「もの」の詩学: 家具、建築、都市のレトリック (岩波現代文庫 学術 153)
- 岩波書店 (2006年1月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006001537
作品紹介・あらすじ
身体の快楽が推し進めた椅子の変容の歴史、「もの」の蒐集から仏革命をへて美術館・博覧会を作り上げていったブルジョワジーのイデオロギー、キッチュ王ルートヴィヒ二世が心血を注いで建てたまがいものの城、巨大主義に取り憑かれたヒトラーの建築都市。「もの」に凝縮されている文化や社会の無意識を探る記号論的思考の労作。
感想・レビュー・書評
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記号論の観点から欧州の椅子や建築の歴史的な発展について論じたもので、なるほどーそういう見方ができるのか、と思うことが多かった。第1章は比較的読みやすい。背もたれの角度についてそんなに深く考えるとは…!美の尺度が大衆化とともに金銭的に評価されるようになったというくだりも面白かった。
全体的に哲学(者)の前提知識が必要で、少し読みづらかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者は造形関係の評論家らしく、この本では椅子やベッドなどの家具、コレクション、城などについて語られている。
この人はどうやらポストモダンの人のようだ。やたらとフランス思想家の人名が言及され、文体は軽く、深層を飛び越えて上空飛行ばかりしている。山口昌男さんの本によく似ている。その学識は尊敬するけど、結局何を言おうとしているのか、著者の心の動きがつかめない。
そのため、最初おもしろい本かなと思ったが、だんだんつまらなくなってしまった。
この人の本は、たぶんもう読まないだろう。 -
昨年の4月に82歳で亡くなった批評家、多木浩二の著作を初めて通読したのは大学時代に課題図書だった『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』だが、それとは関係なく、多木は僕にとっては60年代後半の伝説的写真同人誌『provoke』の人で、それとも関係なく、本書は、「もの」とその背景にある精神史を読み解く4本の論考から成っていて、内容はざっと次の通り。「17、8世紀西洋における家具と室内の変化」「18世紀に起こる収集から美術館への変化、フランス革命と美術館と博覧会」「ルートヴィヒ二世の城とキッチュの発生」「バウハウスとヒトラーの建築と独裁制」。多木の文章は、内容に比べて文体が硬質で難解な印象を与える。少なくとも、すらすら読めるというタイプの文章ではないが、そうした文体に彼の知的鋭意を感じることができて、僕は嫌いではない。そして、やはりどこかしらベンヤミンを思い出す。
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これは終章が解題になってるので,そこから読んだ方がいいかもしれない.にしても言いたい事はわかるのだが,この語り口でないといけないか.もっと簡潔明晰に書けないか.
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「もの」には必ずそれが生み出されるに至った背景がある。
著者はヴァルター・ベンヤミンをして「物質的な事物の世界から人間、歴史、神話などを認識できる稀な思想家」と評しているが、それを実践しているのがこの本だ。一番小さな「家具」から始まり、美術館や城といった「建築」、そして「都市」とスケールを上げて解説している。
畑違いと言うこともあるが、全体的に難しい。文系の人たちはこういった本を読んで勉強しているんだろうか。
美術館と言うビルディングタイプが成立するに至った社会的変化、現実が生み出すフィクションとフィクションが規定する「理想の」姿、ヒトラー独裁の装置として用いられた都市の空間演出、などが面白いトピックだった。。