文化大革命十年史 下 (岩波現代文庫 学術74)

  • 岩波書店 (2002年1月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784006000745

みんなの感想まとめ

政治的権力闘争とその影響を描いた本書は、文化大革命の終焉を迎える過程を詳細に描写しています。林彪の死後、四人組の影響力が増し、特に江青の過激な言動が際立つ中、毛沢東や周恩来の死によって指導者の座が空白...

感想・レビュー・書評

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  • 陰謀にも、粛清にもいささか辟易して、いったんは読書のモチベーションが枯れ果てたが、稲羽白菟のミステリー『造反有理 文革楼の殺人』が出版されたことで、かろうじて本書は積読お蔵入りを免れた。
    考えてみれば、本書のようなあまり普通の読書人が手に取らないような本を読むことこそが僕のような偏屈者の仕事なのかもしれない。/


    著者の厳家其(ゲン・カキ。キは示すへんに其。)は、1942年江蘇省武進生まれ。中国科学技術大学卒。中国社会科学院政治学研究所所長などを歴任。89年の天安門事件の際、民主化を要求し、その後フランス、米国に亡命。94年以降ニューヨーク在住。
    高皐(コウ・コウ)は、1942年四川省重慶生まれ。北京第二医学院卒。69年厳氏と結婚。中国科学院医師を経て、天安門事件後、夫とともに亡命。/


    ◯「第一次天安門事件(四五天安門事件)」:
    1976年1月、多くの民衆に慕われていた周恩来総理が死去すると、民衆の間から病身の周総理を死ぬまで攻撃していた四人組への反感が噴出する。

    【天安門広場には千万にも上る闘いを覚悟した群衆が集結した。老人、子ども、労働者、農民、学生、幹部がおり、彼らは花輪と哀悼の幟を送り、檄文を書き、詩詞を写し取り、互いに感化されて一致団結した。】(本書。【】内、以下同様。)

    4月5日、群衆は警察と民兵によって暴力的に鎮圧された。/


    ◯「北京の春」:
    1976年10月、四人組が打倒される。
    78年5月、『光明日報』は論文「実践は真理を検証する唯一の基準である」を掲載。
    この論文は「すべての思想と理論は必ずや実践によって検証されなければならない」と述べている。(「実事求是」)
    この論文は胡耀邦(党中央委員。当時。)の支持によって発表されたもの。

    ・「傷痕文学」:文革と社会の暗黒面を暴露した作品。盧新華『傷痕』、鄭義『楓』など。

    ・「西単(シータン)の民主の壁」:
    78年11月、西長安街に面する西単の塀に数百数千枚の壁新聞、スローガンが貼り出され、天安門事件の責任追及、文革の被害者の名誉回復、政治改革などを要求した。

    ・厳家其らが雑誌『北京の春』を発行。

    ・魏京生らが雑誌『探索』を発行。

    【中国と世界の歴史の現実を探究の基礎とするよう努力し、ある種の理論が絶対に正しいということは認めないし、ある種の人物が絶対に正しいということも認めない。すべての理論は(略)すべて本誌における討論の対象であり、また分析、探究の手段とすることができる」】(雑誌『探索』発刊の辞。)/

    ・79年3月、鄧小平(副主席。当時。)「四つの基本原則の堅持」(①社会主義の道を堅持すること②プロレタリア独裁を堅持すること③共産党の指導を堅持すること④マルクス・レーニン主義、毛沢東思想を堅持すること)演説。➡︎『北京の春』の終焉。/


    文化大革命は、毛沢東や四人組(江青、張春橋、姚文元、王洪文を指す。)などの権力者が権力闘争のために文化の分野で大衆運動を利用したものだ。
    1966年に始まり1976年まで続いたこの人類史上の愚行の責任を、毛沢東や四人組らだけに負わせて簡単に片付けてしまえば、枕を高くして眠ることができるかもしれない。
    だが、因果な性分に生まれついた僕にはそれはできない。
    半ばは権力者の思惑で踊らせられながらも、嬉々として「人間狩り」にうち興じていた人々の叫び声が耳について離れないのだ。
    そして、それはたぶん、もし風が吹けば真っ先に吊るされるのが、生産性至上主義社会の黒五類(文革期などに、労働者階級の敵として排撃・迫害された5つの政治的階層(地主、富農、反革命分子、悪質分子、右派分子)のこと。)である怠け者の僕自身だからなのだ。/


    本書を読んでいて僕の年代の者が真っ先に思い出すのは、連合赤軍事件ではないだろうか?
    当時耳にした「総括」、「自己批判」、「プチブル的」などの言葉の陰惨な響きを思い出す。
    永田洋子は、おそらく間違いなく四人組の江青をロールモデルにしていたのではないか?/


    文革を描いた映画と言えば、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』だ。
    主人公の京劇役者である段小樓と程蝶衣の二人も、文革によって栄光の絶頂から地べたへと叩き落とされた者たちだった。
    ついでなので、同じく文革を描いた張芸謀(チャン・イーモウ)監督の『活きる』(1994年)も観てみた。
    充分満足することのできる感動作だった。
    主人公の娘が出産するシーンで、医師がすべて打倒されてしまっていて、若い看護師たちしかいなくなってしまっており、容態の急変に対応できないという辺りに文革への批判を見た。
    毛沢東の大躍進政策が描かれているが、その負の部分(鉄鋼増産のために大量の農機具等を供出させ、粗悪な銑鉄に変えてしまったので、大飢饉が発生し推定3500万 〜5500万人が死亡したという事実。)は、描かれてはいなかった。
    おそらく、文革への批判が許されるようになっても、まだ教祖様への批判までは許されていないのだろう。
    この映画と出会えたことで、原作者である余華の小説への足掛かりもつかめ、思いがけない収穫となった。/


    また、王克平(ワン・クーピン)の彫刻『沈黙』も忘れ難い。ワン・クーピンは1949年生まれの彫刻家。文革を批判し、1979年に芸術集団「星星画会」を結成。「星星画会」は表現の自由を求めて結成された美術団体で、無許可で展覧会を開くなどして、その活動は政治の民主化や芸術の自由化を求めるデモへと発展。中国当局の圧力により活動を停止させられ、主要メンバーは国外に散った。クーピンも1984年にフランスへ移住し、以降フランスを拠点に活動。/


    ◯フランスにおける「毛沢東思想」:
    1968年の五月革命にもマオイストの影響があるとされ、フランスのマオイスムの流行は、スターリン批判によるソ連型共産主義の失墜とそれに代わるユートピアを求める運動の中で中国モデルが誇大視されたもの。マオイスト運動はフランス共産党のソ連擁護に対する反動として起こり、アルチュセールらも参加した。
    五月革命以後、ベニ・レヴィによってGP(プロレタリア左派)が結成され、GPによる移民労働者の支援活動は、サルトルやゴダール、ミシェル・フーコーらによって支持された。(Wikipedia より。)/


    ソ、ソ、ソクラテスも、プラトンも、
    ゴ、ゴ、ゴダールも、サルトルも、
    みんな間違えて大きくなった!

    この世に生をうけて七十有余年、間違いに間違いを重ねて生きてきたこの僕に言わせてもらうならば、戦士も、商人も、遊び人も、勇者、賢者、スーパースターも、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、車掌さん、お嫁さんも、人はみな必ずや間違う。
    だとすれば、いかに早く間違いに気づきそこから抜け出すかが死活的に重要になってくる。
    この作業には、おそらく権威主義体制は最も不向きである。
    なぜなら、そこでは言論が圧殺されてしまうからだ。
    このことは、現在のロシアの惨状を見れば明らかだろう。
    肝要なのは、パレーシア(身の危険を犯して、真実を語ること。)に耳を傾けることであり、焚書坑儒やスパイ・魔女呼ばわり、吊しあげ、殴打、拘束、拘禁、停波などはもっての外だ。/


    たぶん、この手の手法とこのような愚行は、これからも世界中で際限もなく繰り返されていくのだろう。
    権力者は、自ら風を起こしてはその勢いに乗って数々の愚行をなすだろう。
    歴史を振り返っても、フランス革命、ロシア革命、イギリスのブレグジット、トランプ大統領のアメリカ、現代日本の翼賛体制などと枚挙にいとまがない。
    そして、吹きまくる風に乗ってなされた数々の愚行の負の遺産を精算することがいかに大変かは誰も知らないのだ。/


    ◯参考:『毛沢東語録』と毛沢東思想:
    当時一世を風靡した『毛語録』ではあるが、今となってはいささか古びてしまったので、下に現代語訳(〈〉内)を記載した。

    ・「権力は銃口から生まれる(槍桿子裡面出政権)」
    〈権力はキャタピラーから生まれる〉
    六四天安門事件を戦車で鎮圧したからこそ、今の超格差社会があるのだ。/

    ・ 「百花斉放、百家争鳴」
    〈百花斉放、百家争鳴、百家拘禁〉 

    《『「獄」という字—両側は「犬」で 真ん中は「言葉」だ 
    中国の牢獄は 人間ではなく 言論を監禁するものなのだ』(陳 邁平)》(翰光『亡命 遥かなり天安門』(岩波書店/2011年)/

    ・ 「人民に奉仕する(為人民服務)」
    〈人民を酷使する〉
    「働かせて働かせて働かせて働かせてまいらせます」/

    ・ 「帝国主義はすべて紙の虎である」
    〈共産主義はすべてお題目である〉
    信ずる者は救われますって、これホントにホント!ホンマでっせ〜!/


    みなさん、どうでしたか?
    コワイですね〜。
    それでは、「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」。

  •  林彪死亡後から鄧小平が復権するまでの過程が最終巻で語られる。林彪の事故によって、四人組の影響力が増すようになり、とりわけ江青の言動は過激した。その後、毛沢東、周恩来と指導者が亡くなったことで、トップの座が空いた。そのタイミングを見計らって、四人組は自分たちが毛沢東の意志を継ぐ後継者だと主張したが、毛沢東は亡くなる直前、華国鋒が自身の後継者だと告げた。その後、華国鋒が中国共産党の指導者として君臨したとき、四人組を対処せねばと思い、江青一派をいっせいに逮捕した。彼らを逮捕したことで、毛沢東から始まる文化大革命に完全な終止符を打った。それと同時に、華国鋒は鄧小平を復権するように要請した。これにより、鄧小平は再び政治の表舞台に立った。その後、華国鋒の運営の不備から失脚するようになり、代わりに鄧小平と側近たちで政治運営を行い、文化大革命で疲弊した中国を立て直した。このように、10年間にわたって起きた文化大革命は、中国共産党の権力争いのために、中国全土を混乱へと導き、多くの人々が犠牲になった。大衆を巻き込んで社会を動かした例は日本を含めて数多くあるが、これほど血みどろな争いはまれなことであろう。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(立花隆選)120
    現代史

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