- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006000929
作品紹介・あらすじ
日本の近代史の画期をなした岩倉使節団(明治四‐六年)の見聞とその意義を、随行した久米邦武の名著『米欧回覧実記』(明治十一年)によってたどり論じる。この以後の日本近代が直面することになる諸課題を検討し、そのアジア認識や日本観の射程を測りながら、使節団の歴史的意義を大きな視野の中でコンパクトに論じる。
感想・レビュー・書評
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明治6年政変で袂を分けたものが使節団の経験にある。維新後日本の国家建設方針を決めたといっても過言ではないその経験を使節団の足取りとともに追体験していく。
米英の工業的、資本主義的な進歩を遥か遠くに見ながらも、日本のとるべき現実的方針として後進プロイセンを範にとる判断をした。日本の国内事情を考慮すると、使節団に参加した同時代の人々の気持がわかる気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(後で書きます。年表、メンバー表、参考文献あり)
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『米欧回覧実記』の古典的研究…であるが、研究のようでありながら、旅行記的な色合いも見せるなど、けっこう独特の叙述のように思える。
作者の岩倉使節団の評価で印象的なのは、使節団が西洋の価値観を至上主義としていて、そこから外れるもの(たとえばアジアで粗暴にふるまう西洋人など)は、「西洋の価値観から外れるもの」として捉えていたという評価。これが日本の脱亜入欧へとつながるという見立てが印象に残った。一方で中江兆民などは、西洋の価値観のなかにも差別や排除の理論を読み取っているという。
もうひとつ印象的なのは、女性に対する使節団の価値観が非常に男尊女卑的だという話。『米欧回覧実記』は、アメリカやイギリスにおいて、男性が女性をエスコートするような文化をきわめて否定的にとらえているという点が、印象に残った。
明治維新というと、西洋の影響を受けた新しい社会を構想する偉人たちが古いものをぶっ壊して、今の日本の基礎をつくったという単純な話に収斂しがちだが、本書を読むと、明治維新を引っ張った人たちもまた、ある種の価値観や差別の問題を抱えていた、ということがよくわかる。 -
・岩倉使節団を訪問別(アメリカ、先進ヨーロッパ、後進ヨーロッパ、小国)に分けて評価する切り口が興味深い。
最初から、プロシア型を目指していたわけでなく、客観的に同じ目線でこのグループ郡を評価していた事実が良く分かる。
・忘れてはならないのは、北欧などの”小国”を訪問していること。『小国が大国の間に介在して自主をまっとうすることができるのは、その国民性が「強剛」で、生業に励み、国を愛し、「不撓の精神」を持っているから。使節団は、これら小国の「自主の気概」に感じ入っているのである。』
・ビスマルクとモルトケからの影響といえば、『万国公法よりも力の論理』の認識。確かに幕末の薩長についても『万国公法』への呪縛があった。 -
久米邦武著「米欧回覧実記」を元にして書かれた著書。原本の記述がそのまま生かされているため分り易くおもしろいです。
エレベーターの記述など、明治の人達が可愛く思えて仕方がなくなります(笑)