お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書 757)

  • 岩波書店 (2013年11月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784005007578

みんなの感想まとめ

フランスの歴史をお菓子と共に探るこの本は、食文化と歴史が交錯する魅力的な内容です。フランス菓子の発展を通じて、ケルト時代からの宗教儀礼や、国のアイデンティティに結びついた食の背景を知ることができます。...

感想・レビュー・書評

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  • フランスの歴史をその当時のお菓子と共に紹介していく本。
    フランス菓子がどのように発展していったのかがわかって面白かった。

    歴史部分は私の知識が無さすぎて斜め読みした箇所もありつつ、お菓子の情報がとにかく美味しそう!で釘付け

  • 砂糖の歴史、西洋美術の歴史、宝石の歴史とあわせて、とうとうフランス史まで進出。
    この好奇心が中学くらいに出てくれていたら…と再び煩悶する。

    砂糖の歴史ではイギリスの紅茶文化にかなりスポットライトが当たっていたけど、最大の砂糖プランテーションを保持していたフランスで、砂糖文化が根付かないわけないよね!

    キリスト教、奴隷貿易、絶対王政との関係から、どんなお菓子が発展してどうやってフランス料理の下地となったのか、がわかって面白い。
    あと、岩波ジュニア文庫は岩波文庫とはまた違って、著者の思いが主張激しく書かれてたりもするのも面白い。
    ※サヴァランとかアマンディーヌとかいった鼻にかかった名前のお菓子のほうが、ザッハートルテなどといった、堅苦しく喉が痛くなるような名前のものより、洗練されておいしそうだ、と感じられませんか。(9ページ)
    ⇒絶対個人的な思い込みだと思う。少なくとも私はザッハトルテのほうが、名前馴染みある分おいしそうだと感じる…。

    ■古代のお菓子と文化
    古代ローマ帝国時代(前1世紀)カエサルに支配された地域が現フランス辺り。
    当時は甘味といえばハチミツ。「ハレ」の日の特別な食べ物。結婚式にお菓子を奉献する儀式や死者の葬式の際に地獄の番犬ケルベロスから死者を守る為、ハチミツケーキをケルベロスに与えて逃げるという風習もあった。

    4世紀ころ、キリスト教が国教となり、多神教の文化や風習を捨てさせようとするも難しく、今までの風習にキリスト教的な意味合いを持たせて布教するようになった。
    →ホスチア(聖体パン)やウーヴリなどを作って、ミサで配り、これを食べると聖別されるとした。
    →神と人をつなぐお菓子は修道院が牛耳っていて、初期は修道女や修験者の作業だったが、中世には専門のウーヴリ職人が作るようになった。

    ■中世のお菓子と文化
    中世初期は封建制度で3身分(農民、聖職者、騎士)となり、地方一帯を城主が治めていた。
    カペー朝、フランスの王ユーグ・カペーは領地こそ少ないが、聖成式で正式にキリスト教会より認められていたため、その王の正当性を主張することができた。
    ・内部の領土争いをやめさせるため、敵を外に作る
    →イスラムに奪われた聖地エルサレムを奪い返す!
     →十字軍遠征で聖地エルサレム国奪還(略奪?)
      →アラブ経由で砂糖や珍しい果物がヨーロッパ大陸にもたらされる(ドラジェ、オレンジピールの砂糖漬け(コンフィずりー)、ジャム(コンフィチュール)など)
    ・砂糖が中東経由で手に入るようになり、一部の特権階級が砂糖を食べることができるようになった
     →キリスト教の大食の業に当たると批判されるも、砂糖は医薬品だという主張で切り抜ける
    ・12,13世紀にはパリがヨーロッパ随一の文化と学問の都となる。
     →ルーブル宮殿建設、城壁の建築など、街の美化にお金をかけ始める。王国を中央集権化し、ローマ教皇をアヴィニョンへ移動させるなど力をつける。
      ノートルダム教会1225年完成、ノートルダム大聖堂1220年完成

    ■大航海時代のお菓子と文化
    ・キリスト教の祭りにお菓子が庶民にも食べる文化ができる
    →4/1復活祭(イースター)…古代の豊穣神に捧げられる聖なる食べ物の名残。キリスト教では卵=生命の象徴とされた。
    →1/6公現祭…東方三博士がキリストを訪問する記念を祝う為に、ガトー・デ・ロワを食べるしきたりに
    →2/2聖燭祭…マリアをたたえる祭り。なぜかクレープを焼く習慣となる。左手に金貨を握って右手で焼いたクレープを高く上げてキャッチすると金運アップするという迷信広まる
    →ケーキの元祖、ハチミツとスパイスとライ麦粉で作られたパンが貴族の間で広まる。
    ・1337年、フィリップ4世の死後、後継者争いで英仏王家が対立。100年戦争始まる
    →1429年オルレアンの戦いでジャンヌ・ダルク現れる。
    ・1340年代、ペスト(黒死病)大流行。国民の約三分の一が亡くなる。また小氷河期で農作物大打撃。
    ・100年戦争後、大航海時代始まる→スペインは中南米で宝石や金銀を、ポルトガルはブラジルで砂糖プランテーションを、フランスもアフリカ大陸で黒人奴隷による砂糖のプランテーション経営に力を入れる。
    ・16世紀前半、イタリア・ハプスブルク家と戦争→イタリアのルネサンス文化の影響を受ける→フランソワ一世は芸術・文化の重要性を理解→権力の要素と捉える。
    ・100年戦争後のフランスはパリに中央集権を進めながらフランス国民意識を刷り込む
     →大航海の略奪の恩恵を受ける貴族達特権階級→差別化が進み、特殊な文化(世はバロック時代に進むがフランスは古典主義に走る)
    ・アンリ2世とメディチ家カトリーヌの結婚
     →イタリアの食文化が流入。(マカロン、スポンジケーキ、ジェラート、フランジパーヌ、パスティヤージュ、ピエス・モンテ)また、カトリーヌによってフォークで肉を食べるというマナー、パラソル、香水がもたらされる
    ・ルイ13世とスペイン王女アンナの結婚でココアの作り方が流入
     →スぺインがメキシコ征服時、コルテスによりカカオ豆がもたらされる
     →現地は唐辛子を入れて超辛くして飲むことで神への崇拝を高めていたがスペイン人飲めたもんじゃない
     →スペイン人の誰かが試しに砂糖を入れたらめっちゃおいしかった
     →長らくスペイン王家の秘密とされていた

    ■宗教戦争後とアンシャン・レジーム(フランス革命前の旧体制)
    宗教戦争でカトリック系優勢となったフランスは美食への道を進める。(大食という悪徳観念はどこへ…)
     →同じカトリック系のスペインやイタリアが新大陸からの未知なるおいしい物の流入で好奇心止められなかったか?
     →つまみ食いはNGだが、美食をしかるべきマナーで食べることは教養とみなされOKと定義された。
     →イギリスなどプロテスタント系は質実剛健が良とされ、紳士スタイル、紅茶方面へ(つまりシンプルで手間がかからないものが好まれた)
     →パリ市内の美化に伴い、ブルジョワ階級のゴージャス化に拍車がかかる
      →王権とフランスの威光を高めるために中央集権化がより進む。(1661年ヴェルサイユ宮殿建設、1648年アカデミー設立、フランス料理の豪華料理の追及→テーブルマナーの確立やテーブルアートの技術向上)
     →砂糖プランテーション化でフランスで砂糖が安く手に入るようになる。⇒イギリスへ砂糖輸出したり、コーヒー、カフェ文化が花開き、お菓子も発展する(ブリオッシュ、シャーベット、シロップ、レモネード、菓子パン、プリン、パイ、生クリームが誕生)
     →1691年「ブルジョワ家庭の料理人」出版(カスタードクリーム、ホイップクリーム、アイスクリーム誕生)
     →絶対王政が進み、貴族たちの政治的権限が失われ、ヴェルサイユ宮殿内に留まって王の関心を集めることに注力し始める。→優美で女性的なロココ文化が始まる
     →ロココ文化で、甘い空気のような植物的要素が好まれ、香りより、美しい形や色を優先するように⇒ケーキデコレーションや食器も銀やエナメルで美しく繊細になる
     →1770年ルイ16世にマリーアントワネット嫁ぎ、オーストリアからクグロフなどのお菓子文化流入する
     →フランス財政難が深刻化⇒イギリス産業革命で砂糖の輸出より工業製品の輸入が増えた、植民地で成功した商人のブルジョワ化、貴族など特権階級の免税と散財が止まらない

    ■フランス革命とナポレオン
    フランス革命後、多くの貴族が没落し、多くのお抱え料理人がパリでレストランを出店する。
     →パリでは身分問わず、仲間とレストランで食事をするのがブームになる
     →一般大衆化+カフェ文化で学者や研究者の批評でサービスと味が発展する
     →アントナン・カレーム(1783~1833)によるピエス・モンテ「古代ローマの滝」など、建築思想を用いて3次元のお菓子を作ることが可能に
     →ユルバン・デュトワ(1818~1901)はブラン・マンジェやシャルロットを考案。多数のレシピが普及し、お菓子の名前や作り方をレシピとして守ろうという基本ができる
     →各地でお菓子が生まれる
      ・1850年リヨンにてエクレア誕生
      ・19世紀末、パリ・ブレストが自転車レースを記念に作られた
      ・19世紀頭、ルージュによりミルフィーユ考案
      ・1846年、サントノレがパリの高級菓子店で販売
      ・1890年頃、タルトタタンがレストラン宿経営している姉妹のうち姉のうっかりミスを妹がリカバリーしてできる
     →ナポレオン時代で資本主義の思想が流入する⇒成功した小金持ち(ブルジョワ工場長など)は改革を望まなくなる⇒劣悪な環境で働く労働者プロレタリアートが問題になる(レ・ミゼラブル)⇒社会主義思想の台頭
     →初期のブルジョワは家族と家で過ごし、休日にお出かけして休憩時にお菓子を楽しむプチフールの習慣ができる(プチフール=余熱。子女のたしなみとして料理の余熱でお菓子を焼く)
     →ナポレオン排斥後、一時期ブルジョワによる貴族っぽいサロンを開くのが流行る。(女中を雇い、サロンを開くのが成功したブルジョワの証みたいな)
     →お菓子は家で作るものからプロが作るものに変化。
      ⇒パリの街が放射状の美しい街並みになり、お気に入りの菓子店を探すことや、おいしいお菓子やの情報交換をするのがブームになる。

    ■20世紀のフランス
    鉄道の普及や乗合馬車など移動手段が革新し、パリと地方をつなぐのが簡単になる。
     →地方で作られていた穀物をパリで人気のあるもの(甜菜、小麦)に変えて地方も豊かになり始める
     →地方のお菓子がパリでヒットする(クイニーアマン、マドレーヌ、ナンシーマカロンなど)
     →第一次世界大戦後150万の犠牲を出したが、生きる喜びで開放感が爆発し、大量消費起こる。
     →国力低下したところにヒトラー台頭。第二次世界大戦でパリ占拠される
      →戦時中は配給制となったり、菓子職人が戦争に徴兵されお菓子が少なくなる。
       →結婚式に見栄えが良くなるように、アイシングの代わりに石膏を使ったり、下の段を箱で底上げしてゴージャスに見える工夫を凝らすようになる⇒現在のゴージャスなウェディングケーキの土台

     →戦後は技術の進歩で庶民も美しいお菓子が食べられるようになる。
     →健康志向の増加で古典的な砂糖いっぱいのお菓子が流行らなくなる
     →1981年共産主義政権が発足しムースが誕生する。
      ⇒労働時間短縮政策で菓子職人は生ものを冷凍保存するようになる⇒冷凍に向かない果物を保存するために、ムースにして冷凍する術を編み出す(ムース、ババロア、スフレ、クレームカラメルなどふわふわつるつる感あるものが人気になる)
     ⇒ペーシェ・メルバ…ローエングリンのオペラで、白鳥が登場するシーンをかたどった桃のお菓子考案(桃とアイスのお菓子だと思っていたけど、正式は、バニラの上に桃を置き、氷を刻んだ翼をサイドに置いて、糸状の砂糖が覆ったお菓子らしい)

    ■現代の課題(著者の感想)
    技術が進歩したことで、製品が標準化され、どのレシピも似たようなものになりがち
     ⇒インスタ映え、見た目重視で味が二の次に
     ⇒フランス料理が全世界で食べられるようになり、アメリカスタイルもずいぶん増えたが、フランス文化として、フランス独自のものを大事にしてほしい

  • 非常に面白かった。ジュニア新書らしく、私のような西洋史に疎い大人にもオススメできる内容。お菓子のビジュアルを想像しながら歴史を学べるのが楽しい。
    ケルトの時代から遡って、宗教儀礼的な役割をお菓子が担っていたというのは面白い。
    目から鱗だったのが、カトリック国の方が美食であるということ。たしかに!
    イギリスなど他のヨーロッパの大国にも言えることだが、一見無関係なように見えるその国の食生活が、戦争や侵略の歴史と切っても切り離せない関係にあり、それを自国のアイデンティティとして我が物顔に誇示しているように見えるのは皮肉だ。

  • 読了 2022/02/06
    総じて読み応えのある面白い本
    史実とともに発達したフランス菓子の種類や名称がよくわかったし、フランス史の復習になった
    語彙表現も豊かでその意味でも何度も読みたい(買いたい)

  • お菓子の立ち位置が凄い!

    ただ甘い物ではありません。
    スパイスの入ったお菓子が苦手でした。なんで?入れたんだよーと思ってました。
    成る程ね。

  • ジュニア新書だが、高校生でも楽しめる内容で大変面白かった。フランス史は今まで興味を持っていなかったが、この機に自分の興味ある分野の他にもフランス史の本を読み込んでみようと思った。



  • 東大大学院教授池上俊一著 岩波ジュニア新書
    生きるためには不可欠ではないのに生活に
    甘美なうるおいを与え幸せを与える不思議な食べ物。おフランスで発展し国家戦略としてどのように利用したかがよくわかります。ゴーフル、ドラジェ、ビュッシュドノエル、マカロン、クグロフ、シャルロット、マドレーヌ、サヴァン、ブランマンジェ、ルリジュース、タルト・タタン、ミルフィーユなどほとんど食べたことないですがどれも優美な響きでおじさんも憧れます(笑)







  • フランス史をザクッと振り返りながらお菓子の歴史も振り返るという本。フランス料理・菓子が現代に至るまで賞賛されたのはイメージ戦略によるものだというのは納得してしまった。中高生の時に読みたかった。

  • お菓子というよりもどちらかというと歴史が中心。ある程度の歴史を知らないとお菓子だけを期待するとちょっと難しいのかも。

  • 昔から世界中の人々を魅了してきたお菓子。教会や修道院で生まれ、やがて王や貴婦人たちへ…魅力的なお菓子を通してフランスの文化・歴史・社会が網羅的に学べる美味しい1冊。

  •  フランスと言えば、グルメ。その中でも甘ちゃん好きが思い浮かべるのはお菓子。ということで今回は、お菓子から見たフランス史の本を取り上げる。
     
     本を読んでいてフムフムと思う点があった。それはイタリアから洗練された料理やマナーを教わらなかったら、今の「料理はフランスが一番」とはならなかったということだ。著者曰く、特にものすごくおいしいと言うわけでもなく、フランス人の食に対する知識や感性が鋭いと言うのは「まったくの嘘」という結果のアンケートがあったと言及している。
     
     では、どうして「幻想」なのに、謝罪会見をしたり、裁判に訴えられることがないのか。それは、絶対王政以降、フランス各地の食材や料理の良い所を取り入れ、中央集権体制の元で、「フランス料理」のイメージが作られて、高級料理としての地位を確立して広く世界に普及したからと著者は指摘している。やはり、イメージ戦略はいつの時代も重要だな。

     日本でも、鉄道の発展に伴って地方の名産品が全国に広まって、今では全国的に有名になったお菓子や駅弁は数知れず。フランスでも、鉄道のおかげで、地方でしか手に入らなかった食材や、知られていなかった地方のスイーツが有名になったとある。

     お菓子が存在する理由について著者は以下のように述べている。

     しかし、甘味料、つまり砂糖は、香辛料とおなじように、生きるために必要というわけではありません。それはむしろよりよく生きるために必要なものなのです。

     確かに生活必需品かと言えばそうではない。しかし、甘ちゃんには必要な「人生の栄養源」の1つだ

  • お菓子でたどる、という惹句に期待を膨らませすぎて失敗。
    高校で日本史選択したのもあってか、とにかく世界史(フランス史)のちょっと細かいとこに言及されるともう知識が追いつかない&必ずしも常に歴史上お菓子が絡んでくるわけではない、ので、失礼ながら飛ばし読みしまくりでした……
    あ、でも、「フランス=美食」は、実態よりブリヤ=サヴァラン『美味礼讃』等の著作が世界に出回ったこと、つまりイメージ戦略によるもの、というのは勉強になりました。
    でも別にお菓子だけじゃないな……

  • 背ラベル:383.835-イ

  • LGBT(お菓子)が主流の異成婚(水とか食料)より軽視されて当然だと思う。お菓子は文化発展に貢献してるんだからいいんだよ。何故主流と同じ扱いになりたいと思うのかって疑問もある。

    「しかし甘味料つまり砂糖は、香辛料とおなじように、生きるために必要というわけではありません。それはむしろより良く生きるために必要なものなのです。だから、甘いもの、そしてお菓子は、さしあたり、政治的・経済的な支配ではなく、文化的な支配の力関係のなかに取り込まれることになりました。文化的な価値であるがゆえに、人々は甘いものに夢中になるのです。そのことをまず押さえておきましょう。」

    —『お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書)』池上 俊一著

    「それから、ケーキ(フランス語でガトー)にせよ、チョコレート(ショコラ)にせよ、アイスクリーム(グラス)にせよ、甘いものは、肉やご飯のように主菜・主食として食べられるわけではなく、食間のおやつとか食後のデザートといった、食事体系のすみっこに追いやられています。おやつもデザートも、なくてもよいようなものですが、ないと寂しいとか、物足りないとか、楽しさが欠けるとか、そんな思いになるでしょう。まさに画竜点睛を欠くのです。またお母さんとの、あるいは恋人・友人や家族との、特別な「思い出」につながっているお菓子も、少なくないでしょう。  すみっこにある余分なものだからこそ、お菓子には、生活に甘美なうるおいを与え、幸せな感興をわきおこす不思議な力があるのですし、また、そうした力を発揮させるような多様な工夫が、たえず加えられつづけてきたのです。あたかも、労働と対立する余分なものである遊びが、単調な生活に張りを与え、生きる喜びをもたらしてくれるようにです。」

    —『お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書)』池上 俊一著

    「そしてこの「余分なもの」を、いかに丹精込めてつくりあげ大切にするかが、文化の質を測るひとつの基準となるのではないでしょうか。しかも驚くべきことに、歴史を遡ってみると、洗練されたお菓子たちは、いつでも文明の伝播ルートを忠実に伝って、文明度の高いところから低いところへ、東から西へ、西から東へと、各地に甘い夢を運んできたのです。」

    —『お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書)』池上 俊一著


    「さらに、お菓子は「装飾」がとことん可能で、それが許されています。お菓子ほど建築や芸術に近い食べ物はありません。いくら芸術的でも、それは一種の「まがいもの」で、すぐに壊され、食べられてしまうものではありますが、他の食べ物ではあまり許されない、けばけばしい色彩やゴテゴテした飾り立てが可能なお菓子は、「洗練」や「繊細」といった感覚と親和的で、また「都会性」という価値が重要になってきます。田舎菓子も悪くはないのでしょうが、高貴さや贅沢、洗練という立場からは価値が下がります。この最後の点は、西洋菓子とりわけフランス菓子の真骨頂といえるかもしれません。」

    —『お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書)』池上 俊一著

    「カレームの後継者としては、ユルバン・デュボワ(一八一八 ~一九〇一年)がいます。ロスチャイルド家の料理人として出発した彼は、カレームの仕事場を継いだアンスの弟子となり、ロシア貴族オルロフ公やプロイセン王宮廷の料理長にまでなりました。カレームの影響を濃厚に受け、料理は科学であり芸術だとした彼は、建築よりも彫刻に夢中になり、非常に洗練され凝った装飾を台座や縁飾りに積み上げ、複雑微妙で細緻な、城や古代遺跡などを設計しています。」

    —『お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書)』池上 俊一著

    「フラヌールたちの目的地には、お菓子屋とならんで、カフェもありました。革命前にはパレ・ロワイヤル周辺に文学カフェや政治集団のたまり場カフェが多数あったようです。パレ・ロワイヤルは、もともとルイ一三世の宰相リシュリューの城館でしたが、その死後、王に遺贈され、国王ルイ一四世が移り住んだため、パレ・ロワイヤル(王宮)と呼ばれるようになりました。その後は、王自身でなく王族が住むようになり、のちにリシュリュー時代の建物は取り壊されて、庭園で囲んで建物が建てられ、店舗として貸し出されたのです。そこにはカフェ、レストラン、ダンスホールなどが入り、たちまち一大繁華街になり、パレ・ロワイヤルといえばこの区域一帯を指すようになります。」

    —『お菓子でたどるフランス史 (岩波ジュニア新書)』池上 俊一著

  • ミニコメント
    フランスの歴史を その当時のお菓子と共に紹介していく本。
    ゴーフル、マカロン、マドレーヌ、タルト・タタン、ミルフィーユなどなど、大好きな洋菓子を生み出したフランスに感謝

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1250185"

  •  フランスの中世から現代までのお菓子の歴史とともに紐解く歴史書。
     お菓子が君主の威厳を表すためや、外交上に使用されていたというのは初めて知った。

  • 「岩波ジュニア新書」の池上俊一さんの一連のヨーロッパ各国史の著作、スペイン史に続いてフランス史を読了。「情熱」という抽象的なコンセプトを軸にしようとしたスペイン史に対して「お菓子」という実体のあるものをテーマにしたこちらの方が構成としては成功している感じがします。
    ともあれ、フランス史の概略を掴むのによい本でした。
    なぜヨーロッパ史を概観しているかというと、ヨーロッパ史を知らないとアメリカ史の背景がよく分からないということがよく分かってきた(笑)から、なんですよね…
    歴史は面白い。

  • フランス旅行に行った際に図書館で読んだため

    • myknakaさん
      旅行で何か役に立つことありましたか?出会たお菓子とか。
      旅行で何か役に立つことありましたか?出会たお菓子とか。
      2020/05/31
  • お菓子のはなしをベースにした簡潔なフランス通史。お菓子の話題以外は重要なところだけポイント絞って概説してくれてわかりやすい。個人的に白眉はカトリーヌどメディシスがくるまえのフランスでは肉を手掴みだったりとか、イタリアの文化が入って洗練されあのだなということ。あと、受け入れるフランス。砂糖大好きフランス。ゾラの胃袋のはなし読んでみたいと思った。パサージュ。

  • お菓子、それはフランスの歴史を彩る武器。

    お菓子の歴史ではなく、フランスの歴史とお菓子。なぜフランス料理であったり、フランスのお菓子だったりが、一流の物として世界にフランスのイメージを作ったのか。フランスがフランスたる拠り所とは。

    イタリアからやってきた洗練された食文化。それを取り込み、発展する宮廷文化。フランス革命によって、市民のものになる食文化。砂糖を使えることの意味。庭園や建築と共通する飾りへの興味と追求。鉄道建設と地方の名品がパリに集まること。そして、戦争と植民地、技術革新と新しいお菓子。

    フランスは、このグローバル社会の中で、フランスであることをどこまで守るのだろう。また、どこまで「フランス」を広げるのだろう。今まで通りにはできない、きっとフランスには難しい時代。憧れの「フランス」はもうイメージの中にしか存在しなくなるかもしれない。フランスのこれからを見守りたい。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2022年 『歴史学の作法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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