- Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006001124
感想・レビュー・書評
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[ 内容 ]
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硬直した左翼史観と反動的な歴史学に抗し、科学的で血の通った近代史研究をめざした歴史家井上清の軌跡は、学界の狭い枠を超えた広範な分野におよぶ。
第1巻は戦前から単行本未収録論考でたどる明治維新論集。
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国会開設運動と自由党こそが自由民権運動の本質である。
民衆の自由と権利の拡大に視点を据え、確固とした史観で戦後歴史学の方向を決定づけた論争的諸論文と、郷里高知の民権運動を語った講演など未収録論考を集成。
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自由民権運動を圧殺し、極東の列強間の対立を利用して、アジアで唯一の独立国となった日本は、日清・日露戦争から敗戦に至るまで、軍国主義化と侵略を推し進めた。
著者は戦後の再軍備反対運動などの平和運動に呼応して、明治以来の軍隊と軍国主義の本質を明らかにする研究を次々に発表する。
主要な論考を集成。
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昭和天皇裕仁の戦争責任は明白である―天皇制の解明が日本社会の本当の民主化へ通ずるという問題意識から研究を進め、信頼できる史料に拠って中国侵略戦争から対米英戦争、敗戦に至る過程での昭和天皇の役割を明らかにし、その実像をリアルに描き出した。
この問題を考える際の最も基本となる文献。
[ 目次 ]
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現代史概説(一九六三)
日本の朝鮮侵略と帝国主義(一九六八)
日本帝国主義とアジア(一九五三)
日露戦争について(一九五八)―下村・藤村氏にたいする反批判
「満州」侵略(一九七六)
近代日本史における日中戦争(一九八八)
法の論理と歴史の論理(一九四八)―極東裁判と天皇の戦争責任
槇村浩と高知県の反帝・革命運動(一九八四)
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天皇の戦争責任(一九七五)(天皇の権力および権威と戦争責任;国務大臣・内大臣・陸海軍首脳の任免と天皇;内政外交における天皇のイニシアチヴ;天皇裕仁と中国侵略戦争;天皇裕仁が対米英戦を決定した;天皇の戦争指導と降伏における役割;天皇裕仁の戦争責任は明らかである)
『昭和天皇独白録』に見る裕仁天皇(一九九一)
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
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井上清(1913〜2001)の岩波現代文庫の論集は実はまだ読んでいなかった。
『条約改正』もまだ読んでいないことは内緒である。
自由民権運動、なかんづく中江兆民に対して、「民主主義は民衆の運動で革命的に勝ち取るものなんだ!」という理想を投影する姿勢には、やはり時代を感じざるをえない。松浦玲による解説も「それをどう評価していいか困ってる」感が滲み出ている。
しかし困ってみせてもしょうがない、という気もする。戦後歴史学は犬も食えない、と否定してしまうのは簡単だけど、その否定は今の自分が50年後の誰かになされる類のものかもしれないのだ。問題はこの時代の研究から何を受け止めるか。ベタ的にも、メタ的にも。それを考えないといけないのだろうけど、難しい。