「もの」の詩学: 家具、建築、都市のレトリック (岩波現代文庫 学術 153)

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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006001537

作品紹介・あらすじ

身体の快楽が推し進めた椅子の変容の歴史、「もの」の蒐集から仏革命をへて美術館・博覧会を作り上げていったブルジョワジーのイデオロギー、キッチュ王ルートヴィヒ二世が心血を注いで建てたまがいものの城、巨大主義に取り憑かれたヒトラーの建築都市。「もの」に凝縮されている文化や社会の無意識を探る記号論的思考の労作。

感想・レビュー・書評

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  • 記号論の観点から欧州の椅子や建築の歴史的な発展について論じたもので、なるほどーそういう見方ができるのか、と思うことが多かった。第1章は比較的読みやすい。背もたれの角度についてそんなに深く考えるとは…!美の尺度が大衆化とともに金銭的に評価されるようになったというくだりも面白かった。
    全体的に哲学(者)の前提知識が必要で、少し読みづらかった。

  •  著者は造形関係の評論家らしく、この本では椅子やベッドなどの家具、コレクション、城などについて語られている。
     この人はどうやらポストモダンの人のようだ。やたらとフランス思想家の人名が言及され、文体は軽く、深層を飛び越えて上空飛行ばかりしている。山口昌男さんの本によく似ている。その学識は尊敬するけど、結局何を言おうとしているのか、著者の心の動きがつかめない。
     そのため、最初おもしろい本かなと思ったが、だんだんつまらなくなってしまった。
     この人の本は、たぶんもう読まないだろう。

  • 昨年の4月に82歳で亡くなった批評家、多木浩二の著作を初めて通読したのは大学時代に課題図書だった『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』だが、それとは関係なく、多木は僕にとっては60年代後半の伝説的写真同人誌『provoke』の人で、それとも関係なく、本書は、「もの」とその背景にある精神史を読み解く4本の論考から成っていて、内容はざっと次の通り。「17、8世紀西洋における家具と室内の変化」「18世紀に起こる収集から美術館への変化、フランス革命と美術館と博覧会」「ルートヴィヒ二世の城とキッチュの発生」「バウハウスとヒトラーの建築と独裁制」。多木の文章は、内容に比べて文体が硬質で難解な印象を与える。少なくとも、すらすら読めるというタイプの文章ではないが、そうした文体に彼の知的鋭意を感じることができて、僕は嫌いではない。そして、やはりどこかしらベンヤミンを思い出す。

  • これは終章が解題になってるので,そこから読んだ方がいいかもしれない.にしても言いたい事はわかるのだが,この語り口でないといけないか.もっと簡潔明晰に書けないか.

  • 「もの」には必ずそれが生み出されるに至った背景がある。
    著者はヴァルター・ベンヤミンをして「物質的な事物の世界から人間、歴史、神話などを認識できる稀な思想家」と評しているが、それを実践しているのがこの本だ。一番小さな「家具」から始まり、美術館や城といった「建築」、そして「都市」とスケールを上げて解説している。

    畑違いと言うこともあるが、全体的に難しい。文系の人たちはこういった本を読んで勉強しているんだろうか。

    美術館と言うビルディングタイプが成立するに至った社会的変化、現実が生み出すフィクションとフィクションが規定する「理想の」姿、ヒトラー独裁の装置として用いられた都市の空間演出、などが面白いトピックだった。。

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著者プロフィール

1928〜2011年。哲学者。旧制第三高等学校を経て、東京大学文学部美学科を卒業。千葉大学教授、神戸芸術工科大学客員教授などを歴任。1960年代半ばから、建築・写真・現代美術を対象とする先鋭的な批評活動を開始。1968年、中平卓馬らと写真表現を焦点とした「思想のための挑発的資料」である雑誌『プロヴォーク』を創刊。翌年第3号で廃刊するも、その実験的試みの軌跡を編著『まずたしからしさの世界を捨てろ』(田畑書店、1970)にまとめる。思考と表現の目まぐるしい変貌の経験をみずから相対化し、写真・建築・空間・家具・書物・映像を包括的に論じた評論集『ことばのない思考』(田畑書店、1972)によって批評家としての第一歩をしるす。現象学と記号論を駆使して人間の生と居住空間の複雑なかかわりを考察した『生きられた家』(田畑書店、1976/岩波現代文庫、2001/青土社、2019)が最初の主著となった。この本は多木の日常経験の深まりに応じて、二度の重要な改訂が後に行われている。視線という概念を立てて芸術や文化を読み解く歴史哲学的作業を『眼の隠喩』(青土社、1982/ちくま学芸文庫、2008)にて本格的に開始。この思考の系列は、身体論や政治美学的考察と相俟って『欲望の修辞学』(1987)、『もし世界の声が聴こえたら』(2002)、『死の鏡』(2004)、『進歩とカタストロフィ』(2005、以上青土社)、『「もの」の詩学』、『神話なき世界の芸術家』(1994)、『シジフォスの笑い』(1997、以上岩波書店)などの著作に結晶した。日本や西欧の近代精神史を図像学的な方法で鮮かに分析した『天皇の肖像』(岩波新書、1988)やキャプテン・クック三部作『船がゆく』、『船とともに』、『最後の航海』(新書館、1998〜2003)などもある。1990年代半ば以降は、新書という形で諸事象の哲学的意味を論じた『ヌード写真』、『都市の政治学』、『戦争論』、『肖像写真』(以上岩波新書)、『スポーツを考える』(ちくま新書)などを次々と著した。生前最後の著作は、敬愛する4人の現代芸術家を論じた小著『表象の多面体』(青土社、2009)。没後出版として『トリノ 夢とカタストロフィーの彼方へ』(BEARLIN、2012)、『視線とテクスト』(青土社、2013)、『映像の歴史哲学』(みすず書房、2013)がある。2020年に初の建築写真集『建築のことばを探す 多木浩二の建築写真』を刊行した。

「2021年 『未来派 百年後を羨望した芸術家たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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