おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか (岩波ジュニア新書 993)

  • 岩波書店 (2024年12月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784005009930

作品紹介・あらすじ

人間ではない恋人、語るなの掟、開けてはいけない部屋――幸せな人が、幸せを求めて旅に出るでしょうか。むかしむかし、死の恐怖におびえる人々が夢みて語り継いだ物語が、アニメやゲームのモチーフになって現在にも生き続けています。なぜおとぎ話はあり、私たちに何を語るのでしょう。闇と光の物語の、深層に触れてみませんか。

感想・レビュー・書評

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  • なぜおとぎ話の主人公は美しい女性が多いのか?なぜ主人公はひどい目にあうのか?なぜすべてハッピーエンドで終わるのか?
    西洋のおとぎ話を類別し、その成立背景や、物語に隠された真のストーリーを読み解く。

    本書は物語を、主人公が「強いられた沈黙」にさらされる『白雪姫』パターン、『美女と野獣』に代表される「異世界の住人との結婚」パターン、主人公が暴力によって体の一部を奪われる『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』パターン、主人公が禁忌を破って秘密を知ったために危機に陥る『青ひげ』パターンに類別し読み解いていく。

    神話や伝説と違い、おとぎ話は弱者のための物語なのだという。女性が主人公になることが多いのは、彼女たちが社会的な弱者であったからだ。
    自分の意志で行動することが許されず、意に沿わない結婚を強制され、時には理不尽な暴力によって傷つけられてきた彼女たちは、おとぎ話の中で困難を乗り越えて幸せをつかむことで、現実の厳しさに耐え、生きる希望を見出していたのだろう。

    幸せの価値観は時代によって変化する。おとぎ話は当時の「幸せ」が何だったのかを知ることができるバロメーターにもなるという。
    今なら「結婚=幸せ」ではないよね、と思う人が多いかもしれないが、結婚に本人の意志など顧みられなかった時代、裕福で見目麗しい王子様を自分の力で獲得するということは、当時の最高の幸せだったといえる。
    現代では、おとぎ話を解釈し直したり、悪役にスポットを当てて新たなストーリーを描いたりすることが増えているが、これも今の幸せの価値観を表しているのだと考えると面白い。

    おとぎ話は残酷な部分が多く、読むのを躊躇することもあったが、その時代を懸命に生きた人たちの願いが込められたものなのだ、と考えると、また違った読み方ができそうだ。

  • 民話など、語り継がれているお話は、それぞれの楽しみ方がある。私のように浅い読みしかできない人にはそれなりに、深い読みができる人には意味深く。語りは時代を反映して変遷する。深読みしすぎて気持ち悪いと思ってしまう。

  • おとぎ話が描く背景、主人公が迎える結末、罪を負う人負わない人、なんでこの人に焦点が当たるのか当たらないのか。
    物語の1つ1つの事柄にこんなに深い意味が含まれている可能性があるとはこの本を手に取らなければ気にも止めていなかった、そう思わされることが多くありました。
    おとぎ話にはなぜなのか、どうしてなのかがたくさん隠されている。面白いと言っていいのかわからない内容が多いけど、その物語が誕生した事実こそが本当に興味深いと思いました。

  • おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか
    ウェルズ恵子

    ∞----------------------∞

    知らない話ばかりだ...

    「ざくろ姫」
    「くるみ割りのケイト」
    「十二羽の野鴨」
    「キューピッドとプシケー」
    「太陽の東、月の西」
    「美人娘イブロンカ」
    「腕のない娘」
    「カルカヨナ姫の物語」
    「ミスターフォックス」
    「青ひげ」
    「血だらけの部屋」

    おとぎ話も現代もの(「鬼滅の刃」とか「ヴァイオレットエヴァーガーデン」とか)も知らない話しか載ってないなんて...

    なるほどなと思ったことは、おとぎ話の悪役は否応なしに悪者とされているが、現代において悪役視点で捉えられた映画なんかが作られると立場も逆になってしまったり、そうだよね悪くなるにも理由があったよねと共感すらされるってこと。
    多様性っていうのはこういう意味ではいいことなのかなとちょっと思えた。

    2025/10/11 読了(図書館)

  • 図書館貸出読了。
    タイトルに惹かれて貸出した。
    小さい頃はグリム童話をよく読んでいたなぁ。
    ある時に、グリム童話の本当の真相を知った時は驚きがあったなぁ。
    残酷な話から幸せになる話を変える経緯を様々なお話を読み解いてくという解釈は読んだことがないからこそ面白いなぁと思い、読んでいた。
    10代に向けての本だったが、大人の私が読んでも楽しめる。
    ざくろ姫と十二羽の野鴨などのおとぎ話は初めて知った。
    今度私が知らないおとぎ話を読んでみようと思った作品であった。
    たまにこの作品を読もうかな。

  • 本当に昔話は残酷なところが多い。そのせいか、映像や絵本にするときに改変されてしまう事が多いようだ。切り刻まれたり、腕を切り落としたり…。もとは、口承文芸だったものを映像に起こそうとするときの困り事なんだろうな。
    著者は、声や音と文学の関係について研究しているのだとか。なるほど、と納得するテーマ。
    読書案内や参考文献も豊富だった。

  • おとぎ話はその時代背景や社会的制約を踏まえた子どもたちへの教育的なメッセージだったのか。娯楽的な物語とばかり思っていたから新鮮な気づきだった。きっと日本の昔ばなしにも同じようなメッセージが込められていたのだろう。

    なんというか生成されて論理的な部分が抽出された教科書で学んだ現代の我々よりもおとぎ話で育ったほうが情緒が育つような気がする。それは現代ではノイズと言われるのかもしれないけれど…

    ただ人の心に土足で入らないとか孤独の先に自立があるとか言葉にしにくい説教くさいことは物語のほうが納得しやすいなと個人的に思う。そう考えると昔ばなしやおとぎ話との接点が少なくなることはさみしいことなのかもしれない。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/725094

  • ふむ

  • おとぎ話がなぜ後世に残ったのか、なるほど娯楽であるとともに人生の教訓だったのかと理解した。お金を持っている男性は魅力的という点、美しい女性は妬まれるという点は長年共通なのだなという点が妙に頭に残った。
    小説はマイナスからプラス、未熟な状態からの成長というギャップが大きければより面白いと作家の中山七里先生が言っていたこととリンクした。昔からここも変わっていないんだな。

    読むことを勧めたくなるほどではなかったので、星は3つ。

  • おとぎ話は、伝わっていく中で、様々な歴史的背景や社会的背景を含んでいて、その背景を汲み取るだけで、そのおとぎ話の持つ意味というのが変わっていくるという体験は、まるでミステリーを紐解いているみたいで、中々ない体験だった。

    本書では、おとぎ話と近年のアニメなどの作品(鬼滅の刃やヴァイオレットエヴァーガーデン)の類似点などを比較しつつ、おとぎ話と現代で同一のテーマを書き出していることなどが解説されており、大変読みやすかった。

    声や腕がなくなることにも主人公の持つ課題を明確化する意味があることや、そもそも主人公も悪女も全員女性であり、本当の黒幕は男性である可能性があるなどの話も、面白く読めた。

  • おとぎ話を読んで解説していく、国語の授業形式の本。
    初めて読むお話しも多かったが、やはり残酷。

  • おとぎ話ってほんとに、美しい娘が権力者と結婚してハッピーエンド!な話が多いと思ってたけど、「おとぎ話のハッピーエンドは、結婚式ではなく、主人公の人格の完成と自由の獲得であるといえます。」のくだりは痺れた。
    当たり前のように現代まで受け継がれてるけど、考えてみれば結婚の意味が現代とは全然違ってた頃に作られた話なんだものなぁ。

    本書の最後の「私たちは、王子や神様と結婚したいわけではなく、自分を磨いた後に、それを認めて自分を必要としてほしい、自分をとりまく世界に愛してほしい」っていうやつ、おとぎ話と現代をつなげる本当にうまい締めくくりだと思った。

  • 3/1毎日新聞
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50380016

  • 『千の顔をもつ英雄』の上巻を読んだあとに息抜きとして読んだ。
    神話とおとぎ話は違うものだけど、旅立ち・イニシエーション・帰還の流れは型として共通してるのかなと思う。

  • おとぎ話には色々深い意味があるのを知ったけど、やっぱり残酷。掻い摘んだストーリーがわかりやすかった

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著者プロフィール

立命館大学文学部教授

「2019年 『ミンストレルショーと音楽 ―アメリカ初期資料集成― 【英文復刻】全 4 巻+別冊日本語解説 Minstrel Shows and Songs, An Archival Collection of Early American Books and Documents  』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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