短歌は最強アイテム――高校生活の悩みに効きます (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008636

作品紹介・あらすじ

「ちばさと」の愛称で親しまれる国語科の熱血教師で、歌人でもある著者が、短歌を通じて学校生活の様子や揺れ動く生徒たちの心模様を描く青春短歌エッセイ。友情、恋、部活といった現在進行形の高校生のリアルに寄り添いながら、「小さな黒板」の歌に「いろいろあるけど大丈夫!前を向いていこうぜ!」の思いを込めてエールを送る。

感想・レビュー・書評

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  • 進学校に異動となった「ちばさと」こと国語科の教師であり歌人千葉聡のエッセイと短歌集です。

    軽音のライブ後に仲間の歌人からかけられた「こんなにいい学校があるなんて信じられませんでした。」という言葉と同じ印象。フィクションな箇所や著者の思い出フィルターもあると思いますが、まるでドラマか映画の舞台のような青春盛りだくさんな横浜市立桜丘学校が主な舞台です。

    「流行しているポップソングの歌詞のように短歌が若い心のささえにならないだろうか」と考え、歌人としての得意分野の短歌を通じて一人ひとりの心に向き合おうとしてくれる「ちばさと」に高校生という多感な時期に出会えた生徒さんは幸せだなあと思いました。
    そして、自分と同年代もしくは少し年下の世代が全国あちこちの高校で「先生!」と呼ばれ、教鞭を振るっていることを想像すると自分ももっと頑張らないと、と襟を正す気持ちにさせてくれました。

    様々な歌人の短歌やちばさとの短歌が本の中で紹介されていましたが、詠まれた情景がすぐに浮かばないものが多々あり、自分の感受性の乏しさを痛感させられました。人生経験豊かにしてより多くの短歌に共感、感動できるようになりたいものです。

    そんな自分でも共感できた短歌を数首ご紹介して終わりとします。

    「まだ」と「もう」 点滅している信号に走れ私の中の青春 (松村正直 駅へ)
    フォルテとは遠く離れてゆく友に「またね」と叫ぶくらいの強さ (千葉聡 そこにある光と傷と忘れもの)
    プリントを後ろに回す時にだけ吾に伸べられる指先白し (寺井龍哉)
    親は子を育ててきたと言うけれど勝手に赤い畑のトマト (俵万智 サラダ記念日)
    長き長き手紙を書かむと思ひしにありがたうと書けば言ひ尽くしたり (稲葉京子 紅梅坂)
    今僕の芯から突き出す砲丸よ 校舎の向こうの夕空へゆけ (平岡大輝)

  • 「国語科のドアに「校内どこかにはいます」と貼って空を見に行く
     千葉 聡

     横浜市立桜丘高校の国語科「熱血」教員「ちばさと先生」は、歌人である。

     6冊目の著書「短歌は最強アイテム」の副題は、「高校生活の悩みに効きます」。生徒の「悩み」に寄り添う短歌エッセーかと読み始めると、意外にも、ちばさと先生自身も悩み、生徒から折々励ましをもらい、ともに一歩階段を上がってゆくような内容であり、心が洗われた。

     授業はじめ、放課後や土日も部活動の顧問にあてる多忙な教員生活が変わったのは、40代半ばのころ。母親の介護のため、退勤時間を早めて帰る生活になったのだ。慣れない事態に、イライラも募ってしまう。

     そんななか、生徒の親子関係の良さを思い起こし、「親子」とは永遠の課題であることを再確認する。そして、自分を「うさぎ」、母を「うさぎちゃんのお母さん」にたとえ、ごっこ遊びのような介護に変化させ、やさしさと笑顔を取り戻すのだった。

     親子の関係を結び直すという発想の転換は、文学作品がヒントを与えていたことも記されている。親も年をとり、自分も年齢を重ねてゆく事実を前向きにとらえるには、掲出歌のように、「空を見に行く」心の余裕が必要なのだろう。

     海賊より空賊がいい 寝転んでこの空を青く青く蹴る男子

     担任教員であっても、クラスという「船」では生徒と同じ「乗組員」。その全員が「旅の途中」にあると定義づけ、青い空をともに見上げる姿も、すがすがしい。
    (2017年12月17日掲載)

  • こんな先生になりたい。そして中学や高校の時に出会いたかった。たくさん大好きな先生に出会ってきたけれど、こんなに人を大切にする先生には出会って来なかったと思う。

  • 短歌そのもののはそこそこ良かったが、すごく良かったわけではない。しかし、なにげないところで、ほろりとしてしまう。

    千葉先生のまなざし、生徒とのやりとりが素敵。

    実は手に取ったのは、母校が舞台だったから!!

  • 歌人にして高校教諭の「ちばさと」先生が、日々の学校生活や生徒との関わりを真摯につづり、そこにぴったりの現代短歌を紹介している。この短歌がしみじみと心にしみる。さまさに「短歌は最強アイテム」だ。短歌交じりエッセイの傑作である。

  •  先生も悩み、くよくよし、もがいていたりする。生徒と同じなんだ。当然の事だけど、素直にそう感じとれました。「高校生活の悩みに効きます」という本です。ヒントがみつかると重います。
    (カウンター担当/bee)夏休みに読みたいおすすめの本

  • 短歌案内書兼みずみずしい青春エッセイ。
    チバサトも登場する子供達も、同僚の教師も作者のお母さんも、みんなリアルな生活感が伝わってきます。
    短歌好きにはもちろんですが、興味のない方にも読み物として面白いよと勧めたいです。
    本自体から学生達の喜怒哀楽の声が聞こえてくるような、生きている本でした。

  • 横浜市の高校の教員歌人が作者。
    異動した1年目の生徒との関わりの難しさを実直に書いている。教育実習でうまくいかなかったことを思い出しながら読んだ。作者が生徒と正面から向き合っている事を尊敬します。
    日々あった良いことも悪いことも、歌にして残している。その瞬間瞬間がキラキラと輝いて伝わってくる。ちばさと先生の授業が受けたい。

  • 横浜市で高校の国語教師をしているチバサト。学校が代わり、ちょっともがきながらも短歌を通して子どもたちと熱く繋がります。短歌エッセイであると同時に、熱血(?)先生奮闘記みたいな?

  • 学校にある黒板には毎日オススメ短歌が書かれ、そこから教師と生徒の交流が始まる。順風満帆ではない学校生活は壁をどう乗り越えて行けば分からないままではあるが、一つのアイテムとして「短歌」が提示される。生きるための文学とは交流するためのツールなのだろう。愛しい学校の時間にシャッターを切るように短歌を詠む。千葉聡先生の学生向け短歌指南書。もちろん大人にもテキメン効果のある短歌案内でもあります。

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著者プロフィール

*同姓同名著者あり。

1.千葉聡(ちば さとし)
東北大学東北アジア研究センター教授、東北大学大学院生命科学研究科教授(兼任)。1960年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。静岡大学助手、東北大学准教授などを経て現職。専門は進化生物学と生態学。大学院修士課程でカタマイマイに出会い、小笠原諸島を出発点に、北はシベリア、南はニュージーランドまで、世界中のカタツムリを相手に研究を進める。『歌うカタツムリ』で第71回毎日出版文化賞を受賞。

2. 千葉聡(ちば さとし)
1968年9月、神奈川県生まれ。東京学芸大学卒業。國學院大學大学院修了。第41回短歌研究新人賞受賞。歌集に『微熱体』『そこにある光と傷と忘れもの』『飛び跳ねる教室』『今日の放課後、短歌部へ!』。現在、横浜市立桜丘高校に勤務。三省堂高校教科書『明解国語総合』『明解現代文B』の編集委員。短歌誌「かばん」会員。Twitter: @CHIBASATO

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