- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006002572
作品紹介・あらすじ
橋川文三(一九二二‐八三)は戦中派世代の論客として活躍するとともに、日本政治思想史の専門家として、正統派の学問では忌避されがちな人物やテーマに取り組んできた。今日、日本においてナショナリズムが亢進するなか、近代国家システムからこぼれ落ちたエートスを掬うその独創的な研究は、あらためて注目を集めている。橋川の代表的な論考が一冊で読める現代文庫オリジナル編集のアンソロジー。
感想・レビュー・書評
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橋川文三は戦前の超国家主義の本質を「縦軸の無限性」やその磁場である天皇制にみていない。推測だが、橋川にとって「縦軸の無限性」等は超国家主義にとってあくまでひとつのツール、もしくは超国家主義を成り立たせるための建前にすぎない。
橋川が強調する超国家主義の本質は、国家主義を超えようとする人々の心性だ。テロを起こす朝日や井上らが持つ内面や革命性が、明治期のテロと比較して明かされる。源流は「坂の上」を登りきった場所に存在した、ニヒリズムや戊申詔書だと言えるだろう。
橋川は戦時中の学生時代に、小林秀雄や保田与重郎から影響を受けたようだ。彼らから、浪漫主義的な「近代の超克」への志向を感じることはあっても、「縦軸の無限性」を感じることは少なかっただろう。だから実感として超国家主義の超国家性が明瞭に見えている。
それらが、戦前派ながら徴兵により軍隊生活を身を以て経験した丸山真男との決定的な差異なのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おもしろいやんか!と夜中にスタオベしかけたけど、朝読んでみるとそうでもなかった。いやいやでもおもしろいです。ここから派生していろいろ読みたくなる。わたしはいつも取り掛かりが遅い。
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戦中世代の思想家であることから、友人、知人に歴史に残る有名人がかなりの数が出てくる。中でも三島由紀夫が信頼を寄せ、いくつか序文などを依頼している。しかし、三島に迎合するのではなく、三島を批判しつつ、常に冷静に思索している。最後に橋川氏の個人的な生活環境も書かれていたが、この不幸がなければ、さらに学術的にも、思想的にも、橋川氏自身が歴史に刻まれていたかもしれない。