- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005009503
作品紹介・あらすじ
「漢字博士」として、辞書の編さんや国の漢字政策などに関わってきた著者。様々な当て字を得意になって書いていた小学校時代。秋桜をコスモスと読むのが許せなかった中学時代。進路に悩んだ高校時代。地名漢字を調べに出かけた現地調査など、漢字にまつわるエピソードを交えながら、漢字の魅力や研究者への道のりを語ります
感想・レビュー・書評
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漢字に取りつかれ、子どものころに漢字ハカセと呼ばれていた著者が博士になる過程が書かれています。
地道で気の遠くなるようなサンプルの収集に研究することの大変さと、当て字や地名、常用漢字表の在り方について知ることができます。
岩波ジュニア新書なので、小学校高学年から高校生向きの本です。中・高の受験問題になりそうな内容です。
論文に取り組んだ時の詳細も書かれているので、論文ってどう取り組んだらいいのか、と悩んでいる大学生も読んで欲しい1冊です。
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はじめに
1 蛸と鮹──マンガのタコと辞典のタコ
人生最初に書いた漢字が、「誤字」!/漢字が苦手な小学生/人と違うところに興味が向かう/「笹」は国字/漢和辞典との出会い/漢字博士として/漢字博士の日々
コラム 漢字のはじまりと古代の漢字/当用漢字と常用漢字──なぜ漢字は勝手に使えないのか?/国字とは?/漢和辞典を使ってみよう
2 秋桜と書いてコスモス──こんな当て字は許せない
漢字の「観察」/数々の「当て字」/「当て字」集めに熱中/辞典の世界を飛び出して/授業中の漢字/地理歴史クラブでもやっぱり漢字/許せなかった、山口百恵の「秋桜」/当て字の、気づき
コラム おもしろい当て字とその由来
3 〓、囍、靏──全一三巻『大漢和辞典』にもない漢字
『大漢和辞典』がほしい!/『大漢和辞典』を探せ/ついに購入!/『大漢和辞典』に対する「なぜ?」/白い手袋の少年/桃源郷発見/広がる興味と、もどかしさ/検定試験よりも……/漢字と経験/当て字にがっかり/書店や図書館に足しげく通う
4 脣から唇、膚から肌へ──当用漢字から常用漢字へ
始まった高校生活/やっと勉強に集中/まさかのビリギャル超え?/異体字に関心/国字に注目/国語学(日本語学)に出会う/古代中国だけでは/『小学雑記稿』を書く/「常用漢字表」の公布/学校の漢字/漢字を数える/何でも習ってみよう/将来についての悩み/家庭の激変/受験勉強
5 早慶は〓〓?──大学生活で出会った漢字
夢の大学一年生/構内と図書館で/習い事と図書館通い/サークル活動で学んだこと/大学二年生に/今につながる外国語の勉強/中国の漢字/国語学の洗礼
コラム めずらしい姓名
6 〓──俗字や国字は、何かしっくりくる
大学三年生に/中心を外す/大学四年、中文から日文へ/ひたすら資料を読む日々/不安とたたかった大学院への進学
コラム 田国男の周圏論
7 腺、濹の追跡──個人文字の広がり
初めてのワープロ/昭和の終わり/修士論文を提出/学会デビュー/学会誌への投稿/国字「腺」「濹」の追跡/視野の広げ方
8 妛、腥──幽霊文字、人名用漢字と向き合う
タイミングの大切さ/女子大学に就職/女子大学での日々/野外で地名を調べる/「KYON2」という表記/パソコン導入とデータ消滅の失敗/国立国語研究所への転職/研究所での仕事/JIS漢字(経済産業省の所管)の調査/幽霊文字の正体を暴く/JISの記号/研究所での意外な仕事/テレビと大学/子の名に付けられる漢字/意味よりイメージ?
コラム 姓名判断
9 粁、蛯──博士論文と北海道の蛯天丼
母校に戻る/教授としての日々/「左馬」の記憶/ついに博士論文の提出へ/博士になってみて/国字「蛯」を調べ、時代差、地域差、集団差を見出す/最初の出版は新書/博士論文の出版/初めての受賞
10 麺、混む──時代とともに「常用漢字」も変わる
文字政策の力と怖さ/道が「こむ」?/当て字/テレビ・ラジオ番組/変化を続ける仕事/人の幸せのために
おわりに -
面白かった。ジュニア新書だけど、大人にも。
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筆者の自伝的研究紹介の本。途中から見坊豪紀氏に似ているなあと思ったら、筆者が尊敬していて交流があったことも書かれていた。数日前に読んだ三省堂国語辞典と明解国語辞典の話とシンクロした。時々こういうことが起きるから面白い。
岩波ジュニア新書からの刊行であり、中学生や高校生にもおすすめである。 -
漢字のトリビア中心の本かと思ったら、想像以上にタイトル通りの本だった。
漢字ハカセと呼ばれた少年が本当に研究者となるまでが描かれている。
小学生のとき漢字に目覚め、中学生のときには研究を始めていて、それが本当に「研究」と言えるレベルのものなので仰天する。
天才肌というよりは、学究タイプ。研究対象にとことんこだわって調べ尽くし、そこから答えを導き出す。研究者以外の人生がこの方にあるだろうか?と思うし、本当に研究者になれるのかわからない中学生の段階でこれほどのめり込む息子を持った親御さんは正直言って心配だったのではないかとすら思う。
その真面目さ、正直さは文章から濃厚に伝わってきた。中学生のとき書いた自分のノートの誤字までそのまま活字にしてあり、普通なら直して書くのに(だって誰も気づかないよ!)。書いてあったら、間違いであろうと手を加えない研究者魂。
そんな真面目な笹原さんだけに、好きだった夏目雅子が伊集院静と結婚したとき、「すらすらと薔薇という字を書いたから(好きになった)」と言っているのを聞いて、「自分も書けるのに!」と大変悔しい思いをしたというところは笑ってしまった。
そんな笹原さんではあるがご結婚もされてご子息もいらっしゃるとのこと。どんな女性にどうやってアタックしたのか非常に気になるが、それは書かれていなかったのが残念だった。(主題から逸れるので仕方ないが…。)
著者プロフィール
笹原宏之の作品





