アメリカ外交50年 (岩波現代文庫 学術 30)

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006000301

作品紹介・あらすじ

1900年からの50年間にアメリカがとった外交上の態度を徹底検証した講演集に加え、ソ連「封じ込め政策」の理論的基礎を示し反響を呼んだ論文等を収録。アメリカの戦後世界政策を構想した著者ケナンが、アメリカ外交の伝統における現実感覚の欠如を批判しつつ、そのあるべき姿を提言した外交論の教科書ともいうべき古典。

感想・レビュー・書評

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  • 2000年(底本86年。原論文47年、50年)刊。著者は戦後米国の対ソ戦略の基礎とされた「封じ込め政策」を提唱した外交研究者。戦前はソ連モスクワ大使館員の経歴あり。◆本書は米西戦争からWWⅡ後までの米外交を批判的に見る講演録(1・3部)と、俗に「X論文」とされる2部からなる。◆「封じ込め」の言からゴリゴリの反共・軍事優先主義者のように見えるが、実は全く違うことが論全体から判る。つまり「封じ込め」の意味を軍部や右派政治家が曲解・誤用・悪用したのだろう。同様の疑念はかような邦訳を用いた点にも結実できそう。
    ◆①米国外交の問題は、理想主義的言動の中に、隠れた利己主義が含まれる。これは戦前戦後問わず。②短兵急な理想主義を含め、教条主義的スタンスが米国外交を誤らせる。柔軟姿勢の重要性。③②故に、単純な反ソ・反共・反スタとともに、軍事一辺倒の姿勢は危険。④性善説的人間観と人間性への信頼が基底(ただし、性悪も併有するのが人間との印象も)。⑤ソ連は弱い(ただ、経済制度、独裁的体制、元来の農業・工業生産力の低さ等何れあるいは幾つかの要因によるか不明瞭)。⑥⑤故に、窮鼠猫を噛ませる外交は不適。
    というところかなぁ。◆日米関係を含む、アジアは殆ど叙述されない。欧州のみが外交の中心的関心事という事実が雄弁に語られる。中でも、欧州に統一的な一大勢力を生み出させないことが、米国の国益になるという指摘には注意がいる(もっとも、何故そうなのかについて書かないのが困ったところ)。◆とはいうものの、米国の外交の基本的視座は、本書の批判的指摘から感得できるし、現代の民主主義輸出論とも符合する面が大。また、米国外交での現実主義と理想主義の二枚舌にも現代に通ずる側面を感じずにはいられない。つまり有益な一書かと。

  • 1900年からの50年間におけるアメリカ外交史。
    著者はソビエト封じ込め政策の理論面での推進者。
    毎度毎度やらなくてもいいことまでやったせいで余計な問題を抱え込んできたというような事が書かれている。
    世界はパワーバランスの上に成り立つので一つ潰してもバランスが崩れて傾きが変わり、安定した緊張状態に戻るだけで何の解決にも成らない。
    安定した緊張状態こそ冷戦だ。
    彼の見立ては、ソビエトは実際的な実力には敏感なため冒険は犯さず、ナチスと違って追い詰めなければ暴発することはないという事だ。
    なんだかんだ言って結果的にアメリカは冷戦に勝利したといえるので彼は正しかったのだろう。

  • ジョージケナンの外交についての講演集的な。かのX論文も収録。全般に、改善されたけど道徳家・法律家的な米外交への批判的な考察といった感じかな。
    アメリカ外交50年ということで米西戦争についての考察から始まるんだけど、この戦争が国益への注意が払われないまま国民一般の気分や一部の策謀で始められたことなどを指摘。
    東アジアとの外交については、米にヨーロッパとは違って積極的に関与したがる傾向があること、日本との関係悪化に繋がった政策の数々について言及。
    また、第一次大戦についてのところで民主主義は平和を愛しているが一度戦争まで挑発されると忿怒に狂って戦う巨獣のようなものと言ってる。
    第二次大戦では、ヒトラーが権力をやすやすと握る状況にドイツを持っていったところですでに西側民主主義国の一つの敗北だったとしており、途中でヒトラーの野望を潰せなかった融和策についても批判。
    講演集とは別に収録された論文だが、ソ連というかロシア人には理解と期待を持ってるのがわかる。軍産複合体の問題についても触れている。

  • Twitter国際政治たんがすすめたので読む。初心者には読みにくい本だった。

    ロシア国民の偉大さを強調し、アメリカの安全を確保する上でロシア国民を敵視するのは間違った戦略であり、ロシア政府の行動を戦争を含む手段で自らの脅威とならないよう誘導することの重要性を説いている。

    2つの世界大戦は我々に影響をおよぼした。
    1.ともに無条件降伏という形をとったため、多くが戦争の目的は無条件降伏と勘違いしてしまった。
    2.戦争行為は敵の軍隊に対して行うべきで一般市民に対してなされてはならないという従来の考えから離れた

  • [ 内容 ]
    1900年からの50年間にアメリカがとった外交上の態度を徹底検証した講演集に加え、ソ連「封じ込め政策」の理論的基礎を示し反響を呼んだ論文等を収録。
    アメリカの戦後世界政策を構想した著者ケナンが、アメリカ外交の伝統における現実感覚の欠如を批判しつつ、そのあるべき姿を提言した外交論の教科書ともいうべき古典。

    [ 目次 ]
    スペインとの戦争
    ヒッピスレー氏と門戸開放主義
    アメリカと東洋
    第一次世界大戦
    第二次世界大戦
    現代世界の外交
    ソヴェトの行動の源泉
    アメリカとロシアの将来
    ウォルグリーン講演の回顧
    アメリカ外交と軍部

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ソ連は西側におかれている兵力に比べてはるかに大規模な地上兵力を東欧および中欧に残していた。
    アメリカは軍事的戦略について、あるいは国民生活の構造の中の軍事力の位置について、伝統的な観念を持たない国である。

    ジョージケナンはForeign AffairsのX論文の筆者。

    国際社会の生活というものは、一本の木と同じように、長い期間にわたって1つの方向に絶えず圧力を加えることによtt、えある程度曲げることができるのが通例。

    自分が戦争しているかいないかによって、自分の物の考え方を一夜にして切り替えることの驚くべき能力というものは、まったく民主主義の奇妙な特徴の1つ。

    全面勝利という観念ほど、危険な妄想はないのであり、過去においてもこれほど大きな害を及ぼしたものはない。

  • 現代にも通じる著作。特にアメリカの外交が法律家的かつ道徳的であるという主張は現代のアメリカ外交にもドンピシャで当てはまると思った。「封じ込め」政策のもととなるX論文が所収されている。

  • 元外交官による20世紀前半のアメリカ外交史。現在にも通じるアメリカ外交の基本思考とソ連の台頭を予見した論文は必読。

  •  アメリカ外交官として、そしていわゆる「封じ込め政策」の提唱者として名高いジョージ・F・ケナンの講演、論文を一冊の本としたものである。

    【構成】
    第1部
     第1章 スペインとの戦争
     第2章 ヒッピスレー氏と門戸開放主義
     第3章 アメリカと東洋
     第4章 第一次世界大戦
     第5章 第二次世界大戦
     第6章 現代世界の外交
    第2部
     第1章 ソヴェトの行動の源泉
     第2章 アメリカとロシアの将来
    第3部
     第1章 ウォルグリーン講演の回顧
     第2章 アメリカ外交と軍部


     第1部は1950年冬にシカゴ大学で行われた6回の連続講演が収録されている。この講演の要旨については作者自身が明解に解説をつけている(第3部第1章)ので、まずはこの解説を読んでから本文を読むとより理解が深まると思われる。内容は19世紀末の米西戦争、門戸開放宣言にはじまる20世紀前半のアメリカ外交を批判的に論じるものである。

     第2部はケナンの名を世に知らしめた、Foreign Affairs誌に1947年に投稿された有名な「X論文」が最初に収録され、1951年に投稿された論文も併録されている。

     第3部は1985年に出された論考で、既に常態化してしまった冷戦構造に対して、アメリカ外交が孕む根本的な過ちを指摘している。


     ケナンの主張は非常に一貫している。アメリカが抱きがちな法律家的・道徳家的な姿勢を戒め、他国への過度な期待や押しつけを避けるべきであると論じる。
     それは、第一次世界大戦後のウィルソニズムへの懐疑であり、第二次大戦後の強制的手段によるソ連の体制転換を望む姿勢への批判である。

     ケナンは外交官として、外交の力の限界と可能性を熟知していたと感じられる。つまり、限界とは、他国の政治制度を外交手段によって規定したり変革したりすることは、非常に困難でありそれは往々にして有益ではないということである。また、可能性とは、対ソ「封じ込め」政策に見られるように、敵対的な勢力に対しては、その敵対勢力の周縁部に対してアメリカの意図・価値観をよく理解させることで、長期的に敵対勢力自身の求心力を弱めさせ、内部崩壊に導く可能性を引き出すことができるというものである。

     ケナンは、常に外交姿勢に謙虚さ、慎重さを要求するだけでなく、非軍事的な方法によって漸次的な解決を求める傾向にある。

     しかしながら、そのような穏健で妥当な政策は、ケナン自身が危惧するようにアメリカ国民や少数で急進的な議会のロビイストには通用しない場合が多い。
     事実、ケナンが提唱したはずの「封じ込め」政策がケナンが国務省を去った直後に、ケナンの全く意図しない形の軍事戦略に変容してしまったのもケナンの求める外交がいかに困難であるかということを示しているだろう。

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