昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術71)

  • 岩波書店 (2002年1月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (420ページ) / ISBN・EAN: 9784006000714

感想・レビュー・書評

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  • めちゃくちゃ面白かったーーー!こういう話自分の分析にもなるので楽しんだ。。後ろに索引があるのもありがたい。『昔話の深層』も読みたいな。

    最初の方で書かれているように、日本の昔話研究は独自の方法があると思われる一方で、我々が西洋の考えや方法論に強く影響されてきたことは事実であること、それとの対比の上で日本人の心の在り方を探る、というのは至極全うなことのように感じるし、それを通じて見えてくる自分の価値観や感覚にひそむものが言語化されていく楽しみはとても知的な快感だった…笑。

    ノイマン『意識の起源史』のスケッチ(p.20/1982年版)
    ・自我確立の家庭の一番最初は、多くの天地創造神話に示されるようにカオスの状態にあり、意識と無意識は分離されず混沌のまま⇒この状態を象徴的に表しているのが、ウロボロスの象徴
    ・このウロボロス的な未分化な全体性のなかに、自我がその小さい萌芽を現すとき、世界は太母(グレート・マザー)の姿をとって顕現する。…世界が自我を養い育てる母として映るか、出現し始めた自我を呑みこみ、もとの混沌へと逆行せしめる恐ろしい母として映るか、それに従って太母の像は肯定的あるいは否定的に認識される
    ・次の段階において、天と地、父と母、光と闇、昼と夜などの分離を体験…ここまでは創世神話
    ・無意識から分離された意識が、自立性を獲得し、人格化されることは、神話のなかの英雄増によって顕現…

    第一章「見るなの座敷」
    「うぐいすの里」この昔話知らなかった!
    …「無の状態に至る」結末は…日常・非日常、男性・助成などの区別を超えて、一切をその中に包含してしまう円へ変貌する。それは無であって有である。このような「無」の直接体験は、おそらく人間の言葉を奪ってしまうものであろう。日常・非日常の区別を超えると言ったが、それは主体と客体をもひとつの円のなかに包摂してしまい、それを客観化し、言語化することを不可能とならしめる。…円の中は空であり無である。しかし、無とは何かとなお問いかけてくる人に対しては、昔話は「梅にうぐいす」という答えを用意している。あるいは日本人にとって最も大切な、稲の成長のすべてがそこに示されたように、それあ「すべてのこと」と答えているとも考えられる。(p.30-31)
    …日本人であるかぎり、黙って消え去ってゆく女性像に対して感じる「あわれ」の感情を抜きにして、この話の全体を論じることはできないのである。…聞き手に生じる「あわれ」の感情と言うことを述べたが、その「あわれ」とは、われわれの物語に即して言えば、完結に至る寸前における、プロセスの突然の停止によって引き起こされる美的感情である。…悲しく立ち去ってゆく、うぐいすの姿によって、われわれの美意識は完成される。(p.32)
    ここまで読んで、すでになるほど・わかる~~となりました笑。「あわれ」に共鳴してしまう私としてはまさにそれこそ日本というものに感じる、私の心象風景の日本にぴったりで、それと同時に聞こえたのは「松風ばかりや残るらん」という一節。お能も通じるなー…
    (黒塚も紹介されていますが)

    第三章「鬼が笑う」
    …吉田敦彦が、「日本神話中に物語られているアメノウズメの行動が、ほとんどすべての場合において、鎖されている口、入口、通路などを開く働きとして解釈される」と述べているのは、まことに卓見といわねばならない(p.94) アメノウズメの露出行為が呪術的な効果を狙ってなされていると後述で書かれているが、なるほど~~とここもアハ体験がすごかった。それが、「夜が明けて朝がくること、あるいは冬が終り春の花開くときがくること」(p.100)にまで関連していくこと面白すぎる!

    第五章「二つの女性像」
    「永遠の少年(プエル・エテルヌス)」は、…常に「未だ」の状態におかれたままでいる。ところが、ある日突然この少年が急激な上昇をこころみるときがある。…そのときのひらめきの鋭さと、勢いの強さは時に大君人を感歎せしめるが、残念ながら持続性をもたぬところがその特徴である。彼らはこのようなとき危険をおそれないので、しばしば勇敢な人と思われるが、真実のところその背後に働いているのは太母の子宮への回帰の願いであり、その願いのままに死を迎えることもある。(p.147)
    ここで思い出したというか、やっぱり流れ出したのは2幕の最後の場面の音楽とトリスタンの夜の国への誘い。
    Dem Land, das Tristan meint, der Sonne Licht nicht scheint:
    es ist das dunkel nächt'ge Land,
    daraus die Mutter mich entsandt,
    als, den im Tode sie empfangen,
    im Tod sie liess an das Licht gelangen.
    ワーグナーといえば、第六章でもゲルマン民族の伝説として紹介された、白鳥とベアトリクスの話はローエングリン!!(p.197)なので、ワーグナーが伝説や昔話ベースに話を組み立てていたことは勿論周知の事実なのだけれど、その意味を改めて考えさせられた。

  • 前作「昔話の深層」はスイスで受けたフォン・フランツ女史の講義での河合ノートの書籍化だった。前作でも予告されていたが、日本人が日本の昔話をフォン・フランツ女史風に分類し解釈するとどうなるか、をやってみたのがこの本である。
    最後の章に「1章から9章までの記述を、一楽章より九楽章へと続く楽譜としてではなく、オーケストラの総譜の一段目より九段目に書かれた楽譜として読みとって頂きたいのである」とある。
    結論は9章の最後のところにまとめてあるのだが、1章から丁寧に咀嚼して読んでいかないと、9章の深みが味わえない。再読だが1度目は飛ばして読んだと思う、学術論文のようで、自分で調べて理解する単語が多く、ページが進まないのだ。
    河合さんは、たぶん難しく書きたかったのではないだろうか。その目的は、専門家を唸らせたい、という商売っ気だったとおもう。当時の専門家の(民俗学の?)評価は高かったと思うが、一般の人には知らない文献の引用が多すぎて、わかりずらい。ほとんどの人は「昔話の体系」を知らないので、最初からいろんな昔話が花火のようにバーンと頭の中に散らばってしまい、訳がわからなくなる。

    私の無知を披露することになりますが、グリム童話は昔話を収集したもので、イソップやアンデルセンは創作童話であることでさえ、私は知りませんでした。
    アンデルセン:「人魚姫」「マッチ売りの少女」
    イソップ:「ありとキリギリス」「ウサギとカメ」
    グリム:「赤ずきん」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」
    グリムさんは、日本でいうと柳田國男ですね。
    WIKIPEDIAで「物語の類型」や「昔話」「説話」「伝説」をちょっと調べてから、この本を読みはじめると良いかもしれません。

    偶然見た「昔話から見た日本的自我のとらえ方 日本昔話が持つ教育的効果に関する一考察」安藤則夫 植草学園大学是速教育学部 も参考になりました。(「昔話と日本人の心」への批判もあります)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/uekusad/1/0/1_KJ00008210899/_pdf/-char/ja

  • 「昔話と日本人の心」河合隼雄著、岩波現代文庫、2002.01.16
    420p ¥1,155 C0111 (2020.05.11読了)(2018.08.27購入)(2009.04.03/9刷)

    【目次】
    第1章 見るなの座敷
    第2章 飯くわぬ女
    第3章 鬼が笑う
    第4章 姉の死
    第5章 二つの女性像
    第6章 異類の女性
    第7章 耐える女性
    第8章 老翁と美女
    第9章 意志する女性
    付篇
    1 うぐいすの里
    2 忠臣ヨハネス
    3 三つ目男
    4 飯くわぬ女
    5 鬼が笑う
    6 白鳥の姉
    7 浦島太郎
    8 鶴女房
    9 手なし娘
    10 火男の話
    11 炭焼長者
    あとがき  昭和五六年師走
    岩波現代文庫版あとがき  平成十三年師走
    解説  鶴見俊輔

    ☆関連図書(既読)
    「ユング心理学入門」河合隼雄著、培風館、1967.10.30
    「子どもの宇宙」河合隼雄著、岩波新書、1987.09.21
    「昔話の深層」河合隼雄著、講談社+α文庫、1994.02.18
    「中年クライシス」河合隼雄著、朝日文芸文庫、1996.07.01
    「日本文化の新しい顔」河合隼雄・日高敏隆著、岩波ブックレット、1998.01.20
    「こころの処方箋」河合隼雄著、新潮文庫、1998.06.01
    「中空構造日本の深層」河合隼雄著、中公文庫、1999.01.18
    「未来への記憶(上)」河合隼雄著、岩波新書、2001.01.19
    「未来への記憶(下)」河合隼雄著、岩波新書、2001.01.19
    「神話と日本人の心」河合隼雄著、岩波書店、2003.07.18
    「泣き虫ハァちゃん」河合隼雄著・岡田知子絵、新潮社、2007.11.30
    「生きるとは、自分の物語をつくること」河合隼雄・小川洋子著、新潮社、2008.08.30
    「河合隼雄スペシャル」河合俊雄著、NHK出版、2018.07.01
    (アマゾンより)
    「浦島太郎」「鶴女房」「炭焼長者」など日本人が親しんできた昔話を世界中の物語と比較し,その普遍性と文化的固有性を見据えて日本人の固有な文化と心のあり方を探る.昔話の深層構造を心理学的に考察することで,意識-無意識の独特な関係を浮き彫りにし,日本人の自我形成を明らかにした,ユング心理学第一人者の代表作.解説・鶴見俊輔.

  • 興味深いし面白かったんだけど、結構難しくて途中何度も浮気や寄り道をしながらようやく読破。
    前作は、西洋のおとぎ話が中心だったけど、こちらは日本の昔話から日本人の意識・無意識を読み解くというもので、前作との対比も興味深かった。

    中国の思想とも少し比較されていたけど、その中でも「老荘思想」と日本人の無意識観は割と近い感じがした。
    無意識を無理やりに意識づけするとまずい、というところで漢文の授業で習った「混沌」を思い出した

  • 知らずして西洋文明、文化に慣れすぎて「日本の文化は独特」という言葉に反感を持つことがある。
    異なる文化圏にある人の心の違いは識者がいうほと大きいものではないような?と思っていながら、太古の記憶が現代の日本人にも習慣づけられている不思議。
    心の病はそこのところが分からずに表面的な意識のみに左右されてしまうところからくるものなのだろうか。
    目に見て耳に聞こえない部分にもっと目を向けるべきなんだろう。

    これを読むと村上氏や大江氏の描く主人公が穴に潜ることや養老氏の「壁」の事となどがそこはかとなくわかっていく気がする。簡単な単語で表出できない何かなんだよな。

    言葉にできない何かをもっと大切にしないといけない。温故知新再燃。

    一度手をつけて挫折した本ながら、日々の読書によってこんなのも読めるようになって感動。

  • 最後の「意志する女性」の章のまとめが、本書を最高作に仕上げた。どの章も単純な分析だな、退屈だな、日本論としては冴えていないな、という印象で読み進めた。もちろん、「手なし娘」「炭焼長者」など好みの話に出会い満足はした。しかし、あのまとめで文化の全体性、物語群の重層性を示し、人類の叡智さえも感じさせたのは、見事というほかない。解説の鶴見俊輔の文章も良い。聞く力の復活だ。

  • ちょっと私には難しかった…というか読みずらかった。

  • 09.8.27購入。索引や原話?が巻末についていて便利だし、切り口はやっぱり私にとってとても興味深い。今でもパラパラめくっている。ただ、大学三年くらいのころから、この本だけで終わってしまうとすこし幅が狭い(取り上げ方が結構限定されがち)のかなあと思うようになった。すごく面白いんだけどね。

  • 図書館にあったので借りて読んだ本。やはりこの人の本は固い文章でも読みやすいし、分かりやすくて面白い。

  • 日本の昔話の中に、日本人の心の在り方を探る。西洋の物語と日本の物語の比較が秀逸。物語りの終り方の違い、異類婚の有無、絶対神と絶対無、父権的意識と母権的意識、完全性と全体性。ひとつひとつに納得した。

    P34
    西洋の物語は、それ自身がひとつの完結された形をもち、その完結性がわれわれの心を打つ。これに対して、わが国の物語は、むしろそれ自身としては完結していないように見えながら、その話によって聞き手が感じる感情を考慮することによってはじめて、ひとつの完成をみるものとなっている。つまり、日本人であるかぎり、黙って消え去っていく女性像に対して感じる「あわれ」の感情を抜きにして、この話の全体を論じることはできないのである。

    P294
    キリスト教の唯一絶対神に対して、わが国には絶対無の神が存在している。唯一絶対神に支えられた西洋人の自我は、男性像によってあらわされると述べたが、おそらく、日本人の自我は「無」によって表わされる。

  • 日本の物語は、基本的に英雄の冒険潭ではない。結婚をハッピーエンドとするものが非常に少ない……。言われると、ああ確かにそうだなあと感じます。
    昔話や神話に隠れた古の日本人の世界観が、類型的な物語群や西洋・アフリカ系の昔話との対比によって浮かび上がる。幼い頃に見聞いた昔話の謎解きを聞いているようでとてもおもしろいです。
    ただ、自分の理解不足でカバーしきれなかったところが有るので、この学問をしっかりと学んでからリベンジしたい一冊。★大学図書館

  • 「日本人の心」と銘打ってあるが、内容は昔話の中の女性がメインとなっているのがやや残念。
    しかし日本の昔話とグリム童話、様々な国の神話・民話を体系的かつ適度なボリュームでまとめ比較検証している点に頭が下がる。

  • こちらも入試対策にと初読は小学生でした。当時はえらくつまらなかった(笑)。今またこういう分野を勉強する身になっているので、ふしぎな巡り合わせのようなものを感じます。

  • 臨床心理学者の著者が昔話を分析して、日本人を探った傑作。ユングの知識がないとちょっと読みにくいかも?

  • 日本の昔話が中心ですが、ヨーロッパの神話にも触れています。

  • 昔話と日本人の心の結びつきに付いて、日本でのユング心理学の第一人者河合氏の著書。
    いきなり飛び込むとちょっと難しいですが、「へぇ」と思うことが多くて楽しいのでオススメ。

  • 興味深い一冊。

  • 日本の昔話と西洋の昔話を対比し
    日本人と西洋人の心の成り立ちの違いというか
    アイデンティティーの相違というか
    ちょっと僕には難しくて
    全てを理解するまでには至らなかったけど
    なんとなく伝わってきたものとして
    日本には日本独特の文化や考え方があって
    それは他のどの文化にも引けをとらない
    素晴らしいものだということを教えてくれる。
    昔話は過去から現在そして未来へと続く
    先人達から僕らへの
    生きるヒントとなるかけがえの無いバイブルだ。

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