国際協力ってなんだろう 現場に生きる開発経済学 (岩波ジュニア新書 668)

  • 岩波書店 (2010年11月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784005006687

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  • 978-4-00-500668-7 c0236¥780E.

    国際協力ってなんだろう
    ~現場に生きる開発経済学

    岩波ジュニア新書668.

    2010年11月19日 第1刷発行
    編著者:高橋和志(たかはし かずし)
    発行所:株式会社岩波書店

  • 333-T
    小論文・進路コーナー

  • 途上国では子供も貴重な労働力であるため、学校に通わせずに働かせることが多く、教育の無償化だけでは、機会費用的に問題が解決できないことがある
    →政府だけでなく、地域コミュニティの関わりが重要

    紛争は発展途上国で国内紛争の形で発生する。
    →国民所得の低さによる略奪目的、国家統治の問題による政権への反発などが主な原因

    国際的なリユース、リサイクル、中古品販売はいいことなのか?
    →いいことではあるが、環境汚染や廃棄コストを考慮して貿易規制がかけられている国もある

    途上国への支援には様々な形がある
    必要経費を単純に積算する形、必要経費のうち資本的部分のみを援助する形、外貨建て部分のみを援助する形、国家予算の一部に援助資金を投入する形(財政支援と呼ばれる。柔軟な資金運営が可能になるが、金を出すなら口も出すパターンが多い)など。

    マイクロファイナンス…貧しい人々に低金利でお金を貸したり、安価な医療保険を提供したりすること。マイクロクレジット、マイクロ貯蓄(グループ名義での積立)、マイクロ保険の3つが主なサービス

    条件付き移転政策…貧困家庭の受給者が一定の条件を満たした場合に、現金等を給付すること。
    メキシコのプログレサが有名。学校への一定の出席率と健康診断の受診などにより、補助金を支給した。
    プログレサは就学年数を1年伸ばしたが、生徒の成績平均はよくなっていない。公的機関は、教育の機会の保証だけではなく、教育の質を高めていくのも課題である。

    先進国で開発した技術がそのまま途上国に導入できる例もあれば、先進国では役立たずの技術が途上国で生きることもある。(小舟制作、マラリアの薬など)

    スマホの普及により、途上国の人々は市場の価格を調べ、価格が高いところや需要のあるところに品物を売りに行けるようになった。これにより、価格の同一水準化、生産効率の上昇とコストの低下に繋がった。
    電子マネーの普及により、仕送りがめちゃ楽に。

    緑の革命により、奇跡の米と呼ばれる品種が開発された。→土地あたりの収穫量の増加、二期作や三期作による生産量増大、生産量増大による土地無し貧困層の雇用の増加、米(主食)の価格下落による購買能力の上昇と、余った金が子供の教育資金に振り分けられた。

    途上国から先進国への医療従事者の引き抜きが大きな問題となっている。しかし、国際労働移動は、国に帰ってくれば技術移転を促し、送金がもたらす正の効果もあるため、一概に規制すべきかは難しい。

  • 国際協力や援助に係る様々な論点が、浅く広く紹介されている、教養学部のオムニバス講義のような一冊。
    入口としてはよいし、JETROアジア研をはじめとする執筆陣の意欲を感じた。

    <メモ>
    - 環境問題、共通だが差異のある責任
    - 開発援助、贈与・融資・技術協力、借り入れは計画的に
    - 貧困の罠(貧しいから教育・投資できない→貧しいまま)、マイクロファイナンス
    - 技術とは一定の資源から大きな成果、先進国で開発されたものより優れた「適正技術」(100ドルパソコン)
    - IT、携帯電話→情報入手コストダウン→価格安定・生産効率UP・コストdown
    - イノベ、産業集積、産業クラスター理論と空間経済学
    - グローバリゼーション、価値観のグローバル化と市場(経済)のグローバル化★後者は手放しで喜ばれるべき?
    - 医療従事者を途上国から先進国に引き抜くことは犯罪?(技術供与もできるし送金もできるし志望者増で結果的に途上国にも従事者が増えるのでOK?)★インフラ輸出はいいのか?

  • 開発経済学全般の初歩的なことを短期間でカバーしたいのであれば、オススメの1冊。

  • 国際協力、主に開発途上国へどんな援助が出来るのかについて、外務省やJICAの立場から書かれた本と位置づけることができる。副題にあるように開発経済学についての現場での目線からの入門書といえる。1つだけ大きく考えが違うのが、WTOなど自由貿易についてのことだ。体制側の人が書いているからだろうが、農業や食糧自給・安全の面から自由貿易が善とはおかしなことだ、そういうところに気づいてしまうと、途上国の医療関係者の頭脳流出も肯定していたりと、本当に途上国の庶民のことを考えているのかと疑いが濃くなって行く。国際協力ということは、どんなことでも疑ってかかるべきということを教えてくれる本ではあるのかもしれない。

  • 発展途上国の問題。
    貧困、感染症、教育、知的財産、環境etc...
    さまざまな問題を紹介し、他に、より学術的な分析、
    たとえば産業集積(一つの都市や地方に産業が集中して経済活動をなす)、
    そして技術革新の例、たとえば農業においての東南アジアにおける
    「緑の革命」(1960年代からつづく、生産拡大のための米の品種改良など)
    の紹介などがなされている本です。

    各章の一つの単元が7Pで区切られていて、よくまとまっていて、
    集中して読む分には読みやすいです。
    ただ、それでも法制度のところなどは、言葉がうまく頭に入ってこなかったので、
    ちょっと苦労して読みましたし、理解度は低いです。

    そういう、ちょっと難しいところがあります。
    岩波ジュニア新書なのですが、たぶん、中学生が読むにはけっこう厳しいと思います。
    現代文が得意でいろいろな言葉を知っていたり、辞書で調べる労をいとわない人には
    いいかもしれません。

    海外で国際協力をしようと思っているわけでもないのに、何故このような本を
    読んだかと言えば、内容からいろいろ類推して役立つことがあるだろうと
    思ったからです。その読み通り、格差社会が到来している今の日本においても、
    上記の貧困や、それと保険の問題ですね、そういったことがらが、
    まるで遠くの出来事ではなく、日常の問題だということに気づくことになります。
    日本は豊かですから、そういう社会の暗部的な問題って、霧に隠れているような
    感じだと思うんです。そこを、発展途上国の現実を眺めることで、
    他人の振り見てわがふり直せじゃないですが、自国の状態を把握するのに
    フィードバックがあったりします。

    条件付き現金移転政策というものが、途上国向けにあります。
    たとえば、85%以上の出席をする子どものいる家庭の母親に対して、
    補助金を与えるだとかというものです。
    これって、日本でいえば子供手当じゃないですか。
    子供手当が条件付き移転政策の簡易版のように見えてくる。
    そして、なぜ条件付きなのかというところが本書に書いてあります。
    85%の出席によって、勉学に挑む時間が増えて、子供の教育レベルが上がるというものです。
    そのためには、出席させたことに見合う、教育の質っていうものが必要になってきます。
    さて、そのあたり、日本の子供手当はどうなのか。
    どうも、教育レベルを上げるためじゃないことが推察されますね。
    つまり、高齢化、出産率の低下をおさえるための、現金(所得)移転政策なのでしょう。

    また、他の諸問題についても、ぶっ飛んだ類推を必要とせずに、
    日本の現状を改めて考えるのに役立つかなという気がしました。
    問題認識に適しています。

    ということで、本書の結びにも書いてありますが、
    国際開発の問題全体を広く見回すのに向いている本でした。
    国際協力をやりたいなと漠然と考えている方は、
    まず、この本を手に取ってみて、どういうものなのかを把握してみて、
    それから、気になるカテゴリーを新たに深く掘り下げてみるのが
    良いかと思います。

    まぁ、いまは日本が大変な時期ですから、海外に目を向けていられない
    人が多いかもしれないですが、それであっても、
    さっき書いたように、日本の諸問題としても読めるものなので、
    時間のある方はさらっと読んでみても損はないでしょう。

  • 登録日:12/16

  • 国際協力について一から勉強すべく図書館で借りる。環境、教育、ジェンダーなど各分野の国際協力の専門家が数ページづつ寄稿するスタイル。JETROのアジア経済研究所開発スクールのOB/OG繋がりということらしい。情報技術革命の章だけを読む。日本に生まれ育った僕には携帯、電子マネー、テレビ、インターネットはそこにあったもので、これらが浸透が社会に与える影響なんて想像できないなぁ。紹介されているkiva.orgというサイトをチェックしてみたら面白かった。

  • 朝陽のような、夕陽のような、希望のような、諦念のような。この写真カバーは魅力的だ。開発経済学の視点から、開発途上国の今を伝える一冊。

    開発途上国でいま何が起きているのか。そういう視点から読んだ時、興味深い事実はいろいろとあった。法制度の改革が先進国の押しつけにならないのか、携帯電話の普及で社会がどう変わるのか、知的財産権の保護の問題が開発途上国の産業にどのような影響を与えているのか。いずれも、個々には面白い話題だと思う。

    しかし、残念なことに全体像が見えなかった。おそらくこの種の本でまず伝えなくてはならないのは、「なぜ読者であるあなたが、開発途上国の実態を知らなくてはならないのか」という問いだと思う。しかし、その考察を抜きに個々の局面の話をしているので、個々の著者が語っているので、どうしても全体を貫くテーマが見えにくい。たとえば、「ハーフタイム 開発経済学でわかること」のような主旨の文章を、もっと先に持ってくるだけでも、ずいぶん印象は変わったかもしれない。

    それこそ全人類のコストが「開発途上国」に転嫁されているような状況もある中で、それでも編者はグローバリゼーションを進めるべきだと考えている。それはなぜなのか。そしてその中で開発経済学はどのような役割を果たしているのか。そもそも、私達がなぜ開発途上国の彼らに関心を持たなくてはいけないのか。そういう、基本的な話をこそ、僕は知りたい。開発途上国の実態をこのような本で知ることはもちろん意味があることだが、何かもう少しやりようはあったのではないか。惜しいと感じる一冊だった。

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著者プロフィール

政策研究大学院大学教授

「2025年 『実証から学ぶ開発経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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