野と共鳴し合う力を持っています。本書は二〇世紀の分子生物学の歴史 と展開を記したものですが、「生命とは何か」という根源的な問いは、「人間とは何 か」を問いかける哲学や歴史学や文化人類学とも、自然環境を考える学問とも通じる普 遍的なものです。本書を読むのに専門的な知識はいりません。高校で習う生物の知識が あれば十分でしょう。将来さまざまな分野で活躍するみなさんに、ぜひとも読んでもら いたい一冊です。

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著者プロフィール

<監修者紹介>
津野田興一 
都立立川高校教諭。世界史担当。『全国大学入試問題正解・世界史』(旺文社)解答者。その他著書として『第2版ポイントマスター世界史Bの焦点』(山川出版社),『世界史読書案内』(岩波ジュニア新書),監修として『高校 とってもやさしい歴史総合』(旺文社)など。
高橋 哲
渋谷教育学園幕張中学・高校教諭。日本史担当。『全国大学入試問題正解・日本史』(旺文社)解答者。その他著書として『全レベル問題集日本史・②共通テスト編』,共著で『日本史基礎問題精講』(旺文社),『書きこみ教科書詳説日本史B』(山川出版社),監修として『高校 とってもやさしい歴史総合』(旺文社)など。

「2022年 『高校 定期テスト 得点アップ問題集 歴史総合』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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