短歌は最強アイテム――高校生活の悩みに効きます (岩波ジュニア新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008636

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  • 「国語科のドアに「校内どこかにはいます」と貼って空を見に行く
     千葉 聡

     横浜市立桜丘高校の国語科「熱血」教員「ちばさと先生」は、歌人である。

     6冊目の著書「短歌は最強アイテム」の副題は、「高校生活の悩みに効きます」。生徒の「悩み」に寄り添う短歌エッセーかと読み始めると、意外にも、ちばさと先生自身も悩み、生徒から折々励ましをもらい、ともに一歩階段を上がってゆくような内容であり、心が洗われた。

     授業はじめ、放課後や土日も部活動の顧問にあてる多忙な教員生活が変わったのは、40代半ばのころ。母親の介護のため、退勤時間を早めて帰る生活になったのだ。慣れない事態に、イライラも募ってしまう。

     そんななか、生徒の親子関係の良さを思い起こし、「親子」とは永遠の課題であることを再確認する。そして、自分を「うさぎ」、母を「うさぎちゃんのお母さん」にたとえ、ごっこ遊びのような介護に変化させ、やさしさと笑顔を取り戻すのだった。

     親子の関係を結び直すという発想の転換は、文学作品がヒントを与えていたことも記されている。親も年をとり、自分も年齢を重ねてゆく事実を前向きにとらえるには、掲出歌のように、「空を見に行く」心の余裕が必要なのだろう。

     海賊より空賊がいい 寝転んでこの空を青く青く蹴る男子

     担任教員であっても、クラスという「船」では生徒と同じ「乗組員」。その全員が「旅の途中」にあると定義づけ、青い空をともに見上げる姿も、すがすがしい。
    (2017年12月17日掲載)

  • こんな先生になりたい。そして中学や高校の時に出会いたかった。たくさん大好きな先生に出会ってきたけれど、こんなに人を大切にする先生には出会って来なかったと思う。

  • 歌人にして高校教諭の「ちばさと」先生が、日々の学校生活や生徒との関わりを真摯につづり、そこにぴったりの現代短歌を紹介している。この短歌がしみじみと心にしみる。さまさに「短歌は最強アイテム」だ。短歌交じりエッセイの傑作である。

  • 横浜市の高校の教員歌人が作者。
    異動した1年目の生徒との関わりの難しさを実直に書いている。教育実習でうまくいかなかったことを思い出しながら読んだ。作者が生徒と正面から向き合っている事を尊敬します。
    日々あった良いことも悪いことも、歌にして残している。その瞬間瞬間がキラキラと輝いて伝わってくる。ちばさと先生の授業が受けたい。

  • 学校にある黒板には毎日オススメ短歌が書かれ、そこから教師と生徒の交流が始まる。順風満帆ではない学校生活は壁をどう乗り越えて行けば分からないままではあるが、一つのアイテムとして「短歌」が提示される。生きるための文学とは交流するためのツールなのだろう。愛しい学校の時間にシャッターを切るように短歌を詠む。千葉聡先生の学生向け短歌指南書。もちろん大人にもテキメン効果のある短歌案内でもあります。

著者プロフィール

1968年、神奈川県生まれ。高校教諭。
1998年、第41回短歌研究新人賞受賞。歌集に『飛び跳ねる教室』『今日の放課後、短歌部へ!』『短歌は最強アイテム』『グラウンドを駆けるモーツァルト』、小説に『90秒の別世界』、共編著に『短歌タイムカプセル』、編著に『短歌研究ジュニア はじめて出会う短歌100』などがある。歌人集団「かばん」会員。國學院大學、日本女子大学の兼任講師。

「2021年 『微熱体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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