幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005006885

感想・レビュー・書評

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  • 【メモ】
    著者:蓼沼宏一(社会的選択理論,厚生経済学,ゲーム理論)

    【版元】
    http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jr/toku/1106/500688.html


    【目次】
    まえがき [iii]
    目次 [v-vi]

    1 「経済」とは? 001
    1-1 チリの落盤事故から 
    1-2 「経済」とは? 
    1-3 限りある資源の配分 
    1-4 人間の多様性
    1-5 効率・衡平・公正 
    1-6 資源配分の評価 
    1-7 最善と改善

    2 ひとの「福祉」とは? 019
    2-1 「福祉」の意味と基準 
    2-2 モノ・サービスの量 
    2-3 国内総生産(GDP) 
    2-4 幸福・欲望充足――効用 
    2-5 選択論アプローチ 
    2-6 選択論アプローチと福祉の個人間比較 
    2-7 機能 
    2-8 モノ・サービス、機能、効用の関係 
    2-9 幸福度と機能 
    2-10 機能ベクトルと等福祉曲線 
    2-11 潜在能力――選択の機会の豊かさ 
    2-12 情報の制約と福祉評価 
    2-13 想像上の立場の置換 
    2-14 基準値との比較 

    3 無駄のない経済システムとは? 057
    3-1 「無駄」があるのはどんなときか? 
    3-2 パレート効率的な資源配分は社会的に最善か? 
    3-3 パレート効率性は相対的な評価基準として有効か? 
    3-4 利害対立があるときには? 

    4 市場システムの効率性 071
    4-1 パレート効率的な資源配分のための条件
    4-2 パレート効率的配分を実現するメカニズム 
    4-3 貨幣との交換 
    4-4 労働供給 
    4-5 生産費用 
    4-6 市場メカニズムが機能するための条件 
    4-7 市場メカニズムに欠けていること
    4-8 市場メカニズムでは解決しないこと

    5 格差のない社会とは?――衡平性の考え方 093
    5-1 何に関する格差・衡平か? 
    5-2 個人間の状態比較の基準 
    5-3 個人間比較の主体 
    5-4 羨望の無い状態としての衡平性 

    6 消費・労働に関する衡平性――無羨望配分の考え方 105
    6-1 消費に関する無羨望配分 
    6-2 選択の機会の均等 
    6-3 消費と労働に関する衡平性 
    6-4 衡平性基準による相対的な評価 
    6-5 パレート改善第一・衡平性第二の評価基準 
    6-6 羨望の無い状態としての衡平性基準の難点 

    7 消費・労働に関する衡平性――平等の考え方 125
    7-1 平等等価の考え方 
    7-2 平等等価配分と効率性 
    7-3 PS福祉指標と功利主義の違い 
    7-4 パレート改善第一・衡平性第二の基準とマキシミン原理 
    7-5 消費・労働に関する評価基準に基づく平等等価配分  

    8 機能に関する衡平性 143
    8-1 消費・労働に関する衡平性の限界 
    8-2 機能に関する衡平性 
    8-3 機能に関する無羨望配分 
    8-4 社会的評価の循環の問題 
    8-5 潜在能力に関する衡平性 
    8-6 平等等価に基づく衡平性 
    8-7 パレート改善第一・衡平性第二の基準とマキシミン評価法 
    8-8 マキシミン原理の正当性

    9 経済学の役割 163
    9-1 規範的評価と合意形成 
    9-2 ひとの福祉評価の情報ベース 
    9-3 福祉の個人間比較の方法 
    9-4 資源配分の社会的順序付けの方法 
    9-5 社会的選択の問題 
    9-6 経済学の役割 

    10 さらに学びたい人のために 173

    あとがき(二〇一一年五月 蓼沼宏一) [187-189]

  • これはめっちゃ面白かった!
    厚生経済学と呼ばれる初歩的な領域に触れられる良書!
    経済学に使う基本的な数学の知識があればオススメ。

    6章までは一般的な経済学の説明ともとれるが、その土壌の上で展開する7章が新古典派経済学に慣れきった一般的な経済学徒の脳に電撃を放つ。
    そして8章から最終章に到るまで、哲学(倫理学)的でもあり数学的でもある経済学が平易な言葉で説明されており、求めていた経済学ここにアリ!という感想。

    これは経済学を既に学んでいる人に是非とも読んでほしい一冊。

  • 厚生経済学の入門書。セン先生のやろうとしていることがやっとわかった。すばらしい。

  •  本書は一橋大学経済学部教授で厚生経済学や社会選択理論を専門としている蓼沼宏一氏の書いた本である。
    内容は、効率と公平(本書では“衡平”という言葉で言い表している)を鑑みて、最善の経済のあり方について模索する際に考慮に入れるべき様々な考えを、主に厚生経済学の視点から提供したものである。
     多くの人に取ってこの本は興味深いものだと思う。なぜならサンデルのハーバード熱血教室で議論している正義の話と本質的には一緒であるからだ。サンデルは政治哲学の観点からだったのに対し、本書はそれを経済学の視点で説明・考察したものと言ってよい。
     このような、いわゆる「正義」に対する考察を、経済学の視点からこれほど明瞭にまとめたものは今までないのではないだろうか。確かに厚生経済学の教科書はたくさんある。しかし最近人々の興味関心のある、効率と公平にフォーカスをあてて、小難しい厚生経済学をまとめあげたという点で、経済学をやっていない人にとってもとっつきやすい内容であると思う。
     とはいえ、内容自体そもそも難しいから、いくら簡潔に書かれているとはいえ、難しい事に変わりはない。おそらく一回では完全に理解できないだろう。
     また、説明が所々わかりにくい部分があることも確かである。これは経済学をやっていないと理解しにくい部分もあれば、経済学をやっている人にとって逆にわかりにくくなってしまっている部分というのも存在することを意味する。
     しかしながら、総合的な評価としては、とても内容の優れた本と言う他ないのではないだろうか。なにより重要なのは、正義の議論をする際に政治哲学のみならず、厚生経済学からの視点もはずすことはできないことを印象づけていることである。経済分析の強みは、言葉では説明しにくいものを経済学独自の方法で説明を可能にする点である。そういう意味で、政治哲学では説明しきれないところを説明しているという点で、厚生経済学の視点から著した本書は価値あるものだと思う。

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