〈読む〉という冒険 イギリス児童文学の森へ (岩波ジュニア新書 947)
- 岩波書店 (2022年2月21日発売)
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感想 : 21件
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Amazon.co.jp ・本 (254ページ) / ISBN・EAN: 9784005009473
作品紹介・あらすじ
ロビンソン、アリス、プーさんにナルニア……おなじみの名作たちは、本当は何を語っている? 「作者の言いたかったこと」と同じくらい、「作者が言おうとしたわけではないこと」もおしゃべりかもしれない。本のページは冒険の扉、言葉や文は未知の森。あの物語を「いま」のあなたが読む意味とおもしろさ、体験してみませんか。
みんなの感想まとめ
物語の多様な読み方や楽しみ方を探求する本書は、イギリス児童文学の名作を通じて、作品の背景やテーマを深く掘り下げることの重要性を示しています。著者は、単に「作者の意図」を追うのではなく、作品が書かれた時...
感想・レビュー・書評
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イギリスの有名な児童文学を、当時の時代背景や価値観などに注目し、わかりやすく解説する。
取り上げられた作品は、『マザー・グース』『ロビンソン・クルーソー』『クリスマス・キャロル』『不思議の国のアリス』『くまのプーさん』『ライオンと魔女(ナルニア国物語)』『第九軍団のワシ』の7作品。私は『第九軍団のワシ』以外は既読だったが、自分では思いもしなかった読み方が提示されていて、目から鱗がいっぱい落ちた。
特に面白かったのは『ロビンソン・クルーソー』。
難破で無人島に漂着した主人公が、サバイバル生活の後帰国するまでを描いた有名な冒険小説である。自給自足の創意工夫にワクワクしながら読んだ記憶があるが、本書で注目するのは、当時のイギリスが進めていた植民地政策や奴隷貿易の実態と、物語の記述との相違である。
物語はフィクションではあるが、現実にあったことを語り手が手記として残したかのような体裁になっている。自給自足の生活の写実的な表現がリアルなだけに、背景として描かれる社会情勢も正確なのだろう、と勘違いしてしまうが、当時積極的に進められていた奴隷貿易が、あたかもスペインやポルトガルの独占事業であり、イギリスでは積極的に行われていないかのように表現されているなど、負の情報を巧妙に遮断している形跡が見られるのだという。
サバイバル生活を純粋に楽しむ読み方しかしてこなかったが、背景となる当時の社会情勢を知ると、物語の別の側面にがぜん興味がわき、読み直したくなった。
それ以外の物語も、英語のリズムに注目した『マザー・グース』や、産業革命後の「時間」のとらえ方に注目した『不思議の国のアリス』、ほんわかした世界観の中に著者の苛烈な戦争体験が反映されていることを指摘した『くまのプーさん』など、どれも読みごたえ抜群だった。
語りかけるような文章でわかりやすく解説されており、もっと知りたい人のための参考文献もたくさん挙げてくれている。青少年だけでなく、大人にもおすすめの本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
非常に良かった!
今まで岩波ジュニア新書を10冊以上読んだが(ささっと目を通したのも含めて)、本書は、「砂糖の世界史」「カルトはすぐ隣に」と並んで、トップ3に入ると思う。
本書を楽しく読めたのは、私がもともと欧米の児童文学に興味があるから、ということもあるが、あまり児童文学に馴染みのない方でも、アリスやプーさんはわかるだろうし、ぜひ多くのかたに読んでもらいたい。
著者の語り口も素敵だった。
間口は広く、緩急をつけて、ぐいぐいと話に引き込み、最後まで真摯に児童文学を案内、いや、ともに楽しもうとしてくれる。
読みどころを案内する口調に、既に知っている作品であってもなんだかワクワクさせられる。
著者の語り口ですっかりファンになり、少しお名前で検索したところ、大学のシラバス?が出てきたのだけど、そこも素敵な一文で締められていた。
機会があればこの方の講義を見てみたいなあ。
以下、自分用に本書の章ごとの課題図書?とオリジナルの刊行年などをメモ。
1、マザーグース 伝承 17世紀ごろから
2、ロビンソン・クルーソー 1719
(ちなみにスイフトのガリバー旅行記が1726。そこから島の冒険ものがブームになる。ベルヌ「二年間の休暇」の刊行が1888。意外と間が長い!)
3、クリスマス・キャロル 1843
4、不思議の国のアリス 1865 ←江戸時代。(この章はジュニア新書「砂糖の世界史」を読んでると解像度が凄いです。)
5、クマのプーさん 1926
6、ライオンと魔女 1950
7、第九軍団のワシ 1954 意外と古い。(この本だけ私の未読の作品。私は観念的な児童文学が得意ではなく、そのイメージから読まず嫌いしているのがサトクリフ。というか、自分がケルトやら中世騎士道に拘りがあるため、うまく読めない気がしている。解釈違いの二次創作同担拒否、みたいになりそうという素朴な思い込み。でもこれを読んで、はじめてサトクリフに興味がわきました。)
著者が、何度も、自分と違う考えを頑として受け入れないことの危うさ、を説いてくれるのが嬉しい。まさに私に必要なやつじゃん。
中学生や高校生にこの本を読んでほしいし、もし私が十代にこの本に出会えていたら、、、物語の自由さと、現実の不自由さを、物語の力で埋めて生きている自分を見つめてしまってヤバかったかも知れない。
でも、この本が、自分の代わりに、本を読むことの面白さを語ってくれるので、若い方には助けになるはずだし、今の私もそういう点で救われる気がした。
読書は冒険、それを通じて他者の視点を体験するということ。
いずれ、もう少し突っ込んだ本を題材にとりあげてくれたら嬉しいなあ。イギリスに限らず、アメリカ、カナダも。
ウォーターシップダウン、時の旅人、とぶ船、ランサム・サーガ、あとはトウェイン、オルコット、モンゴメリとか、すごく盛り上がると思います(私が)! -
児童文学を殆ど読んでこなかったので指南を得たく手に取る。試験問題の解答に求められるような「作者は何を言いたいのか」ではなく、作品のテーマ、書かれた時代・社会背景、与えた影響などをから作品を位置付けていく。最後にタイトルの「冒険」の意味がわかりすとんと腑に落ちた気がした。これまでどちらかというと所謂”児童文学”が苦手だったのだが、この本のアプローチだと自分には読み易いなと思っていたら、「おわりに」で作者が書内に仕掛けたことの種明かしをされおっ、ともう一度立ち止まって最初からさっと眺め直した。第7章のコラムで英文学者でありながら英語によって得られるものと失うもの、母語で考察することの大切さに触れ、「おわりに」で言葉や文学の持つ力について念を押すように語っていることをきちんと受け止めたい。取り上げられた作品中特に『第九軍団のワシ』は読んでみたいと思っている。
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イギリス児童文学を題材に、物語のさまざまな読みかた、楽しみかたの実践例を解説した本。なんとなく買って読み始めたら面白くなってきてけっきょく最後まで読んだ。
第1章が「マザーグース」から、というのが良かった。
言葉の音や韻の楽しさや心地よさ。無意味さやばかばかしさが引き起こす笑い、などにスポットを当てる。
第2章からは「ロビンソン・クルーソー」、「クリスマス・キャロル」、「不思議の国のアリス」、「クマのプーさん」、「ライオンと魔女」、「第九軍団のワシ」の読みへとつづく。
本書の冒頭でも指摘されているが、とくに日本では、「作者はいったい何が言いたかったのでしょう?」とか、「この登場人物の気持ちは?」とか、今なおつづくまるで忖度の練習問題みたいな国語教育の呪いの魔法が、早い段階で子どもたちにかけられる。
また、教科書も、道徳教育っぽい物語や説明文の断片の寄せ集めにすぎない。ほんの数ページ読んで、「さあみんなで話し合ってみよう」とか言われてもねえ……
本書がリーディングのテキストだったらどれほどいいかと思いながら読んだ。このテキストを地図に、もっとまとまりのある物語を1冊まるごと時間をかけて読んだらどれほど楽しいか。同時に歴史も学べる。ついでに言えば「話し方」も。
例えば、物語「ロビンソン」と歴史上の奴隷貿易の関係とか、「アリス」の白うさぎとマッドティーパーティから考える時間論とか、プーさんがはまった穴と、第一次大戦中の塹壕との類似点とか。
個人的には、アリスのイモムシと「アヘン」、そして「オリエンタリズム」に関する指摘が、なるほどたしかに!だった。あのイモムシはアヘン中毒だったんだ。
とまあ面白い指摘が満載なのだけれど、本書の主旨を強いてひとことでまとめるなら、物語は作者だけのものではない、ということ。
作者が言うつもりもなかった、あるいは無意識で書いてしまったことまで読み解くこともできるのだという可能性を鮮やかに示してみせた良書だ。
勝手に小学校教科書に推薦。 -
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イギリス文学の深層に迫る一冊
くまのプーさんをはじめとするイギリス文学の名作について、作者が込めた意図だけでなく、意図せず生まれた解釈にも光を当てている点が興味深い。
特に、プーさんの物語が書かれた背景に第一次世界大戦の影響があるという考察は、全く想像していなかったため衝撃的だった。作品が生まれた時代の常識や社会情勢を知ることの重要性を改めて認識させられた。同時に、作者の意図とは異なる読まれ方が生まれるのは、時代が移り変わり、当時の常識が失われた現代において必然なのかもしれないと考えさせられた。
作品の多角的な視点に触れ、新たな発見を得られる読書体験だった。
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イギリス児童文学を題材に、当時の時代背景などを踏まえた上で物語を”読む”ということ、文学の楽しさを教えてくれる本。
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978-4-00-500947-3
c0298\900E
〈読む〉という冒険 イギリス児童文学の森へ
岩波ジュニア新書947.
著者:佐藤和哉(さとう かずや)
発行所:株式会社岩波書店
2022/02/18. 初版
目次
はじめに
1 マザー・グース
2 ロビンソン・クルーソー
3 クリスマス・キャロル
4 不思議の国のアリス
5 くまのプーさん
6 ライオンと魔女
7 第九軍団のワシ
ブックガイド
翻訳に使った原書
おわりに -
〈読む〉という冒険•••というか、〈読む〉為の現実•••とうか。
代表的なイギリス文学を取り上げて、大学の先生の講義を聴いているようで面白かった。
昔、可愛い本だけど何言ってるか分からん!と思っていた『マザーグース』、同じような理由で『不思議の国のアリス』も少し苦手でした。この2つに共通するナンセンスと、英語の韻など。日本人には分かりにくい部分を解説してくれていた。まさかあのうさぎさんにそんな意味が•••
そのほか『ロビンソンクルーソー』『クリスマスキャロル』『クマのプーさん』『ライオンと魔女』。それとこの中で私が一番最近に読んだ『第九軍団のワシ』。
そんな裏の部分なんか知りたくなかったよーという人もいるかもしれないけど、そう言う時代背景や作者の家庭環境など、知っていると見方が変わってきたり理解できる部分もあるように思う。
とっても興味深く面白かった。(図) -
子どもの頃楽しんだ作品たち。
時代背景を思わせる内容が書かれていたり、作品が今の社会の中で持つ意味は何か、自分で考えるきっかけを与えてくれる。
産業革命による児童労働者の現実、奴隷制、戦争の悲惨さ、相いれない考え方の対立など。
国語試験で求められる、作者の意図を突きとめるという読み方ではなく、少し異なる読み方を教えてもらった。
言葉は分かりやすいが、内容は深い一冊。
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