- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005006731
感想・レビュー・書評
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メディアが報道する情報がどのように操作され、どのように大衆が導かれて行くかをざっくり論じているこの作品。
アメリカでの経歴が長いジャーナリストなので、内容がアメリカに偏っているのは仕方がないのか。
日々溢れる情報の中から、何を選んでいかに自分の意見を身につけるかを説いている。面白かったのは、「ワイドショーやスキャンダルは、重要ニュースとセットになって出てくる」というくだり。アメリカでは劣化ウラン弾による帰還兵の健康問題が話題に上りそうになったタイミングで、ジョンベネちゃん殺害事件で報道がかき消されてしまったということだ。日本では、SMAP草薙くん全裸で逮捕事件が大々的に報道されている時に、こっそりと『海賊対処法案」が国会を通過してしまい、ソマリアで外国船のためにも武器使用が許されるようになっているという事実。
報道される情報の偏りを見抜くために、国会審議のネット中継を見てからテレビの国会報道を見る方法や、数社の新聞を読み比べる方法なども指南していたりもする。報道される断片情報を組み合わせて、完全なる一つの絵を作り上げることは、相当骨が折れる作業である。そこまでニュースを掘り下げられる人はなかなかいないだろう。情報弱者の問題が叫ばれているが、テレビと新聞からしか情報を得ていない人間は、これならおそらく全員が情報弱者と言っても過言ではないような気がする。
まずはできることから始めようと思う。毎回問題点を持って、選挙に行き候補者を選び、選挙の後こそ当選者の動向に注視していこうと思うのであった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岩波ジュニア新書から出ているのだが、「ジュニア」って、どれくらいの年齢が対象なんだろう?というのが、読みながらずっと抱いていた疑問。
アメリカ留学を希望している高校生くらいなら、アメリカ社会の現実が分かって参考になるが、アメリカの政治、軍事、メディアの仕組みについて詳しく書かれている一方で、普通の日本の若者が「社会の真実の見つけ方」の具体的な方法を知るためなら、日本で起こっている同様の事象をもっと取り上げたほうがよいのでは、とも思った(著者がアメリカを専門としているジャーナリストの方なので、それは仕方ないとも思うけど。)ジョンベネと草なぎの比較は...個人的には??な感じ。
前半が、「貧困大国アメリカ」の内容をかいつまんだもの、ここからメディアの落とし穴と、それを回避する方法に持っていって、最終章で具体的な政治参加方法を示唆、という流れにしようという意図は見えるが、筆者が薦める、大手メディアに惑わされない情報収集方法も、中高生ではかなりハードルが高い(というか、大人でも難しい)。最終的には「選挙」が最強、という論も、選挙権のないジュニアに向かっていうのが効果的か...ちょっと疑問が残った。
一方で、「大人」目線で読むなら、学ぶことは多い。政治力がない者たちの努力がとことん空回りで終わってしまう仕組みが詳細に説明されている。4章にでてくるマイクおじさんの言葉に感動。アメリカの60年代に若者だった人たちは、今もかっこいいね。こういうのを見ると、日本もアメリカも「民主主義が機能しなくなった」のではなくて、「民主主義政治を上手く活用できる人がいない」状態にあるのかなあ、と思う。政権をひっくり返す革命は無理でも、政権に積極的に加わって、中身を替える改革は、正しい知識を身につければ可能なのかも、といくらか希望が持てた。
2011年の2月に初版が発行、買ったのは9月発行の第5版だが、3.11という言葉が一回だけ出てきた(9.11との比較で)。付け足さずにはいられなかったんだろう。この著者の、3.11以後の日本の動きに関する考察をぜひ聞きたい。 -
テレビ・新聞・ネット…などが発信する情報は正しいものと、うそが混ざりあっていて、正しいもの(真実)を見つける為には自分の目・耳・心をきたえないといけない、というのを教えてくれました。
【熊本学園大学:P.N.みなぞう】 -
これまでにも著者がレポートしてきたアメリカの姿を
若い世代に向けて分かりやすく整理している
9.11テロから、どうやって戦争に向かって行ったのか
メディアはいかに人びとを誘導していったか
教育を受けるのに多くの借金を学生はなぜ増えたのか
アメリカの姿を通じて、日本に対する警告を出す
著者らしい現場の情報が、その実態をよりリアルに示してくれる -
子供向け。だが、わかりやすい。
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アメリカでの軍事・教育・メディア・政治をテーマに、若者達が情報操作、教育システムへの競争導入や民間化などによって追い立てられ、搾取されていく重たい現実をわかりやすく伝えている。自分の頭で考え、情報源を偏らせず、何が正しいのかを見極める力を養っていくことは、本当に大切なのだと改めて思う。また終章では高齢者が大規模な組織で時間をかけ政治家を動かし自分達の権利を勝ちとってきた経緯にふれ、若者たちだってやり方の工夫と諦めずに継続的な活動次第で、社会は変えていけるのだと希望を伝えている。
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はしがき
Ⅰ歴史家と事実
Ⅱ社会と個人
Ⅲ歴史と科学と道徳
Ⅳ歴史における因果関係
Ⅴ進歩としての歴史
Ⅵ広がる地平線
今となっては目新しさはないものの、原著が50年前に出版されたことを考えると当時は新鮮な受け止められ方をしたのだろう。
歴史は手段や視点であって、目的的な歴史観は危うい。
訳者が社会学者であり、歴史学者でないことも妙に納得。 -
堤さんの講演を聞いてから書籍はほとんど読破している。アメリカの教育の現状やその課題を詳細にレポートしていたが、今の日本がその教育施策を追随しているということがよくわかって、背筋が寒くなった。教育に直接的な成果主義を求めるとろくなことはない。小学校の時に朝礼で聞いた校長先生の言葉、今になって心に響くということもよくある。
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読了。「貧困大国アメリカ」と基本同じらしいけど、ジュニア文庫ということもあってか、教育問題に特に重点を置いている印象。日本の現状とも共通していて、考えさせられる。ただし、子どもに読ませたいかというと残念ながら私はNO。この手の文章のトーンは好きじゃない。
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大人が読んでもためになる本。アメリカの軍・教育についても知ることができる。