新編 平和のリアリズム (岩波現代文庫)

著者 : 藤原帰一
  • 岩波書店 (2010年4月17日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006002367

作品紹介

権力闘争としての国際政治の現実を受けいれたうえで、平和の条件を粘り強く探ってゆくこと。そうした著者の知的挑戦は、現代世界に生起する諸問題を前に、時論という形で展開されてきた。冷戦終焉から9・11事件、イラク戦争を経て、日米の民主党政権誕生までの二〇年にわたる論考を収載する。石橋湛山賞を受賞した二〇〇四年の旧版に多数の新論考を加え、全国的に再編集。

新編 平和のリアリズム (岩波現代文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 20年ほど前の論文から現在まで、その間にも刻々と世界情勢は変わっているが、振り返ってみてもその時々の情勢の解説、提言としてとても整理されていて分かりやすく、また知らなかったことが新たに分かったりした。
    特に、2006年に書かれた「『理想主義』を越えよう」は良かったです。

  • 作家の村上春樹やアニメ界の巨匠宮崎駿が語る理想主義と、国際政治学者藤原帰一が語る現実主義の違いが面白い。

  • 「民主主義」とは、持たざる者が政府をつくることにほかならず、民主主義には一種の永久革命としての信用が保たれていた。p27

    国際政治に秩序、制度、あるいは体制などを生み出す原因として大きな役割を果たしてきたのが、まさに戦争だったのである。p60

    「国民国家」という虚構が成立する以前の「国家」とは、いわば軍隊と税務署であり、外部から権力を振るい、資財を奪う存在でしかない。p91

    ナショナリズムを歴史の発展のなかで捉える見方に従えば、人々の帰属意識が「住民」から「市民」へ、「市民」から「国民」へと発展してゆくのであって、「国民」意識が歴史上の一里塚である以上、それが将来拡散したり、「世界市民」という自覚に発展しても不思議はないのである。p98

    民族集団の間の通婚が進んだはずのユーゴスラビアで民族の間のさつりく殺戮が復活し、民族の間の「同化」が達成されたはずのフィリピンでイスラム教徒のゲリラ闘争が広がるというように、ナショナリズムは保たれたり解消するよりは、壊れた蛍光灯のように点いたり消えたりする。p99

    戦争を記憶すること自体が国民の一体性を養っていく。記憶の基礎には、常に「犠牲者」であり、その背後には犠牲を強いた「敵」がある。犠牲者に対する追悼を通して、国民意識は世俗的な政治の世界から、人間の生死を律する宗教的領域にまで入り込む。死者に意味を与える行為と国民国家に意味を与える行為が結びつき、残虐な敵と、痛ましい犠牲者と、高潔な英雄が、国民の物語のもっとも輝かしい一章を提供することになるのである。p104

    【抑止としての記憶ー国際政治の倫理化】
    戦争を記憶し続け、その記憶を将来の戦争に対する抑止力として保ち続けることが要請される。p115

    税制と通過供給を通じて経済活動に関与できる主体が各国政府であり、それに変わるような政治権力は国内にも国外にも存在しないことから、多国籍企業の台頭が「主権」を死滅させるようなことが容易でないことが想像できる。p152

    開発独裁は、自らの成功によって内部から壊れてしまうのである。p169

    ベンジャミン・バーバはジハード対マックワールド、すなわちイスラム圏の聖戦とマクドナルドの支配をグローバリズムが向かい合うという図式から捉えている。p187

    ダールダー「アメリカの圧倒的な力と、他国の反対を押し切ってでも、その力を使う意志こそがアメリカの利益を世界で確保する鍵」p187

    大量殺人への報復としてのアフガン空爆は、法的制裁としても自衛戦争としても正当化の余地のない、残虐で愚かな暴力だと思う。誤爆で死んだ人のことを、戦争では避けることのできない「付帯的犠牲(collateral damage)」などという言葉に押し込める、そんな正義があってたまるものか。p230

    (アフガン戦争は)軍事大国とそれ以外の地域とでは命の値段がまるで違うことを、残酷なほどハッキリと示している。p231

    抑止されない大国が登場することで、秩序と倫理が結びつく可能性が生み出された。p233

    イラク攻撃直前のアメリカは世界から孤立したが、アメリカから見れば世界がアメリカから孤立したのである。p259

    地球大の安全保障の追求が、同時に、帝国の台頭への恐怖を呼び起こすという二重性を持ってしまうのである。p274

  • 国際関係における戦争を避けられない現実として受け入れるだけに世界平和を求める人々にとってはリアリズムはとても山積できない考え方とされてきた。

    湾岸戦争のような規模の戦争を世界各地で構えられるだけの財政的余裕と軍事力は多国籍軍であれなんであれどこにもない。
    国際政治に秩序、制度あるいは体制などを生み出す大きな原因としての役割を果たしていたのが戦争。

    国際政治という学問分野は、ごく最近まで大国相互の戦争と平和の条件ばかり考えてきた。

    抑止と平和、また中心と周辺の関係は冷戦期に限らず、国際政治の基本的なジレンマを反映している。

    戦争が国民意識と強く結びつくのは戦争に勝った諸国である。

    伝統的国際政治では内政をブラックボックスにすうrことで、異なる体制との間でも妥協の余地を残しておくのが外交の秘伝だった。

    グローバル化の下での決定という問題は国際関係論で言えば、従来の相互依存論を継受したものといってよい。
    国際関係では軍事力相互の威嚇によって秩序を支えることはごく普通のこと。
    力関係が安定を支える世界では、それとは異なるモラルや価値規範を国際政治に持ち込んでも国際関係に不安定をもたらすことにしかならない。

    世界には大国と小国、強い国と弱い国がある。学問以前の当たり前の観察にすぎないが、この観察を国際政治の分析に生かすことは案外難しい。

    国際政治という学問分野の歴史はリアリズムとそれに対抗する議論との応酬として考えることができる。国際政治におけるリアリズムはいまなお、有効性の否定できない概念である。

  • 結構読みやすく、内容も普通のリアリズム思想とかではない感じであった。
    自分としても、様々な考えに触れられた思う。

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