- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006000141
作品紹介・あらすじ
近代日本への根源的批判を投げかけ続けた自立の思想家、竹内好の1963年発表の「日本のアジア主義」は、戦後思想の暗部に大きな楔を打ち込み、いまなお真の解読を待つ。竹内の思想のよき理解者である著者は、この劇薬的論考を実証補強しつつ、日本にとってアジアとは何だったのか、「大東亜戦争」と満州国の意味、ナショナリズムの可能性等々、戦後思想の未決の諸問題を考察する。
感想・レビュー・書評
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西郷隆盛から始まり玄洋社の頭山満、黒竜会(天祐俠)の内田良平、朝鮮独立党の金玉均や東学党、
樽井藤吉の大東合邦論等朝鮮との関係。
岡倉天心、宮崎滔天、中野正剛そして孫文の大アジア主義等々。結局、大東亜共栄圏構想の帝国主義的膨張の思想に変質していく。
対極の思想として福沢諭吉の脱亜論がある。
このアジア主義の問題は、日本独特の古代からの思想の歴史や維新以降の欧米に対する姿勢等あらゆる問題が含まれた重要で象徴的なテーマである。
もう少し読み込んで、錯綜した人的系譜や諸事象を整理してスッキリさせる必要がある。
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「アジア主義には系譜はない」と言いつつも、思想史的に影響関係や対立関係を論じていたら、それが系譜になるのでは?と突っ込みたくなるが・・・。
本書は竹内の精読というよりも、松本の自論展開になっており、興味深いのは1964社会転換説で、丁度その時期に司馬が竜馬の連載をしており、日本の英雄が西郷→竜馬に転換したと。アジア主義の元祖とも言える西郷から近代人の元祖とも言える竜馬への英雄転換が意味するところはちょっと考えてみたいと思った。(今年の大河は西郷だったけど、どっちが人気あるかって言ったらやはり竜馬だよなあ。自分はどちらもあまり好きではないけど) -
亜細亜主義者を自称する自分にとっては、考えさせられることの多い本でした。
竹内好が「日本のアジア主義」を書いた1963年から40年以上経つわけで、アジアの状況そのものが大きく変わっているなかで、亜細亜主義という考え方を今にどう生かすか、単純な継承ではダメだという松本健一の解説も納得です。
また、松本氏が唱える「1964年転換説」
この年を境に、日本人の理想の人物が西郷隆盛から坂本竜馬になった、
という説は、あらためて納得するとともに、それがいいことだったのか、あらためて問いなおすすべきだと感じました。 -
日清戦争までの日本は国際的には小国で、清は大国だった。軍備において劣勢だった日本が清国を破ったのは、日本が近代化された国民軍だったのに、相手が軍閥の私兵だったから。
岡倉天心は、アジアはひとつでなければならない、と主張していた。
アジアは民族的固有性において、なかんずくその文化において多様である。その多様なるアジアが共生というアジア的価値において西洋を包みなおす。