天皇の肖像 (岩波現代文庫 学術 76)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006000769

作品紹介・あらすじ

明治維新後の近代国家体制確立に向けて、天皇をどう見せるかという「権力の視覚化」は大きな問題だった。天皇は全国を巡幸することで民衆にとって見えるものとなり、さらに御真影がつくられる。理想の近代国家君主の肖像をつくりあげるためにどのような方法がとられたのか。近代日本史研究に大きな衝撃を与えた画期的著作。

感想・レビュー・書評

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  • 近代国家のなかの天皇という存在のありかたを、「御真影」とそれを取り巻くまなざしの分析を通して明らかにしている本です。

    宮廷の内に身を置いていた明治天皇は、日本が西洋近代と直面するなかで、民衆の視線に対して姿を見せることが求められるようになり、キヨソーネによる肖像画をもとにしたその写真が下付され、近代国家としての日本の統合に重要な役割を果たすようになっていきます。同時に著者は、前近代におけるメディアとしての錦絵、あるいは洋服や写真といった近代文明の利器が、こうした天皇をめぐる権力作用の織り成す空間のなかでどのような意義をもっていたのかということを解き明かしています。

    やや結論が先行しているような印象もありますが、天皇の肖像というひとつの視点から近代国家としての日本のありかたを映し出す、興味深い内容だったように思います。

  • 【概要・粗筋】
    現代では考えられないが、民衆にとっては縁遠い存在であった。そこで、維新政府は「天皇の視覚化」することで、天皇制国家の確立を図る。本書は天皇の肖像、いわゆる「御真影」の生成、そして、その下付とその際に生じる儀礼の過程を通じて、日本社会がどのように変化していったかを明らかにする。


    【感想】
    もともと新書として発表されており、著者自身が「はじめに」で述べているように「驚くべき政治的歴史の物語り」とあるように、論証という意味ではやや弱い。

    本書を読んではじめて知ったのが、肖像画(ポートレイト)と肖像(エフィジー)に区別がされていること。両者の違いは「ポートレイトは余計な背景も小道具も取り除いて、対象そのものに迫り、エフィジーは背景も小道具も使って、いかにもそれらしく見せる手法をとる(P126)」と述べられている。だから、御真影は肖像画ではなく、あくまで肖像ということになる。肖像という言葉は本書のタイトルで使われているから、両者を区別するのは重要。

    写真という近代を代表するメディアが、前近代的とも云える天皇の聖性やそれを生み出すための儀式に使われたというのが、歴史の不思議な皮肉のように感じた。

  • 「御真影」って本当良くできたシステムだな、と感心する反面、政治って恐ろしいなと思う本。

  • ¥105

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著者プロフィール

1928〜2011年。哲学者。旧制第三高等学校を経て、東京大学文学部美学科を卒業。千葉大学教授、神戸芸術工科大学客員教授などを歴任。1960年代半ばから、建築・写真・現代美術を対象とする先鋭的な批評活動を開始。1968年、中平卓馬らと写真表現を焦点とした「思想のための挑発的資料」である雑誌『プロヴォーク』を創刊。翌年第3号で廃刊するも、その実験的試みの軌跡を編著『まずたしからしさの世界を捨てろ』(田畑書店、1970)にまとめる。思考と表現の目まぐるしい変貌の経験をみずから相対化し、写真・建築・空間・家具・書物・映像を包括的に論じた評論集『ことばのない思考』(田畑書店、1972)によって批評家としての第一歩をしるす。現象学と記号論を駆使して人間の生と居住空間の複雑なかかわりを考察した『生きられた家』(田畑書店、1976/岩波現代文庫、2001/青土社、2019)が最初の主著となった。この本は多木の日常経験の深まりに応じて、二度の重要な改訂が後に行われている。視線という概念を立てて芸術や文化を読み解く歴史哲学的作業を『眼の隠喩』(青土社、1982/ちくま学芸文庫、2008)にて本格的に開始。この思考の系列は、身体論や政治美学的考察と相俟って『欲望の修辞学』(1987)、『もし世界の声が聴こえたら』(2002)、『死の鏡』(2004)、『進歩とカタストロフィ』(2005、以上青土社)、『「もの」の詩学』、『神話なき世界の芸術家』(1994)、『シジフォスの笑い』(1997、以上岩波書店)などの著作に結晶した。日本や西欧の近代精神史を図像学的な方法で鮮かに分析した『天皇の肖像』(岩波新書、1988)やキャプテン・クック三部作『船がゆく』、『船とともに』、『最後の航海』(新書館、1998〜2003)などもある。1990年代半ば以降は、新書という形で諸事象の哲学的意味を論じた『ヌード写真』、『都市の政治学』、『戦争論』、『肖像写真』(以上岩波新書)、『スポーツを考える』(ちくま新書)などを次々と著した。生前最後の著作は、敬愛する4人の現代芸術家を論じた小著『表象の多面体』(青土社、2009)。没後出版として『トリノ 夢とカタストロフィーの彼方へ』(BEARLIN、2012)、『視線とテクスト』(青土社、2013)、『映像の歴史哲学』(みすず書房、2013)がある。2020年に初の建築写真集『建築のことばを探す 多木浩二の建築写真』を刊行した。

「2021年 『未来派 百年後を羨望した芸術家たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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