- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005008124
作品紹介・あらすじ
日本列島人4万年の雄大な歴史を、現代から旧石器時代へとさかのぼりながら、たどります。人々の移動を引き起こす政治的中心地の変遷と、古今の列島人や近隣地域の人々のゲノム解析を軸に、人口や身長、人骨や土器など、様々なデータを参照し、列島に住んできた人々の暮らしぶりや地域差を明らかにし、列島人の起源へと迫ります。
感想・レビュー・書評
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新 書 IJS||469.91||Sai
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近隣結合法を開発した統計遺伝学者で、人類学にも深い関心を持つ斎藤成也氏が著した日本史の本。一貫して統計遺伝学に基づいて日本史が議論されている...のかと思いきやそういうわけでもなく、既存の説明のサポートに氏の研究が使用されている感じで、若干の物足りなさがある。
それでも、3段階渡来説やアイヌ人とヤマト人の遺伝的交流、ヤマト人内部の遺伝的多様性など興味深い研究結果が次々と明かされる。著者が提案した新しい時代区分である「ヤポネシア時代・ハカタ時代・ヤマト時代・平安京時代・江戸東京時代」という概念は非常に野心的である。
天皇の在任期間について幾つかの仮定を置くと、ハカタ時代とヤマト時代の境目に神武東征にあたる出来事があったと推論できるという記述には、大いに想像力をかきたてられた。 -
独自の地域分け、時代分けで、現代から逆順でつづる。所々に出てくる自説がどうも信用できない。継体天皇より前の在位期間を他の天皇同様に短く取れば、神武天皇の東遷が2世紀にハカタからヤマトへ政治の中心が移ったのに符合するなど、まゆつばと思って読めばいいのだが、対象が中高生の本だけに危ない。その後の重要なパートが信用できなくなってしまった。日本語が4000年前に入ってきたという説は、方言の違いの大きさを考えると新しすぎるし、日本語をもたらした集団や韓国語との関係など日本の外の言語の様子の説明がない。
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著者の斎藤成也は、国立遺伝学研究所教授、東京大学大学院教授などを務める遺伝学者。
本書は、日本列島に居住する人々の約四万年の歴史を解説したものであるが、通常の歴史の本と異なって現在から過去に遡る形をとったこと、政治の中心の移動に注目して、時代を、江戸東京時代、平安京時代、ヤマト時代、ハカタ時代、ヤポネシア時代に区切ったことなどの、いくつかの工夫がみられる。
更に、最大の特徴は、遺伝学者の著者が本書を著した目的ともいえる、過去50年の間にDNAやタンパク質などの分子を用いて生物進化を研究する「分子進化学」(人間の進化については「分子人類学」という)が大きく進歩し、特に、2004年にヒトゲノムのDNA塩基配列が解明されて以降、人間のゲノムDNAを遥かに高い解像度で分析することが可能となった研究成果を踏まえて、その歴史を推論している点である。
中でも注目されるのは、日本列島人の形成について「三段階渡来モデル」を提唱していることである。現在定説といわれるものは、1980年代に定式化した「二重構造説」で、日本列島人の祖先を、旧石器時代の第一波の移住により住み着いた縄文人と、弥生時代の第二波の移住により住み着いた、縄文人とは顔などの形態が異なる渡来人の二つに分け、日本列島中央部(北海道・南西諸島以外)では双方の混血が進んだものの、北海道の縄文人は渡来人とはほとんど混血せずにアイヌ人となり、南西諸島の縄文人は相応に混血したとはいえ縄文人の特徴を強く残したオキナワ人となったとする説である。そして、「三段階渡来モデル」は、「二重構造説」の第二波を更に二段階に分け、その結果、日本列島中央部においても、第三波の渡来民との混血が進んだ人々(九州北部から関東南部に居住する人々)と、第二波の渡来民のDNAをより濃く残す人々(周辺部の人々)に大きく分類されるとするものである。
また、本論からは外れるが、2010年以降にネアンデルタール人の古代ゲノム配列が解読されたことにより、アフリカ人以外の現代人には数%のネアンデルタール人ゲノムとの共通性があることが推定され、現代人の祖先がアフリカを出てからネアンデルタール人と混血をした可能性があること、更に、日本列島人には北京原人やジャワ原人のゲノムが伝わっている可能性すらあることも指摘している。
(ジュニア向けの新書であったせいか)「通史」であることに重きを置いたために、著者の専門外の記述がやや多かったように思われるが、ゲノム技術の進化により日本(列島)人の歴史の解明が大きく進んでいることが実感できる一冊。。
(2016年11月了) -
どういうアプローチかと思ったら,DNA解析だった…まだ進化途中だね~(難しいから書きたくないんだけど)ヤポネシア時代→ハカタ時代→ヤマト時代→平安京時代→江戸東京時代とするのが良いのじゃないか。ヤマト人より,アイヌ人と琉球人は近い。1:4万年~4千年前(ヤポネシアの大半)ユーラシアの多地域から南部・中央部・北部の全体にやってきた。2:4千年~3前年前(ヤポネシア末期)中央部に朝鮮半島・遼東半島・山東半島に囲まれた沿岸部から渡来し,1の子孫と混血し人口を増やす。3前:3千年~千5百年(ハカタ・ヤマト前半)朝鮮半島から日本列島東西軸に沿って水田稲作の技術を導入し,人口を増やし,ヤマト時代には中国からも流入。3後:千5百~現在(ヤマト時代後半以降)朝鮮半島を中心に渡来し,1の渡来人は6世紀後半から北海道に,空白を埋めるように2が東北に,南部には2の渡来人が移住し,江戸東京時代に3の渡来民も加わり現在のオキナワ人が形成され,ヤマト後半から平安京時代にオホーツク人と1の子孫の間でアイヌ人が形成される~いやいや,難しい。新しい学問だね
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どうせ縄文人と弥生人の違いの話だろうと思っていたらビックリ仰天。まず時代区分からして新しい。「ヤマト時代」の前は、「ハカタ時代」に「ヤポネシア時代」? 本書は現代から遡って日本列島人の歴史に迫っていくのだが、たかだか50年も前になると、もう個人の経験は役に立たない。著者は、土器の発掘よりDNA分析の専門家。そこで明らかにされるルーツの話がめっぽう面白い。松本清張の『砂の器』で、ズーズー弁は東北だけかと思ったら出雲もだったという話があったが、ここでも出雲と東北の人々の間の遺伝的な共通性が明らかにされている。
こんなに隣同士なのに、実は結構離れた地域の人と親しい関係だったりして面白い。これまでは大昔に大陸から渡ってきた人たちが定住して、日本列島人になったのだと思っていたが、本当は鎖国の頃まで断続的に、とぎれることなく大陸の人々と遺伝的交流があったようで、複雑で多層的なルーツだとわかった。ただ、ともすれば掴みにくくもなったわけで、惜しむらくは著者に「では(世界の中で)日本列島人とは何者なのか?」を最後にまとめてほしかった。