「スターリン言語学」精読 (岩波現代文庫 学術8)

  • 岩波書店 (2000年1月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784006000080

みんなの感想まとめ

言語と民族の関係を深く探求する本書は、スターリンの言語学に焦点を当て、彼の社会主義思想がどのように言語に影響を与えたのかを明らかにしています。著者は、スターリン言語学とソビエト言語学の違いを解説し、特...

感想・レビュー・書評

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  • めったに聞かないスターリン言語学である。田中克彦の書きぶりはわかりやすい。時枝がこれを批評して広めたということも初めて聞いたが、大学の言語学の授業では習ったことがなかったので、今でもあまり教えないのかもしれない。
    米原万里の紹介本である。



  • 岩波現代文庫
    田中克彦 スターリン 言語学精読

    スターリンの論文「マルクス経済と言語学の諸問題」の解説本

    言語と民族の関係を紐解いている。スターリンの社会主義思想を軸に、言語とは 民族にとって何か、言語を扱う上で 国家と民族の違いは 何かを明らかにしている


    スターリンの革命は、共通の民族、言語、宗教 により 中央政府を作ろうとしたのではなく、民族主権や民族平等により 社会主義体制を作ろうとしたように読める


    スターリンの民族の定義は 現代にも通ずる。単一言語・単一民族が 一つの国家を構成する日本にいると、民族と国家の定義の違いに気づかないと感じた


    スターリンの「民族」の特徴
    *言語、地域、経済生活、文化の共通性のうちに現れる心理状態
    *すべての特徴が同時に存在する場合 民族となる
    *歴史的に構成された、人々の堅固な共同体
    *心理状態=民族特有の変わらぬ心理構造


    言語は上部構造ではない
    *言語は土台であって、社会の変化に対応するような上部構造ではない
    *土台は、与えられた発展段階における社会の経済制度
    *上部構造は、社会の政治的・法律的・宗教的・芸術的・哲学的な見解とこれに照応した政治的・法律的その他の機関
    *あらゆる土台は、それに照応する特有の上部構造を持っている


    言語は階級的ではない
    言語は階級的でなく 民族的〜言語は民族のものである


    「スターリンは、言語の階級性を否定して、単一民族の共通語の強調をマルクス主義的な立場とした」

    「民族は、人種的、種族的な共同体ではなく、歴史的に構成された共同体である」

    「民族は、共通の言語なしには考えられないが、国家は共通の言語は必ずしも必要ない」

    「社会主義的革命は、言語の数を増加させている〜新しい民族を新しい生活へと目覚めさせているから」






  • 2000年刊。著者は一橋大学名誉教授。


     ロシア人による他地域の植民行動を推奨・遂行し、民族と言語とを混沌の中に陥れたスターリン。ところが、1950年に発表した言語学関連の「スターリン論文」は、先の政治的行動とは真逆の、民族内の言語自決権を強く擁護するものだった。当該論文の意味を記述やスの言動から解読することを企図するのが本書である。

     が、正直、政策抜きでスの発想を須らく解読する方法は誤りだと思う。つまり政治的行動と該論文を照合して矛盾や合致を分析する必要があり、それがないとスの政策論を検討したとは言えないだろう。
     そういう意味で、スターリンがかような論文を書いた政治的意図は何かという点に踏み込まないと、余り面白くはない。

     また、言語の意義・役割、そしてその変遷要因につき単純な関係性を措定しているようで、この点も?だ。
     そもそも言語は交流のある集団間で作用する以上、仮に該集団が階級差等で交流途絶しているならば、言語に違いが生まれ、通有性が減弱するだろう。
     あるいは、新制度ができればそれに即した語彙・単語が生み出され、逆に制度廃止によって、これまでは通用していた言語は消滅する。
     つまり著者の言う「土台」からも、言語は影響があるのだ。

     あるいは交通機関の発達・高速化、通信の質的・量的範囲の拡大が集団間の交流拡大を生み、それは通用言語の統一性を要請する。かようなことでも言語は変わり、また、情報交換・伝達・交流の手段(テレビ・ラジオ・ネット)の変化によっても変わるだろう。
     さらにいえば、国語教育や出版物での言語の使い方の変化でも変わるはず。

     等々、そもそも一元的要因を措定するのが不自然なのだ。つまり多様な要因で言語は変わり、その要因の特定は容易でない、としか言えないのではなかろうか。
     これに非整合的なの著者の叙述がどうも腑に落ちぬ。そんな読後感である。

  • 「言語は上部構造ではない」このスターリンによる発言により、それまで公認とされてきたマルを代表とするソビエト言語学は崩壊する。学問と政治体制の癒着、崩壊をめぐるドラマは劇的で、20世紀という時代の一側面を見せてくれる。スターリンによる「マルクス主義と言語学の諸問題」も収録されている!!
    難い詰まらない本のように見受けられるでしょうが、こんなドラマチックな面白い本はありません!!荒削りながら、隠れ名著ですよ!!嘘じゃないから!!

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著者プロフィール

田中 克彦(たなか・かつひこ):1934年、兵庫県生まれ。東京外国語大学モンゴル語科、一橋大学大学院社会学研究科、ボン大学哲学部にて、モンゴル語、言語学、民族学、文献学を学ぶ。東京外国語大学、岡山大学、一橋大学、中京大学にそれぞれ在職。現在、一橋大学名誉教授。主な著書に『ことばは国家を超える』(ちくま新書)、『差別語からはいる言語学入門』(ちくま学芸文庫)、『ことばと国家』(岩波新書)、『「シベリアに独立を!」』(岩波現代全書)、『田中克彦自伝』(平凡社)、『言語学者が語る漢字文明論』(講談社学術文庫)などがある。

「2025年 『ことばの道草 言語学者の回想と探求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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