物語もっと深読み教室 (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 74
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005007394

作品紹介・あらすじ

文学作品は、何が書いてあるか(内容)だけでなく、どう書いてあるか(表現)に着目して読むと、もっと深く読みこむことができます。語られ方に注目して、主人公、語り手、作者など、作品の要素に気を配りながら、宮沢賢治の童話や夏目漱石の「こころ」など、教科書でもおなじみの名作を講義形式で楽しく読み解いていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 中高生向けの特別教室全8回の記録を本にまとめたもの。久しぶりに教室に座っているような気分になりました。
    教科書に登場する作家の作品を取り上げながら、学外がら招かれた大学の先生という立場から「物語」を深読みすることを子供たちに教えていきます。

    「物語」の読み方には「何が書かれているか」を考える読み方と「どのように書かれているか」を意識する読み方がある。国語の教科書では制約があるので、どうしても長い小説の一部を扱うため、「どのように書かれているか」を読むことは少ないのかもしれない。

    「走れメロス」はメロスの往路は端折り、復路を友情物語として教室で扱うことも多い。しかし、そもそもメロスは妹の結婚式の方が重要で、その為に親友を身代わりに立ててしまうのではないか?

    夏目漱石の「こころ」は教科書では下の先生の遺書を先に学んで、通して読むのは夏休みの宿題になるパターンが多い。「こころ」の主題が先生の遺書(=夏目漱石の思想)にあるとする考え方が一般的だから、小説全体の時間軸を無視してしまう。(実際、このワナに嵌り、上の読み始めに「私」を見失って混乱したのを覚えています)

    坊ちゃんに登場する赤シャツは本当にそんなに卑劣な奴なのか?坊ちゃんの語り手は「坊ちゃん=オレ」であるが、赤シャツ側から世界を見れば、彼こそ常識人かもしれない。

    「どのように書かれいるか」を掴まえる為には、その物語の語り手を意識すること。物語の語り手が主人公の場合も、第三者の場合も、それは作者ではない。作者が創作した「誰か」に語らせている。

    物語を書くということは、現実とは違う場所に立つ語り手を創造してその誰かに語らせること。自分とは違う語り手というキャラクターを生み出した時にその人は表現者になれる。

    この講義の「深読み」の最終的な出口は読むことから書くことへ移り渡ることでした。

    主人公とファンタジーについて。
    異世界へ行って帰る「浦島太郎型」と現実へ不思議が現れる「聞き耳頭巾型」とか
    ハイ・ファンタジーとロー・ファンタジー或いはエブリデイ・マジック。
    大概の主人公は「行って帰る」
    主人公が成長する成長物語に対して、主人公の成長はどうでも良くてひたすら観念を試される遍歴物語(アンパンマンやドラえもん)
    日本の現代児童文学には成長物語が多い。

    大学で学んだ方はご存知の内容かもしれませんが、勉強嫌いな私には今更ながら意識することでした。

    授業時間の関係で中途半端に終わっている部分も多く、また授業はなまものですので、文章におこすと少しまとまりがないというか、何を語りたいのか、読む行為の中で見失ってしまう時がありましたが、とても楽しい講義でした。

  • 「だれにしろ、じぶんがこまっていたときに力をかしてくれたものを、あとになって、ばかにして相手にしないという はない。」
    このおとうさん、ちゃんとした人ですね。えらい

  • 国語科教育の指導教授から授業中にちらっと紹介された本。
    多摩にある中学・高等学校で希望者に向けて行われた「物語もっと深読み教室」と名付けられた土曜日の特別講座を文章に書き起こしたものです。

    これは中学・高校の国語の授業とはかなり違うなぁ、こんな授業は普通では絶対出来ないだろうなぁと思いつつ、こういう国語の授業だったら個人的にはすごく楽しいしためになるのになーなんて思ったりもしました(笑)
    どちらかといえば中学・高校のような授業ではなく、大学の入門講義みたいなことをやっているような感じです。

    文章から作者の意図するところではないところまで読むことが「読むこと」なのではないかと主張する筆者。こういうところはまさに「大学における読み方」だなぁという風に思いました。
    「語りを読む」とか、登場人物の視点を詳しく考えるとか、普通の読書ではなかなかそこまで至ることはないし必要もないんだと思っているのだけど、そういう読み方をすることで「読み」の幅が広がって作品世界も豊かになるということは子どもたちにも知ってもらいたいなぁと思う。そうやって読むことで「考えること」を鍛えることにもつながると思うし。

    私自身、この講義を聴いて(実際には読んだわけだけど笑)なるほどなぁと思うところが多く、こういうことを心に留めながら、少しずつ断片だけでも教えられたらなと思いました。

  • 子供向けに書かれていますが、大人でも十分読んで楽しめます。内容は「深読み」について作者の言葉でわかりやすく、ただ読むだけではなく、別視点を持つことによって作品を「深読み」することの楽しさを教えてくれます。
    とりあげられている本は、教科書に載るような有名なものが多いですが、「なるほどこんな見方もできるんだ!」と読んでいて楽しかったです。作者さんの解釈も興味深かったですし。
    最近では「文学」なんて勉強しても何の足しにもならないとかそういう見方をする大人が(残念なことに)多いですけれど、様々な面から物事を見るという「力」はこれから必要になってくるんじゃないかなと思いました。
    学生との対話形式ですので、堅くないですし本を読む質をあげたいと思われる方は一読をオススメします。今まで本に興味がなく、残念ながら学校の国語が面白くなかったという人にも、実は文学って楽しんだ、ということを新たに学べるかもしれないですよ。

  • 登録番号10104 分類番号901.3 ミ

  • 某先生が、優れた研究者は子供向けに書く時むしろより真剣に書くので名著も多い、というような事を仰ってましたが、この本もそういう著作の一つです。あまり文学や芸術の楽しみ方が分からない、という方に年齢問わずおすすめです。

  • ぼくの大嫌いな、心から嫌いな『走れメロス』についての言及で本書が大好きになった。

    曰く「 『復路』のメロスに注目するのとは違って、『往路』のメロスに注目すると、物語の意味も違って見えてきます」。

    たぶん『走れメロス』は、着眼点を変えても「面白く」はならないだろう。でも「意味も違って見えて」くるとなると、絶対的にそのような読み方を、力いっぱい試してみたくなる。

    「ファンタジー」についての言及は、おそらくファンからすると大いに物足りないし不満だと思う。でもたとえば児童文学と童話の分類などにおける「力強さ」は面白いし勉強になる。これはなかなか面白い本だった。

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プロフィール

1955年、東京生まれ。立教大学卒業。同大学院前期課程修了。宮城教育大学助教授うぃへて、現在、明星大学人文学部教授。『国語教育と現代児童文学のあいだ』(日本書籍)、『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『児童文学 新しい潮流』(編著、双文社出版)など。

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