日本国憲法の誕生 (岩波現代文庫 学術 215)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006002152

感想・レビュー・書評

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  • 2011/06/09

  •  「憲法はどのようにして生まれるか」と問われたとき、一般的にはこう答えることができるだろう。「複雑なプロセスを経て生まれました」と。一般論として、それは間違いない。だとしたら、どう複雑なのか。本書は、日本国憲法誕生から施行に至る"複雑な"プロセスを丁寧に解き明かす。

     巷間では、「押しつけ憲法」、「密室で、わずか9日間で作られた」、「素人がつくった」という理由で日本国憲法を否定する言説が少なくない。しかし本書は、そのような乱暴な言説を(結果的に)排除する。本書では、日本国憲法をめぐる日本政府とGHQのやりとり、日本国内のさまざまな意見、あるいはアメリカ政府とGHQの関係、さらにはGHQと極東委員会との角逐など様々な人間・勢力が出てくる。それらを読んでいると、「押しつけ憲法」論がいかに単純で、いい加減な議論かということがわかるだろう。

    印象的なのは、芦田修正について、当初は芦田自身が「国際紛争以外の場合は戦力を保持できる」という意図を持っていなかったという箇所である。これは金森徳次郎ら少数の官僚が挿入したのだという。

     憲法改正の論議が政治的課題となって久しい。そのような時だからこそ、日本国憲法がいかに誕生し、それをめぐっていかなる“闘争”があったかということを、ということを国民は歴史学の知見に基づいて知るべきだろう、と思う。

  • 北川先生 推薦の人の本です

著者プロフィール

1943年東京生まれ、早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。獨協大学名誉教授。和光学園理事長。専攻 憲政史。著書『新憲法の誕生』(中央公論社 1989、吉野作造賞受賞、中公文庫 1995、英語版The Birth of Japan’s Postwar Constitution, Westview Press, 1997)、『「平和国家」日本の再検討』(岩波書店 2002、岩波現代文庫 2013)、『憲法9条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット 2006)、『日本国憲法の誕生』(岩波現代文庫 2009、韓国語版 2010)、『安全保障とは何か――国家から人間へ』(岩波書店 2013)、『平和憲法の深層』(ちくま新書 2015)、『日本国憲法の誕生 増補改訂版』(岩波現代文庫 2017)、編著書『GHQ民政局資料「占領改革」 第1巻 憲法・司法改革』丸善 2001)、豊下楢彦氏との共著に『集団的自衛権と安全保障』(岩波新書 2014)、『沖縄 憲法なき戦後』(みすず書房 2018)などがある。

「2020年 『対米従属の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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