- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006002534
作品紹介・あらすじ
知の巨人チョムスキーが自らの科学観と言語観を率直かつ詳細に語った。原理・パラメータモデルが誕生しつつある興奮のなか一九七九‐八〇年にかけて行なわれたインタヴューと、極小主義の本格化を経て二〇〇二年秋に行なわれたインタヴューを収録。訳者による序説では、生成文法理論における問題設定と中心的主張が解説される。
感想・レビュー・書評
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岩波現代文庫の、文庫としての狙いはよくわからないものの、仮にそれが、特段の専門知識を持たない人に対して特定の学術分野における意義深い成果を伝えるものだとしたら、本書の出版は適切なものではなかったのではないかと思う。
本書で展開される生成文法に関する議論を理解するためには、この分野の専門書を数冊読破し理解するか、あるいは大学3年次から4年次または大学院で生成文法に関する専門的な講義を半年から一年程度は受講する必要がある。
幸いなことに私は主に職業上の理由で生成文法に関する知識があったため、本書で展開される議論の多くから有益な示唆を受け取ることができたと思っているけれども、生成文法に関する知識のない読者にとって本書が有益なものになるかというと、甚だ疑問である。
とはいえ、もう買ってしまったし……ということもあるだろう。基本的には、専門知識を仮定せずにある程度楽しく読める部分は以下のようになると思う:
・訳者による序説
・生成文法の企て:第一部第一章から第三章にかけて
・二十一世紀の言語学:第二章から第三章にかけて
・訳者あとがき
本書全編を通じて、チョムスキーの圧倒的な知性が横溢しており、それを味わうという意味では大変価値のある書だと思うし、「二十一世紀の言語学」第二章における数学と言語学の関わりに関する議論などは大変示唆的である。ただ「生成文法の企て」第二部第二章のθ基準に関する議論などは専門知識のない読者にとっては基本的に無価値と言ってしまってよいと思う。
なんらかの理由で生成文法を学んだ人間が副読本として理解を深めるために読む本としては理想的であるが、果たしてそれは岩波現代文庫から出版されるべきものなのかというと、少々疑問である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
無数の個別言語の文法、その構造の形成過程にはある制限法則がある。
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チョムスキーの生成文法理論についての知識が曖昧であったので読んでみた。インタヴュー形式で書かれていたので、読みやすいかなと思っていた。しかし、なんの説明もなく専門用語が容赦なく現れて、途中で「あっ...これは入門者向けではないんだな...」と気付いた。一言も入門者向けと書かれてないし、そもそもそれぐらいの専門用語を知らない私に落ち度はあるが、なんとなく概要は掴めた。やはり文体として読みやすいので、チョムスキーの人となりを垣間見ることができ、他分野に対するチョムスキーの考えもわかる良書である。
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生成文法の企て
(和書)2013年10月08日 20:29
2003 岩波書店 ノーム・チョムスキー, 福井 直樹, 辻子 美保子
言語学の専門的な理論や用語などよくわからないところもありました。
ただこの本を読んで有益なところがあった。
それはナショナリズムというものが言語の同一性によって根拠付けられることがありえる。そういったものへの警戒をソシュールなどがしているのだろうと思う。その言語の同一性により格差を形成しようというナショナリズムに対し明確なそしてラディカルな批判により格差を解消しようということがありえる。それが生成文法であり普遍文法なのだろう。普遍文法によって言語のナショナリズムの根拠はありえない。ナショナリズムが虚構であることを明確に証明するものである。
チョムスキーの姿勢はそういった言語学者の姿勢と反戦運動又は平和活動家(反体制知識人)としての姿勢があると思う。それが結びつく共通の視点は格差の解消としてある平等又は平和の哲学なのだと思う。
チョムスキーの言語学者と平和活動家の姿勢は見事に一致していて矛盾がない理由なのだ。 -
1398円購入2011-12-21
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【由来】
・「知の逆転」や「虐殺器官」
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
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インタビュー中心なので、これで何かを理解できると思わないほうが良いかも。体系的な文献を当たる前に読めば参考になるだろうし、あとから誤解を解くために読むのもありなのかもしれない。この辺りは教科書的な書籍をもう1冊読まないとなんとも言えない。
チョムスキーと生成文法について知ったのは安部公房「死に急ぐ鯨たち」を読んだ時だったと思うけど、あちらもインタビュー中心でこの本と雰囲気が似てた気がする。いつかチョムスキーについて知ろうと思って20年経ってようやく読んだ本がこれ。ただ、概要については認知神経科学とかコンパイラの講義で習ってる気がする。
チョムスキー階層の話は面白いと思う。ひょっとして日本人が英語を苦手とする理由を文法を規定するルールの自由度の差に求める事はできないだろうか。日本語文法が諸外国語よりも自由度が高いため、日本語を母国語とする人が他の言語を操ろうとした際に困難を感じる云々……みたいな。単に構文の順序が反対だから、という理由では諸外国の人が日本語をよういに修得する事実と相容れない。かと言って日本人がそこまで怠惰とも思えない。この手の理由があるとすれば学習障壁の非対称性も説明がつく。
本編の内容とは関係ないところで、才能について面白い議論があった。身体能力と知性を比較した時、人は身体能力に対する才能は認めるが、知性に関する才能は認めたがらない、というもの。自分の感覚とはまるきり正反対なんだけど、個人的な体験の違いなのか、国民性の違いによるものなのか……。自分の経験ではスポーツ選手の努力は認めるが、勉強の出来については生まれつきの能力、みたいに言われる事が多かったような。 -
途中で断念。
仮説構築力。独自の視点。
言語能力と数学。 -
131102 中央図書館
西村、野矢『言語学の教室』(2013)で「はじめてこの理論(・・生成文法のこと・・)に触れる人にとって最適の導入といえる」とあったので、手に取ったものの。
全くの素人にとっては使われている用語が頭に入らないので少し難しすぎたようである。「訳者による序説」を読むと力尽きる感じだが、それで良かったかもしれない。 -
評判通り、生成文法とは?をわかりやすく解説した序説がすごく面白い。
本編のチョムスキーのインタビューは、言語学の馴染みにとっては面白いかもしれないんだけど、俺には全く意味不明だったので、ほとんど読まずに終了。