空間―機能から様相へ (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006001902

感想・レビュー・書評

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  • 文庫でこの本が読めることに感謝、岩波様のご配慮には尊敬します。最近では手に入り辛い建築書の一つだったし、中古で買うと高いしで、なかなか読み辛い一冊だった。

     原さんの建築を考える上で、内面から知るにはとっておきの一冊であることには間違いない。またそれ以上に、近代と現代を繋ぐ節目の本としての役割を重要視したい。
    以前、以後の境においてどのようなことが注目され、現在では何が廃れ、何が残り、何が生まれたか?比較、発見する対象として非常に重宝されることだろう。
     しかし、建築以外の人間が読むに耐えるものかは個人的には謎。哲学が好きな人なら大丈夫か?

     まず均質空間に対する考え方は、ミシェル・フーコーの監獄の誕生を待たずして、すでに建築サイドの問題点から俗に文学サイドが言う近代空間の輪郭を描き出している。重要なのはそれを設計者である著者が解き明かしているところ=実践への転換をそこから行なおうとしていること。そして建築の言葉に哲学の言葉がやや翻訳されていること(原さんの言葉自身が哲学や数学などめんどくさい言葉に近いので建築のことば自身とは言い難いが)であると思う。建築サイドからの均質空間に対しては1956年にコーリン・ロウがシカゴフレームで、権力と空間との関係を薄らと紐解き始めている。本書はそれを上手く受け止めた上で身体的な次元にあった空間が、どのように制度やシステム、設備によって成立する空間へとシフトしていったかを書き綴っている。
     さらに言えばレムのビッグネスに通じる考え方やハーバードデザインスクールの黒本でのマーケットに関する考え方の基本はほぼ、この本の中で出そろっていると言っていいだろう。(ジャンクスペースはそれからさらに飛び出した射程を見ているように思うが)
    われわれは本を読んだ上で均質空間をどのように扱っていくべきなのか?考える必要があるだろう。この空間は世界の歯車の一つになっており、進化を続けているのだから。

    その後に続くの文章は、原さんが独自に均質空間に対して取った構えを文章にしたものとなる。

    「<部分と全体の論理>についてのブリコラージュ」では、部分から成立するボトムアップ型のモデルに対しての考察が現れる。世界の民家調査や引用をもとに下部からの相互作用によって引き起こされる秩序にありようを探っていく。その中で出て来る「広場」に対する「空地」と呼ばれる空間がそれぞれのモノとモノとの媒体となっていく様の可能性を見ている。同じような話しは青木淳さんの「原っぱと遊園地」や古谷誠章さんの「広場」と「空き地」へと繋がっていっているように思う。

    境界論では「空地」と周囲との関係に対して「谷」という考え方を導入する。自邸や京都駅などに見られる実空間での「谷」の展開以上に、<マイナスの中心>という「谷」に対しての評価は非常に重要なことだと思う。そして「谷」が持つ、動的な境界のイメージである。雨水が集まり、そして流れていく「力」の流れ。境界を物理学的に扱う可能性をそこには見て取れるだろう。それは当然、境界面へと移る。

    本のタイトルとなっている「機能から様相へ」はヤマトインターナショナルを初めとする作品に見られる表層の表れを問うものとなっている。表層とは外と内が均衡する薄い面である。その薄い面の上で光と反射をもとに刻々と移り変わる姿を示す建築の姿は、まさに様相へと変わりゆく建築のありようを示していただろう。そして外と内の均衡は光に限らず、今日では様々なものへと適応され、建築は自然へと近づいている。と同時に、新たな自然を生み出そうとしている。

    最終章「<非ず非ず>と日本の空間的伝統」では、「谷」において言われた「負」を「非ず」の論理として深めようとしている。

    notAとは、Aの本来の場所にAが位置していない状態を指す。したがって、notとは事象を動かす力なのである。notAは当然ながら本来のA ではありえない。このnotの力は、否定の否定において明らかになる。not(notA)にみる否定の否定は、AをAが本来ある場所にもどす力であり、この力こそ運動の原因である。
    p.284

    <非ず非ず>の否定の力は、動かす力ではなく、可能なる場所の出現を誘起する力である。
    p.285

    たとえば、シミュレーションにおける条件文を思い起こしてもらえればいいだろう。条件に合うものはある安定状態に移行し、そこに留まることを可能とする。しかし条件から外れるものは常に次なる方向へと動いていく可能性を内に秘める。「谷」の空間とはそのような常に次なる状況へと移る可能性を秘めた「多」なる空間のことである。本文中では、そのような状態に対して「中道」ではなくて「無境」という言葉を当てているが、まさに平均的な状況ではなくある特異点にいるという事をしっかりと意識した表現であると言えるだろう。

    http://d.hatena.ne.jp/ikebow/20090222

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  • 著名な建築家である著者は、工学的な知識はもとより、哲学、現象学、仏教学などの知見を駆使、長年にわたる集落調査の成果にも依拠しつつ、現代世界を支配してきた機能的な均質空間の支配に抗して、新しい「場」の理論を構想、設計の現場から21世紀の建築は<様相>に向かうというテーゼを発信する。
      ――2010/01/31

  • 1990年センター本試験。

  • 年度末にカフェポイントで買って未読

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著者プロフィール

建築家。1936年生まれ。1964年、東京大学大学院博士課程修了。1969 年、東京大学生産技術研究所助教授、1982 年より教授。1997 年、退官、同名誉教授。1970 年よりアトリエ・ファイ建築研究所と設計共同。1999 年より原広司+アトリエ・ファイ建築研究所所属。主な作品:田崎美術館(1986)、ヤマトインターナショナル(1986)、内子町立大瀬中学校(1992)、新梅田シティ(1993)、京都駅ビル(1997)、東京大学生産技術研究所(2001)、札幌ドーム(2001)など。主な著書:『建築に何が可能か』(学芸書林、1967)『空間〈機能から様相へ〉』(岩波現代文庫、2007)『集落への旅』(岩波新書、1987)『集落の教え100』(彰国社、1998)『Discrete City』(TOTO 出版、2004)『住居集合論Ⅰ・Ⅱ』(鹿島出版会、2006)『YET』(TOTO 出版、2009)など。

「2014年 『HIROSHI HARA : WALLPAPERS』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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