はじめての文学講義――読む・書く・味わう (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 79
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008100

作品紹介・あらすじ

読むことを楽しむにはどんな方法がある?魅力的な文章を書くにはどうしたらいい?その両面から文学の面白さ、深さを構造的に探っていく。太宰治をはじめ多種多様な文学作品をテキストにしながら、読むコツ、書くコツ、味わうコツを具体的に指南する。「文学大好き!」な現役の中学・高校生を対象にした「文学講義」をまとめた一冊。

感想・レビュー・書評

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  • まず、ダブルビジョン、二項式という技法について語られます。太宰治の富士山と月見草を例にとり、まるで繋がらないような二者をつなぐことで、文学性が生まれる、というようなことでした。そして、細部にこだわりなさい、ということ。また、小説の縦糸と横糸の解説。横糸つまりストーリーだけを追いかけるだけでは小説は面白くない。文章を読んでいてそのセンテンスで立ち上がるものがあり、その縦糸の部分を楽しんだりする。書くときにもそこは考えるところ、だと。読書の時には、深く読むほどに中断が起こる、と。本が閉じられている間にも、その内容が頭に渦巻いていて、それがまだ読書でもある、ということでした。これは経験がありますよね。最後に、文学的リアリティについてですが、必然性と一回性という捉え方で見事にそれを教えてくれます。必然性とは、それをするにはこうなる、こう動くと、つまりは当たり前の行為や流れのことをいいます。一回性は、そのときにしかない独特だったり特徴的だったりする行為です。たとえば、散歩をしている途中で、家庭菜園の手入れをする人たちをみかけて挨拶をしたり、電線に止まるカラスをみたり、往来する車をよけたり、というのは必然性ですが、そのカラスが威嚇する鳴き声を出し、そのカラスに挑戦するように石を投げる小学生がいて、カラスが小学生を襲いだすところを救おうと一歩踏み出すと、ちょうどパトカーが止まってお巡りさんが警棒でカラスを追い払うところにでくわす、などは一回性なんだと思います、ちょっと下手くそな例ですけどね。もっと独特で個人的でいいでしょう、一回性については。そして、それによって小説に深みが出るようです。本書は高校生への講義録です。読みやすいうえに文章に滋味があり、よみごたえと楽しさを感じる読書になるでしょう。150ページあまりですが、推薦している本が多数あり、本書から繋げてそれらに食指を伸ばすのもいいかもしれないです。『ハックルベリー・フィンの冒険』がものすごく面白いらしいのと、ロダーリの『ファンタジーの技法』はためになるらしいのとはメモしておきました。

  •  英米文学者(大東文化大教授)で小説家でもある著者が、中高一貫校の生徒たちを相手に行った「文学講義」をまとめた本。文学の味わい方から小説の書き方まで、文学をめぐる楽しみの勘所を駆け足で講義するものだ。

     ジュニア新書とはいえ、内容はなかなか高度で、大人の文学好きの鑑賞にも十分堪える。
     むしろ、「こんな話がいまどきの中学生・高校生に理解できたのだろうか?」と心配になるくらい。大学の教養課程の講義であってもおかしくない。著者は聴衆を子ども扱いしていないのだ。
     まあ、難関校(渋谷教育学園渋谷中学・高校)の優秀な生徒たちが相手だから、これでいいのか。

     印象に残った一節を引く。

    《心に残る比喩に出会う目的で、小説を読んでいくことだってありえます。興味をひかれる比喩に出会ったらノートに書き写す。一冊が埋まったら、その「引用集」はみなさんにとって、世界でたった一冊しかない珠玉の名文選集になるかもしれません。》

    《小説を書いていると、必ず何回かは“弱気”になるんです。登場人物に言わせた台詞が、ちゃんと意味が伝わっているかなと不安を覚えて、説明的な一文を加えたり、場合によっては、作品のテーマらしきことを記してしまうことがあります。(中略)ところが、なぜか批評ではそういう弱気になった箇所こそが引用されます。抽象度の上がった、まとめのような表現はよく引用されます。(中略)
     ですから、読んでいて作品が自らを説明しているような、わかりやすいと感じられる表現は要注意です。弱気になっているところかもしれないですから。それよりは、言葉が混沌と渦巻いて、いっきょに意味が浮上しない、なにやら濃密な空気が漂うところが、小説のもっとも味わい深いところなのです。》

  •  ほううう!と唸った文章は引用に。

  • 小説を読むこと、書くことにまつわる楽しさを解体した一冊。「ファンタジーの二項式」の話が本当に興味深かった。自分も同じように考えていたこと、自分でも知らなかったことのその両方の書かれているバランスがちょうど良かった。小説を読むときにあらすじばかりを追うだけでは得られない真の読書の楽しみ方というのが明らかにされていて面白かった。

  • 文学の魅力が分かる1冊。
    本書で紹介されている本も、すぐに読みたくなるものばかりでした。

  • 中高生に向けた文学講義の本です.
    読書を味わうのが苦手なのと,小説創作のヒントが転がってないかしらと手に取ってみました.
    創作のヒント的なものはいくつか散見できたのでワークアウトがてら習作でもしようかなと思いましたが,読書の楽しみ的な観点からは特に目新しい発見はありませんでした.
    まぁ本なんて好きなように読むに限るって事なんだろうなとは思うのだけれど.
    でも懲りずに次は本書でも紹介されてて買ったまま放置されてる『ナボコフの文学講義』を読みますけどね.
    あ,中高生にはいい内容だと思います.
    最近読書(というか言葉)に対して猜疑的にもなってるけれど,やっぱり本を読むのはいいことだと思うので,少しでも間口が広がるなら読んでおいて損はないかと.

  • はじめて読書を文学として考える中高生に向かって語られています。

    いろいろ示唆に富んだ体験談や作品解説を読むことができます。たとえば名作とは、夢中で読み耽るものというより、何度も中断を生じさせるものとのこと。

    こころの琴線に触れる場面や台詞に遭遇すると、たしかに読むのを止め、どこかボーっとしてしまうことがあります。
    単なる自己陶酔かもしれませんが・・・。

  • 著者の文学愛が伝わってくる本。それにしてもこんな話を黙って聞ける中高生がすごい。さすが日本有数の進学校である。

  • この本に書かれているテクニックは「そう言えば…」と思えるものがいくつもある。中高生に向けた文学講義だけれど、私が次に読む小説はまた、前回とは、ひとあじ違ったものになるのは間違いなさそう…。やっぱり、これからも、キホン岩波ジュニア新書!先入観なく素直によめた。

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著者プロフィール

1946年東京都生まれ。作家。大東文化大学文学部で比較文学、英米文学、文章制作法などの講座を担当。主な著作に『月の川を渡る』(芥川賞候補作「ドッグウォーカー」収録、作品社)、『風の消息、それぞれの』(芥川賞候補作「森への招待」収録、作品社)、『チェーホフの夜』(『文學界』新人賞受賞作「冗談関係のメモリアル」収録、水声社)、『転落譚』(水声社)、『〈虚言〉の領域--反人生処方としての文学』(ミネルヴァ書房)、『書き出しは誘惑する』(岩波書店)、『生の深みを覗く』〈編著〉(岩波書店)、『この愛のゆくえ』〈編著〉(岩波書店)

「2015年 『風の湧くところ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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