最新版 法人資本主義の構造 最新版 (岩波現代文庫 学術 138)

  • 岩波書店 (2005年1月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784006001384

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  • 筆者の奥村宏が「法人資本主義」というコンセプトで本を書き出版したのは1975年のこと。「最新版」である本書は2005年の発行なので、それから30年が経過している。
    法人資本主義は、会社所有・統治の形態として、戦前の日本と戦後の日本を比較して、奥村が命名したもの。戦前の日本では三菱等を始めとした財閥が企業グループを形成しており、そういった企業グループの所有者であり経営者であったのは、財閥家、三菱で言えば岩崎家だった。戦後、財閥が解体されたが、戦後間もなくの頃の日本は貧しく、個人投資家は少なく、解体された旧財閥所属の株式は、個人ではなく「法人」が保有することとなった。一つは他の事業会社等であり、その後の「株式持ち合い」の原点である。もう一つは銀行が保有するものであり、「メインバンク制度」等と呼ばれた。これら株主は、経営が危機的状況にない場合には、経営にあまり口出しをしない、忍耐強い株主であった。そういったこともあり、日本の企業は、短期的な視点ではなく、長期的な視点で経営に取り組むことが出来、日本企業の、ひいては、日本という国の成長を実現することが出来た、と説明されることがある。
    ところが、時代は更に変化する。バブル崩壊後、今に至るまでの流れは、直接金融化であり、株式持ち合いの解消、メインバンク制の衰退、替わって、機関投資家、特に外国人投資家が「物言う株主」として台頭してきたと言われている。そういった、会社の所有・統治の構造の変化は、会社経営に影響を与えないはずがなく、日本企業も、株主重視・短期利益重視となったと説明されることがある。

    ここからは私見であるが、本書の最新版が2005年に発行されてから20年が経過する。その間、上記したように、会社の所有・統治の構造は変わったし、政府も政策として株主重視方針、具体的な政策としてはコーポレートガバナンスコード(実際には證券所であるが)の制定等を行っている。
    そのように、会社の所有・統治の構造が変わることが、良いことなのか、悪いことなのかは、自分にはよく判断できない。ただ、そのように構造が変わっていき、政府もその構造変化を後押しするような政策を行って、企業経営は、何か本質的に変わったのだろうか。投資を抑制し、非正規労働者を増やし、社員の給料を抑制し、法人税減税により利益と内部留保は増えたが、それだけのことだったとしか思えないとの主張をする識者も多いし、自分も「そうかもしれないな」とも思う。

    所有・統治と企業経営の形態や、その結果としての業績との関係は、経営学では研究蓄積の厚い分野である。私自身は、そんなにこの分野の文献・論文を読んでいないが、本書を読んで、興味が湧いてきたので、少し他の文献・論文も読んでみようと思う。

  • 日本企業の株式持合構造が形成された明治時代からの歴史的経緯を、詳しく解説する。財閥グループの株主持合は戦後の財閥解体が原因だと思っていたが、戦前から存在しており、戦後も、安定株主工作や高株価経営の流行などいくつかの要因があった。
    日本の株式会社は進んだヨーロッパのシステムを相当遅れて導入したものだと思っていたが、ヨーロッパでも、株式会社が特許主義から近代的な準則主義に変わったのは19世紀半ばであり、明治の株式会社設立はヨーロッパのそれとはそんなに時期的な差はなかったというのは意外だった。日本というのは、いうほど後進国でもなかったのだ。
    しかし、株式会社の原則を無視した株式持合構造は欧米にみられない現象であり、これが日本経済の成長の脚を引っ張っているのだとしたら、むしろ今の会社の方が欧米より立ち遅れてしまっているのではないかという焦燥に駆られてしまう。

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著者プロフィール

奥村 宏(オクムラ ヒロシ)
会社学研究家
1930年生まれ。新聞記者、研究所員、大学教授を経て、現在は会社学研究家。
著書に、『日本の株式会社』『法人資本主義の運命』『無責任資本主義』『東電解体』『パナソニックは終わるのか』『会社の哲学』(以上、東洋経済新報社)、『会社本位主義は崩れるか』『株式会社に社会的責任はあるか』(以上、岩波書店)、『エンロンの衝撃』『会社はどこへ行く』(以上、NTT出版)、『三菱とは何か』(太田出版)、『会社をどう変えるか』(筑摩書房)、『株のからくり』『経済学は死んだのか』(以上、平凡社)、『会社学入門』『徹底検証 日本の電力会社』(以上、七つ森書館)などがある。

「2015年 『資本主義という病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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