昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006000714

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  • 前作「昔話の深層」はスイスで受けたフォン・フランツ女史の講義での河合ノートの書籍化だった。前作でも予告されていたが、日本人が日本の昔話をフォン・フランツ女史風に分類し解釈するとどうなるか、をやってみたのがこの本である。
    最後の章に「1章から9章までの記述を、一楽章より九楽章へと続く楽譜としてではなく、オーケストラの総譜の一段目より九段目に書かれた楽譜として読みとって頂きたいのである」とある。
    結論は9章の最後のところにまとめてあるのだが、1章から丁寧に咀嚼して読んでいかないと、9章の深みが味わえない。再読だが1度目は飛ばして読んだと思う、学術論文のようで、自分で調べて理解する単語が多く、ページが進まないのだ。
    河合さんは、たぶん難しく書きたかったのではないだろうか。その目的は、専門家を唸らせたい、という商売っ気だったとおもう。当時の専門家の(民俗学の?)評価は高かったと思うが、一般の人には知らない文献の引用が多すぎて、わかりずらい。ほとんどの人は「昔話の体系」を知らないので、最初からいろんな昔話が花火のようにバーンと頭の中に散らばってしまい、訳がわからなくなる。

    私の無知を披露することになりますが、グリム童話は昔話を収集したもので、イソップやアンデルセンは創作童話であることでさえ、私は知りませんでした。
    アンデルセン:「人魚姫」「マッチ売りの少女」
    イソップ:「ありとキリギリス」「ウサギとカメ」
    グリム:「赤ずきん」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」
    グリムさんは、日本でいうと柳田國男ですね。
    WIKIPEDIAで「物語の類型」や「昔話」「説話」「伝説」をちょっと調べてから、この本を読みはじめると良いかもしれません。

    偶然見た「昔話から見た日本的自我のとらえ方 日本昔話が持つ教育的効果に関する一考察」安藤則夫 植草学園大学是速教育学部 も参考になりました。(「昔話と日本人の心」への批判もあります)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/uekusad/1/0/1_KJ00008210899/_pdf/-char/ja

  • 「昔話と日本人の心」河合隼雄著、岩波現代文庫、2002.01.16
    420p ¥1,155 C0111 (2020.05.11読了)(2018.08.27購入)(2009.04.03/9刷)

    【目次】
    第1章 見るなの座敷
    第2章 飯くわぬ女
    第3章 鬼が笑う
    第4章 姉の死
    第5章 二つの女性像
    第6章 異類の女性
    第7章 耐える女性
    第8章 老翁と美女
    第9章 意志する女性
    付篇
    1 うぐいすの里
    2 忠臣ヨハネス
    3 三つ目男
    4 飯くわぬ女
    5 鬼が笑う
    6 白鳥の姉
    7 浦島太郎
    8 鶴女房
    9 手なし娘
    10 火男の話
    11 炭焼長者
    あとがき  昭和五六年師走
    岩波現代文庫版あとがき  平成十三年師走
    解説  鶴見俊輔

    ☆関連図書(既読)
    「ユング心理学入門」河合隼雄著、培風館、1967.10.30
    「子どもの宇宙」河合隼雄著、岩波新書、1987.09.21
    「昔話の深層」河合隼雄著、講談社+α文庫、1994.02.18
    「中年クライシス」河合隼雄著、朝日文芸文庫、1996.07.01
    「日本文化の新しい顔」河合隼雄・日高敏隆著、岩波ブックレット、1998.01.20
    「こころの処方箋」河合隼雄著、新潮文庫、1998.06.01
    「中空構造日本の深層」河合隼雄著、中公文庫、1999.01.18
    「未来への記憶(上)」河合隼雄著、岩波新書、2001.01.19
    「未来への記憶(下)」河合隼雄著、岩波新書、2001.01.19
    「神話と日本人の心」河合隼雄著、岩波書店、2003.07.18
    「泣き虫ハァちゃん」河合隼雄著・岡田知子絵、新潮社、2007.11.30
    「生きるとは、自分の物語をつくること」河合隼雄・小川洋子著、新潮社、2008.08.30
    「河合隼雄スペシャル」河合俊雄著、NHK出版、2018.07.01
    (アマゾンより)
    「浦島太郎」「鶴女房」「炭焼長者」など日本人が親しんできた昔話を世界中の物語と比較し,その普遍性と文化的固有性を見据えて日本人の固有な文化と心のあり方を探る.昔話の深層構造を心理学的に考察することで,意識-無意識の独特な関係を浮き彫りにし,日本人の自我形成を明らかにした,ユング心理学第一人者の代表作.解説・鶴見俊輔.

  • 興味深いし面白かったんだけど、結構難しくて途中何度も浮気や寄り道をしながらようやく読破。
    前作は、西洋のおとぎ話が中心だったけど、こちらは日本の昔話から日本人の意識・無意識を読み解くというもので、前作との対比も興味深かった。

    中国の思想とも少し比較されていたけど、その中でも「老荘思想」と日本人の無意識観は割と近い感じがした。
    無意識を無理やりに意識づけするとまずい、というところで漢文の授業で習った「混沌」を思い出した

  • 知らずして西洋文明、文化に慣れすぎて「日本の文化は独特」という言葉に反感を持つことがある。
    異なる文化圏にある人の心の違いは識者がいうほと大きいものではないような?と思っていながら、太古の記憶が現代の日本人にも習慣づけられている不思議。
    心の病はそこのところが分からずに表面的な意識のみに左右されてしまうところからくるものなのだろうか。
    目に見て耳に聞こえない部分にもっと目を向けるべきなんだろう。

    これを読むと村上氏や大江氏の描く主人公が穴に潜ることや養老氏の「壁」の事となどがそこはかとなくわかっていく気がする。簡単な単語で表出できない何かなんだよな。

    言葉にできない何かをもっと大切にしないといけない。温故知新再燃。

    一度手をつけて挫折した本ながら、日々の読書によってこんなのも読めるようになって感動。

  • 最後の「意志する女性」の章のまとめが、本書を最高作に仕上げた。どの章も単純な分析だな、退屈だな、日本論としては冴えていないな、という印象で読み進めた。もちろん、「手なし娘」「炭焼長者」など好みの話に出会い満足はした。しかし、あのまとめで文化の全体性、物語群の重層性を示し、人類の叡智さえも感じさせたのは、見事というほかない。解説の鶴見俊輔の文章も良い。聞く力の復活だ。

  • ちょっと私には難しかった…というか読みずらかった。

  • 09.8.27購入。索引や原話?が巻末についていて便利だし、切り口はやっぱり私にとってとても興味深い。今でもパラパラめくっている。ただ、大学三年くらいのころから、この本だけで終わってしまうとすこし幅が狭い(取り上げ方が結構限定されがち)のかなあと思うようになった。すごく面白いんだけどね。

  • 図書館にあったので借りて読んだ本。やはりこの人の本は固い文章でも読みやすいし、分かりやすくて面白い。

  • 日本の昔話の中に、日本人の心の在り方を探る。西洋の物語と日本の物語の比較が秀逸。物語りの終り方の違い、異類婚の有無、絶対神と絶対無、父権的意識と母権的意識、完全性と全体性。ひとつひとつに納得した。

    P34
    西洋の物語は、それ自身がひとつの完結された形をもち、その完結性がわれわれの心を打つ。これに対して、わが国の物語は、むしろそれ自身としては完結していないように見えながら、その話によって聞き手が感じる感情を考慮することによってはじめて、ひとつの完成をみるものとなっている。つまり、日本人であるかぎり、黙って消え去っていく女性像に対して感じる「あわれ」の感情を抜きにして、この話の全体を論じることはできないのである。

    P294
    キリスト教の唯一絶対神に対して、わが国には絶対無の神が存在している。唯一絶対神に支えられた西洋人の自我は、男性像によってあらわされると述べたが、おそらく、日本人の自我は「無」によって表わされる。

  • 日本の物語は、基本的に英雄の冒険潭ではない。結婚をハッピーエンドとするものが非常に少ない……。言われると、ああ確かにそうだなあと感じます。
    昔話や神話に隠れた古の日本人の世界観が、類型的な物語群や西洋・アフリカ系の昔話との対比によって浮かび上がる。幼い頃に見聞いた昔話の謎解きを聞いているようでとてもおもしろいです。
    ただ、自分の理解不足でカバーしきれなかったところが有るので、この学問をしっかりと学んでからリベンジしたい一冊。★大学図書館

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