ユング心理学入門 〈心理療法〉コレクション I (岩波現代文庫 学術220)

  • 岩波書店 (2009年5月15日発売)
4.30
  • (57)
  • (49)
  • (18)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 1021
感想 : 45
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784006002206

みんなの感想まとめ

人間の心理を深く探る内容が魅力的で、読者の心に安らぎを与える作品です。柔らかな文体が特徴で、ユング心理学の基本的な概念や理論が解説されています。特に内向型と外向型のタイプ論や、コンプレックス、夢の分析...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本書は、心理学者・河合隼雄氏がユング心理学の核心を日本で初めて体系的に紹介した入門書である。
    今日、MBTIの基盤として知られるタイプ論などを、「心の構造」と「動的な均衡」という視点から提示している。

    1. 心の三層構造
    人間の心を静的なものではなく、以下の三層から成る動的な領域として捉える。

     ・意識:自我(エゴ)を中心とした、自己認識が
      可能な領域。
     ・個人的無意識:個人の経験に基づく、抑圧や忘
      却の貯蔵庫。
     ・普遍的無意識:個人の経験を超えた、人類共通
      の反応パターン(元型)の源泉。

    この三層構造は、日常的に「自分の意思」として捉えているものが、実際にはより広い心の一部に過ぎないことを示しており、自己理解の前提そのものを揺さぶるものであった。

    2. 補償作用を構成する三つの要素
    ユング心理学の本質は、意識の偏りを無意識が修正しようとする「補償作用」にある。それは主に以下の三つの軸で展開される。

     ・ペルソナと影:社会的仮面(表)と、排除され
      た否定的側面(裏)の均衡。
     ・アニマ・アニムス:意識的な性自認と、内なる
      異性的資質の均衡。
     ・心的機能の補完:優越する認知機能(思考・直
      観など)と、未発達な劣等機能の均衡。

    すなわち、心とは「意識の欠損を無意識が補完し続ける自律的な装置」であると捉えることができる。
    特に印象的であったのは、問題や葛藤を単なる欠陥ではなく、バランスを回復しようとする働きとして捉える視点である。この見方に立つと、否定的に感じられる感情や衝動にも一定の意味を見出すことが可能になる。

    3. 「自己実現(個性化)」へのプロセス
    この補償作用の向かう先は、断片化された自己を統合する「個性化」である。そのプロセスは、以下の段階的な統合として整理される。

     ・影の受容:嫌悪していた自己の側面を認め、エ
      ネルギー源として再統合する。
     ・内的異性像との対話:未開発の資質を自身の可
      能性として育てる。
     ・中心の移行:主体としての自我を相対化し、心
      の全体性である自己に従う。

    これらの過程は抽象的でありながら、自己の在り方を見直す実感に即しており、理論にとどまらない示唆を含んでいると感じた。

    ユング心理学は、現代的な意味での科学的根拠を欠いている。しかし、それを無価値として切り捨てるべきではない。厳密な定義に欠ける記述の背後には、「こころ」という捉えがたい現象に対し、物語や比喩によって接近しようとする試みがある。そしてそれは、論理だけでは捉えきれない側面を理解する手がかりとなる。

    特に「影」の概念は、自己の中にある否定的側面を排除するのではなく理解の対象とする点で重要であり、人間の多面性を捉える有効な枠組みとして現在でも十分に有用であると考える。

  • 氏の著作は何冊か読んだが、その柔らかな文体は、読む人の心を安らかに包み込み、全てを理解し肯定して癒されるようである。その心地よさに、読み出したら止まらないのだ。
    内容としては、人間の類型、コンプレックス、無意識、夢分析、アニマ・アニムス、自己実現などに関して基本的な概念が述べられており、より詳細な内容は、氏の他の著作を参照されたほうが良いと思う。
    私自身、フロイトの著作も読んだが、ユングの方がより直感的に理解し納得できた。ただ、全て河合氏の著作を通してのことなので、今後は直接ユングの著作を読んでみたい。

  • 〇目次
    序説 ユング心理学に学ぶ
    人生の選択,分析体験,学問と人間,ユング心理学の特徴,
    第一章 タイプ-1
    1.人間の類型-2
    2.一般的態度、内向-外向-6
    3.四つの心理機能-15
    4.意識と無意識の相補性-29
    第二章 コンプレックス-37
    1.連想実験-38
    2.コンプレックスの現象-46
    3.コンプレックスの解消-54
    第三章 個人的無意識と普遍的無意識-70
    1.普遍的無意識-71
    2.元型-78
    3.影-86
    第四章 心像と象徴-104
    1.心像-105
    2.象徴、その創造性-114
    3.心理療法における心像の意義-129
    第五章 夢分析-142
    1.夢の意義-144
    2.夢の機能-157
    3.夢の構造-174
    4.夢分析の実際-185
    5.死と再生のモチーフ-197
    第六章 アニマ・アニムス-213
    1.ペルソナとこころ-214
    2.アニマ-224
    3.アニムス-236
    第七章 自己-248
    1.個性化の過程-249
    2.自己の象徴的表現-260
    3.自己実現における「時」-268
    読書案内-河合俊雄-285
    解説 繰り返し立ち返るべき「古典」-茂木健一郎-289
    〈心理療法〉コレクション 刊行によせて-河合俊雄-297
    索引

    「感想」
    2025/7/23 13:18
    読み終わって、ボケーっとしている。読み終わるのに、ちょうど1週間くらいかかった。自分は今大学の4回生なのだが、この5月の始め-ゴールデンウィークに入る前くらいから、大学の相談室で週一のカウンセリングを受けている。そこで自分のことを話すうちに、少し心理学への興味が湧き、担当カウンセラーの方に勧めらた本の2冊目(1冊目は、河合隼雄さんの『大人になることの難しさ』を読んだ)として読んでみた。読み終わって、「心理学って難しいんだなぁ」という浅薄な漠然とした感想が最初にある。入門書といいながら、隼雄さんの極めて読者に配慮した柔らかく優しい文体にしてなお、理解できたのは本書の内容の3割くらいなんじゃないか?という思い。( ˘•ω•˘ ;)ムズカシイ…。また、他の本を読んでみて、振り返って読めば、もう少し理解出来るといいなぁと思う。でも、感覚型,感情型,思考型,直感型の分類分け,強迫症状,こころ,コンプレックス,分裂病,夢分析予知夢など、読んでて興味・関心あって、楽しい話が多かった、だから読めた感じはする。以上‼️

  • 『河合隼雄の処女作であり、日本で最初に著されたユング心理学の本格的入門書』とのこと。
    読了まで数カ月もかかってしまった。そして一度読んだだけで理解するのは難しいと感じた。
    タイプ論が好きなので、第一章だけは面白く読めた。

  • 第1章タイプで内向と外向の話が出て来る。P.8にある文章を読んでいて、完全に自分は内向型だなと思えた。外向型の人間のことを毛嫌いすることもあるし、ときにはうらやましく感じることもある。しかしよくよく考えると、自分も大学1年生くらいまではわりと外向型であったような気がする。そこに何があったのか、自分なりに深めていかないといけない。さて、このあたりまでは良かった。よくよく分かる。やっぱり河合先生は良い、と思っていた。ところが四つの機能に入って行くとどうもつかみにくい。さらに、コンプレックス。どうしても劣等感というイメージがついてしまっているのだが、それだけを意味しているわけではなさそうだ。それで混乱をきたす。その後、夢の話に入ると、具体的な内容は分かりやすい部分もあるが、ことユング心理学の専門的な話になると付いていけなくて、ついつい居眠りをしてしまう。河合先生の初期の著作でもあり、素人にはちょっと難しいのかもしれない。ずいぶん前に「心理療法序説」を読んだときには(ずいぶん前なのでレビューが残っていない。再読すべき1冊である)ワクワク感しかなかったように思う。残念ながら今回は入門させていただけなかったということか。ただまあ、はじめてアニマ・アニムスの雰囲気がつかめた(どちらが男か女か)ので、自分の見る夢に出てくる女性には特に注意しておきたい。ところで、いろいろと夢の具体例が登場するが、ユングにしても河合先生にしても、聞き取っている夢というのは何らか心に問題を抱えた人のものであろう。そこでの話を万人に適応することができるのだろうか。一人の人を深く掘り下げることで普遍的なものにたどり着けるということは分かるのだが。いずれにせよ、自分の夢も300本たまった。これらを分類してみてもおもしろいかも知れないが、どこからどう手をつけていいのやら。まあとりあえず、記録は続けていこうと思う。

  • 石井ゆかりの『夢を読む』の参考文献の一番上に載ってたので…と思って読み始めたけど、これはその本の抜粋だったことを、読み終わってから知り…ショック。
    でも、面白かったし興味もかなりそそられたから、次こそ培風館の方の『ユング心理学入門』読むぞー!
    読書案内に載っていた、河合隼雄『コンプレックス』岩波新書 1971年 も気になる。

  • 初読

    心理と哲学については勿論興味関心はありながらも
    近付かない方がいい気配がしていたのだけど、今かな
    と手に取ってみたら、多分、タイミングがバッチリ合った。

    10年以上、ずっと事象の両義性に惹かれていたので
    ユングの提唱する相補性、
    人間の心は対極の間のダイナミズムに支えられて一つの全体性・統合性を持っている、
    負から正を、正から負を見出し己に統合してゆく
    というのは物凄く負に落ちたのだ。
    また、ユングは40歳以降の人生の後半を重視していたというのも
    寝かせた甲斐があったというか。まさに今、これから必要な。

    コンプレックス、ペルソナ、エゴという心理用語も
    俗説というか、日常用語としての意味ばかりの理解よなぁと改めて。

    それにしてもこの本はユングの入門書でありながら
    河合隼雄氏という日本におけるユング派第一人者に強く触れるもので、
    それもまた素晴らしい出会いだった。
    序論にある分析が主に夢分析と聞いての反応も、
    私も「夢分析、、、」というタイプなのであの時点で
    この先生信頼出来る!となってしまったw

  • ”河合隼雄さんの処女作。
    巻末には、河合さんによる「読書案内」と、茂木健一郎さんによる解説も。

    <キーフレーズ>
    ・ユング心理学においては学問と人間とが切り離せない(序説 x)
    ・影(shadow)=個人の意識によって生きられなかった半面(p.86)

    <きっかけ>
     人間塾 2016年3月の課題図書”

  • ユング心理学を、わかりやすく、深く、語ってくれる素晴らしい一冊。

  • 非常にわかりやすい。再読したい

  • 一ページにつき段落が一、二個。二個と言ってもほぼ一行二行で次ページにずらりと続く。また段落が全くないページもある。これが意味することは何か? 多すぎるってこととつらいってことです。
    上から下まで空き無くびっしり敷き詰められた文字を読むのが辛い。辛い辛い言いながら読了しました。
    夢いっぱい見そうな本だった。あと心理療法家向けだなと思った。素人が一人で絶対にやっちゃダメだろこれ、危ないよ。
    私は素人なので私自身が否定して来たものも抑圧してきた数々の苦しみも全てその時になったら一個一個丁寧に向き合って行こうと思いました。夢分析とか一人じゃ無理ね。
    脳科学者の解説は別に読まなくても良かったわ。

  • 集合的無意識などイデア論や東洋哲学とも通じる部分があり興味深い。
    また、神話研究から心像(シャドウ、アニマ、老賢者、太母など)というかなり独特な研究にもかなり説得力があって、これから人の話や物語を観るときもどういった心像が反映されているか意識してみるのも面白いかもしれない

  • この本を通して、個性化の過程を学べたことが有意義だった。性格心理学に関して、ユングのタイプ論のうち劣等機能を強化することで自己が完成するみたいなイメージが学びになって、倦怠期のカップルの例もあり分かりやすかった、家庭は個性化の過程を訓練する格好の場ということで実感はないけど実践できたらいいのかなあくらいの解像度。

  • 入門書としてとても分かりやすいと思います。
    後ほど知りましたがMBTIはユングの理論を参考にしていたんですね。確かにタイプ論では人間のタイプを整理していました。ただ、その人間のタイプを特定するのではなく、その人の性格への方向づけとしてタイプを考え、そこからその人の本質、理解へ繋げるということでした。あなたはこのタイプですね、と断定や決定するのはタイプ論とは似て非なるものなんだなと思いました。
    他の論についても分かりやすく書いていておすすめです。

  • 重要な時に何度も立ち返りたいと思う。

  • 培風館 (1967年10月1日発売)も読みました。
    https://booklog.jp/item/1/4563055115

    原本は、1967年10月に培風館より刊行された.その後、『河合隼雄著作集1 ユング心理学入門』(1994年7月岩波書店刊)に第1・2・10・11章および付録を割愛して収録された。
    コレクション版は、底本にこの『河合隼雄著作集1 ユング心理学入門』を使用したとあるので、生前に河合隼雄さん本人が省略版をすでに作成していたということになる。
    つまり、俊雄さんが元本の章をカットしたのではないのだ。

  • タロット・リーディングの視野を広げる目的で読んだが…なるほど。本来の目的で期待していた内容とは少々違っていたが(解説の茂木健一郎さんが『ユングという一人の心理学者の事蹟を探るきっかけとなる本』と表現されている通り)、興味深く読み進んでしまった。結果として、タロット・リーディングを深める視点も学べたと思う。ユング心理学、もう少し深めてみたいなぁ。同時に、フロイトも読んでみたくなる不思議。

  • 読みやく分かりやすい。文章の出来が良い。

    ただあくまで”入門”なので、深いところはわからず、そんな感じなのか〜的な情報を仕入れるには良い本。
    本当に理解したいなら、もっと色々読む必要がある。
    そういった意味では、読書案内が最後についているのも良い。

  • 夢分析について知見を深めたく手に取った本。こういった類の学術的な専門用語の多い本は難解なものが多くなかなか読みにくいものが多い反面、河合さんの本は「高校程度の学力があれば読める文章」として噛み砕いて書いてくれているので非常にわかりやすい。実際のケースをもとにどのように連想していくか、紐解いていくかの流れが読めてとても参考になる。しかし、量をこなせなければコツを掴めないんだろうと言うことも同時にまなばされる。意識と無意識の大きさを表す円の図には驚かされた。

    連想を使って夢分析を行うという点が興味深い。もう少し知識を深めたいので、他の河合さんの本も読んでみようと思う。

  • 100分で名著の河合隼雄特集から

全38件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×