はじまりのレーニン (岩波現代文庫 学術148)

  • 岩波書店 (2005年6月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784006001483

みんなの感想まとめ

思想の深淵を探る本書では、レーニンの哲学的可能性を独自の視点から掘り起こしています。著者は、レーニンの「物質」を観念の「外部」と捉え、ポストモダン思想に基づく新たな解釈を展開。これにより、物質の「運動...

感想・レビュー・書評

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  • レーニンの思想のうちに秘められた哲学的可能性を掘り起こそうとする、著者独自の解釈が展開されている本です。

    レーニンの「哲学」というと、『マッハと経験批判論』に代表される素朴な反映論のように考えられていますが、著者はレーニンの考える「物質」とは観念の「外部」だと解釈しています。こうした解釈はおそらく過剰な「深読み」ではあるのでしょうが、ポストモダン思想におけるマルクス解釈にのっとったもので、この分野に興味のある読者にはある程度なじみのある議論だと思われます。著者自身も『切片曲線論』(中公文庫)において、古代ギリシアの原子論における「クリナメン」に注目していましたが、それと同型の議論が展開されています。

    さらに著者は、ヘーゲルやベーメの思想、さらにはマルクスの価値形態論にかんするレーニンの解釈を検討して、物質の「運動」が商品社会というコスモスの「底」を露呈させる可能性を追求しています。

    本書は1994年に刊行された本を文庫化したものですが、1980年代から90年代にかけて日本のポストモダン・ブームを牽引した、柄谷行人、岩井克人、浅田彰、そして著者などの論者たちが立脚していた共通のトポスを知ることができたという意味で、興味深く読みました。

  • ヤコブ・ベーメについては、中沢新一の『はじまりのレーニン』が面白い。一般的な日本人にとっては、あれが一番の入門書じゃないかな?

  • ソ連崩壊で今時流行らない「レーニン」をオウム事件(私が読んだのは岩波同時代ライブラリーで、確か事件前だったが)で評判を下げた「中沢新一」が伝記風にレーニンの笑いに潜む唯物史観を分析しています。

  • いやはや、こういったものは学生時代に読んどくもんだ。

    さらなるめも
    ・クルプスカヤ
    ・ベーメとヘーゲル

  • レーニンの唯物論を独自に掘り下げる。

  • 心に残ったことば
    ・この目的を達するためには、・・・ヘーゲル弁証法−すなわちマルクスが、彼の『資本論』・・・のなかで実際に適用したしかもみごとに適用したあの弁証法−の唯物論的見地からする系統的研究を組織しなければならない・・・誤りをおかさないのは、なにもしないものだけである・・・(122p)
    ・商品社会のコスモスにたいして、まるで違和感をいだくことのない意識には、資本主義社会についてのこういう分析をできないし、またできたとしても、そんなことはたいして意味をもたない。そういう意識は、いってみれば、商品という「底」の内側にいても、そのことに気がつかず、自分たちの意識の「底」をつくっているもののむこうに、異質な運動をおこなうリアルが実在することを感知できないのだ。ところが、マルクスの知性は、商品社会のその「底」をはっきりつかみだそうとした。彼の精神は、商品の「底」のむこう側にひろがっている、異質なリアルの実在を、たしかに感じ取っていたはずだ。(180p)
    ・物質は「底」がなく、根拠もなく、まったき充実としての運動を続けている。その運動の中から自然が生まれ、その自然は大きな脳をもった人間をつくりだす。この脳の動きは、自然の秩序にはおさまらない、異質性をそなえている。そこで人間は、自然とは異なる、歴史をつくりだすことになるが、実現された歴史のなかで人間はいつも疎外された状態にある。(211p)
    ・死はすべてのおわりではない。死をとおして、人間はふたたびその「物質」の運動のなかにもどっていく。だから、子どもたちは、こううたうことができたのだ・・・レーニンは、恐がらずに墓へ行くのだ、と。(220,221p)

  • 崩壊したソ連、そのはじまりの頃には、理想としての共産世界を生み出す実践のための、哲学的な理論武装化が行われていた。レーニンが革命を推し進めながら考えていたその思索のあとを辿って見せてくれる。マルクスはもちろん、ヘーゲルやベーメといった人を研究しそこに見ていたもの。哲学の知識を多く持たないので難しいが魅力ある文章・切り口で興味深く読めました。

  • 理解できるほどの物知りではありません。
    ですが、レーニンと言う人物の歴史的な姿、写真のイメージから少しばかり奥に入り込む事ができた気がします。

    よく笑うレーニン。

    そんな彼が考えた思想に少し感動しました。

    彼の後ろにはヘーゲル、マルクスと二人の巨匠の姿があった。

    彼の行った笑いを僕らは取り戻せるのだろうか?

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著者プロフィール

中沢新一 1950年、山梨県に生まれる。1972年東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。 南西諸島の民俗学調査、大衆芸能の記号論研究、チベット仏教の実践的研究などにたずさわる。主な論文に『斬り殺された異人』(『伝統と現代』第38号1975年)『街路の詩学—記号論分析にむけて』(『思想』1977年10月号)など。訳書にブーイサック『サーカス』(せりか書房1977年)アウエハント『鯰絵』(共訳・せりか書房1980年)など。中央大学教授、多摩美術大学芸術人類学研究所所長、明治大学野生の科学研究所所長などを歴任。現在は京都大学人と社会の未来研究院特任教授。著書に、『チベットのモーツァルト』『雪片曲線論』『森のバロック』『はじまりのレーニン』『フィロソフィア・ヤポニカ』『精霊の王』『僕の叔父さん 網野善彦』『アースダイバー』『鳥の仏教』『野生の科学』『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥 レヴィ=ストロース論』ほか多数。

「2026年 『丸石神』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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