洪秀全と太平天国 (岩波現代文庫 学術 59)

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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006000592

作品紹介・あらすじ

中国革命の源流をなす太平天国運動。指導者・洪秀全はキリスト教を独自に解釈して拝上帝教を創始し、民衆をひきつけて十四年にわたり清朝と対峙した。彼は「世直し」運動の指導者として孫文や毛沢東に大きな影響を与えた。本書は宗教運動から反清革命への転換の経緯やその後の運動の展開を明らかにし、南京入城以後の軍事共産主義的な社会制度や諸王間の抗争の実態を描く。半世紀にわたり太平天国を研究してきた第一人者による伝記。

感想・レビュー・書評

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  • 集英社から1987年に刊行された『洪秀全ーユートピアめざして』が原本。現代文庫版では最後に「太平天国研究の半世紀」という短文が補われています。四半世紀経ちましたが、いま読んでも面白い。さすがの名著です。

  •  アヘン戦争から約10年後に起きた「太平天国の乱」は、19世紀の初めの14年間、洪秀全がもとはキリスト教を独自に解釈して「拝上帝教」を創始したことに始まる。始めは新興宗教といったところだったが、その宗教運動が革命運動へと変節していく。

     「太平天国」とは聞いたことはあるものの、一体どんなものか良く知らなかった。最初はカトリックだったのに途中変節していく。それは自分の理想を追い求め、ユートピアを建設しようとせんがための必然であったのだろう。こういうプロセスは現代でもあちこちに見られる新興宗教が成長していく過程と同じではないかと思う。貧困層を巻き込んで大規模な組織を作り、軍事部門まで持つに至り、すっかり清朝に対抗する革命勢力になった。

     しかし洪秀全が天父として祭り上げられ後宮に引きこもってしまい、表舞台に出てこなくなる。これでは民衆の信頼は崩れてしまうのも当然と言える。地上に天国を作るとした当初の発想は良かったが、実際には最後に自分だけちょっといい思いをした。だからたった14年で太平天国の世界は消滅した。

     索引が人名と事項に分けられており引きやすかった。写真は所々に使用されており、興味深い場所が写っていて参考になった。ただ、地図をもっとふんだんに利用して説明してくれれば、さらに理解が深まるものと思う。

  • 中国近代史にはまった一冊。
    科挙に落第し続けた洪秀全
    拝上帝教を興して、金田村で旗揚げ。
    そして、南京まで一直線。
    なんなんだこの集団は。

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著者プロフィール

1928年生まれ。東京大学名誉教授。中国近代史。『洪秀全と現代中国』岩波現代文庫 2001年、「ユートピアから逆ユートピアへ——中国の場合」『ユートピアへの想像力と運動』お茶の水書房 2001年、「日本人の中国観の変化——幕末・維新期を中心に——」『日中文化論集』勁草書房 2002年。
〈中国古代史説明、第1、2章〉

「2004年 『中国の歴史 中国高等学校歴史教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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