- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006002152
感想・レビュー・書評
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2011/06/09
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「憲法はどのようにして生まれるか」と問われたとき、一般的にはこう答えることができるだろう。「複雑なプロセスを経て生まれました」と。一般論として、それは間違いない。だとしたら、どう複雑なのか。本書は、日本国憲法誕生から施行に至る"複雑な"プロセスを丁寧に解き明かす。
巷間では、「押しつけ憲法」、「密室で、わずか9日間で作られた」、「素人がつくった」という理由で日本国憲法を否定する言説が少なくない。しかし本書は、そのような乱暴な言説を(結果的に)排除する。本書では、日本国憲法をめぐる日本政府とGHQのやりとり、日本国内のさまざまな意見、あるいはアメリカ政府とGHQの関係、さらにはGHQと極東委員会との角逐など様々な人間・勢力が出てくる。それらを読んでいると、「押しつけ憲法」論がいかに単純で、いい加減な議論かということがわかるだろう。
印象的なのは、芦田修正について、当初は芦田自身が「国際紛争以外の場合は戦力を保持できる」という意図を持っていなかったという箇所である。これは金森徳次郎ら少数の官僚が挿入したのだという。
憲法改正の論議が政治的課題となって久しい。そのような時だからこそ、日本国憲法がいかに誕生し、それをめぐっていかなる“闘争”があったかということを、ということを国民は歴史学の知見に基づいて知るべきだろう、と思う。 -
北川先生 推薦の人の本です