「尖閣問題」とは何か (岩波現代文庫)

著者 : 豊下楢彦
  • 岩波書店 (2012年11月17日発売)
3.89
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006002732

作品紹介・あらすじ

尖閣諸島問題についてのメディア報道には重大な欠落がある。日中両国の主張を歴史的にどう評価すべきなのか。最も注目すべきは、アメリカが曖昧な姿勢を取り続けていること。アメリカの戦略を解明する点で本書は独自性を持っている。国有化では解決できず、「固有の領土」論が説得力を欠く理由も明らかにする。さらに「北方領土」や竹島問題の解決策も踏まえ、日本外交を転換することで「尖閣問題」を打開する道筋を指し示す渾身の書き下ろし。

「尖閣問題」とは何か (岩波現代文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  岩波現代文庫書き下ろし。『永続敗戦論』で白井聡氏が絶賛していたが、その評価も頷ける一冊。筆者自身のこれまでの戦後政治史研究での知見に、国際法・国際政治学の先行研究を踏まえると、「尖閣」をめぐる問題、現在の日本が抱える領土問題がこれほどクリアーに見えてくるとは思わなかった。
     だが、よく考えてみれば、豊下氏が引用する議論のほとんどは、すでに発表された論考や公表されていた資料、国会での議事録である。ということは、政治家も、メディアも、官僚組織も、そしてひょっとしたら学術の場も、そのようなことに気づけないほど知的に「劣化」していた、と見た方がよいのかもしれない。

     豊下氏の主な論点は3つ。
     (1)日本の抱える3つの領土問題は、すべてサンフランシスコ講和条約の戦後処理に関わるものだが、その「問題」の構成には、合州国のオフショア=バランシング戦略が関係している。3つの領土問題を論理的に突きつめていくと、結局すべては、〈アメリカ問題〉ということになる。
     (2)敗戦後の日本政府は、いわば、合州国によって〈3すくみ〉の状況を作られていて(ChinaKoreaRussia包囲陣!),、隣接する3ヶ国と領土係争を抱え(させられ)ているため、地域での自主的な外交・自立的な地域連携の戦略を構造的に実践できない。北東アジアの関係国で、いわゆる「全方位外交」を取っていないのは、日本と北朝鮮だけである。
     (3)1990年代以降、ジョゼフ・ナイやリチャード・アーミテージら、合州国内の「ジャパン・ハンドラー」たちは、中国や北朝鮮と日本の緊張を高めることで、軍産複合体の利益に奉仕してきた(ミサイル防衛構想と沖縄へのオスプレイ配備が象徴的な事例)。彼らの意を体する日本の政治家と官僚も、自衛隊の戦力の定義を「動的防衛力」と規定、「集団的自衛権」の行使へと道を開くことで、ますます従属を強めている。石原慎太郎が講演の中で尖閣の「購入」を打ち出したヘリテージ財団は、そうした「ジャパン・ハンドラー」たちと密接な関係を持っている。

     「尖閣」問題を視点にすると、東京は合州国の従属政府であり、沖縄が米日双方の〈植民地〉であることがあからさまに見えてくる。石原慎太郎や安倍晋三の発言が、いかに従米・屈米的な内容であるかも本当によくわかる(だが、いまや安倍や石原は、合州国にとっては、かつてのビン=ラディンのような「怪物」になりつつあるのかもしれない。オバマ政権が民主党野田政権を高く評価したことは重要だ)。
     そして、中日の緊張がますます高まる時期だからこそ、中国と日本の歴史的関係を改めてふり返り、とりわけ戦争の記憶とその語られ方について考えることが必要ではないか。中国は第二次大戦の戦勝国だが、日本人は中国に負けたとは思っていないという矛盾に端的に示されている認識のギャップは、戦時・戦後の日本語の文脈で、中国がどう語られ、表象されたかという問題でもあるだろう。

  • だろうなと思っていた通りだったり、すっかり騙されていた事を知ったり、尖閣問題だけでなく、北方領土や竹島問題も含め問題の本質をあぶり出す良書。メディア、政治家に騙されない為に必読

  • 珍しく赤線いれながら読んだ。世界にはいろんな矛盾があるなー、って漠然と思ったけど、今となっては記憶もおぼろげ。とりあえずどの国も、自分の国が一番なんだ。当たり前か。日本はもう少し我を通してほしい。

  • 尖閣を中心に懸案の領土問題を、双方の言い分を的確にまとめ、歴史的経緯や地図も載せて読みやすい。いずれの領土問題にも米国が影を落とし、解決させないことで米軍のプレゼンスを高めています。大国政治の非情さはネオリアリズムの言う通りですね。領土問題は安全保障問題でもあります。オフショアコントロール戦略をとる米国、G2を目指す中国の狭間で、生き抜かなければならない日本人なら必修の書籍でしょう。第6章を書くなら別の機会でしょう。

  • 積読..

  • 領土問題の今後の戦略についての好著。目から鱗の事実、提案がいくつもあった。前著の集団自衛権よりも切れ味が増している。本の体裁、構成も大変に読みやすい。石原の発言意図に驚愕した。単なる馬鹿だと思ってたらいかんな。

    ・米国が2014年のリムパック(環太平洋合同演習)に中国海軍を招待する。かつては中国は仮想敵国だったのに。
    ・従軍慰安婦の安部発言は拉致問題と絡めて米国から二重基準だと糾弾された。
    ・決定的期日(critical date):その日までの事実は国際司法裁判所によって証拠として採用される。
    ・アメリカの「オフショアー・バランシング」戦略。尖閣を巡る日本と中国。沖縄駐留の正当化。かつてのイランとイラクも。
    ・横田基地の管制権から見ると首都圏の空域は植民地状態。そこに触れない石原の矛盾。
    ・北方領土で日ソ間の緊張状態を作り出し、米軍のプレゼンスの正当化を図った。オフショアー・バランシング。
    ・ドイツの場合、過去の克服は西欧諸国の信頼獲得に向けられ、ヨーロッパの地域統合の進展に結実した。日本の場合、アジアでの和解と信頼に格闘せず、米国の安全保障戦略の枠組みにのる形で戦後社会に復帰した。サンフランシスコ講和条約会議には中国と韓国の代表は招かれていない。
    ・固有の領土は国際法上の概念ではなく、日本の政府と外務省が考え出したもの。その後、各国が乱発している。
    ・ジャパンハンドラーの本質。ジャパン・「パ」ッシングであらわに。北朝鮮の危機を煽りつつ、北朝鮮へのテロ国家の指定の解除など。
    ・中国にとっての脅威は中国そのもの
    ・今日直面している課題は、戦後世界を主導してきた米国の影響力が低下する一方で、中国が「超大国」にむけて「前進」を続けているという状況において、日本がどうするかという問題。
    ・「非武装中立」と「重武装論」ではなく、最小限の軍備の必要性と有効性。高坂による陸海空軍の具体的提言。
    ・PAC3配備の下手ぶり。北朝鮮から原発を守っていない。米国の納税者の負担減のため売り込まれた。
    ・日中の安全保障のジレンマで難しいのが歴史問題であるが、解決の鍵を沖縄が握っている。沖縄は独自の外交力も持っている。
    ・日米基軸は目的ではなく、手段のはず。
    ・海上保安庁の巡視船の拒否力であっても、ネット社会では国際的に大きな影響を及ぼすことが出来る。専守防衛としての拒否力の重要性。
    ・2010年、沖縄を巡る言説変更、武器輸出3原則の緩和。2012年、JAXAの宇宙開発の目的を「平和目的に限定する」を外す、原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」が盛り込まれた。
    ・国際海洋法条約をめぐって、アメリカと中国に加盟を促す。

  • 結局はアメリカ次第…

  • 野田政権による国有化以後中国との関係を決定的にこじらせてしまった尖閣列島ですが、実際のところなんでここまで中国との間で意見の対立があるのか、きちんと知っておきたくて読んでみました。
    読んでみて、納得がいきました。たしかに国際法上の所有権が日本にあることは確かなのでしょうが、台湾を植民地化したのとほぼ同じタイミングで日本への編入手続きが行われているため、台湾にとってはその日本への帰属は「植民地化の象徴」とみられていることで、それは韓国にとっての竹島も同じだとのこと。これではたしかに、国際法上日本の所有であることは間違いないと言っても、感情的に納得してもらうのは非常に難しそうです。しかも、アメリカが沖縄返還前には尖閣列島も自ら管理しておきながら、沖縄返還時に尖閣列島帰属についてはアメリカは関知しないと言い、以後その立場を継続しているというのも、たしかに中国と台湾については「領土問題が存在する」と主張するには十分過ぎる状況だとよくわかりました。
    北方領土や竹島問題の歴史的経緯にも触れられていて、問題の全体をとても明確に知ることができたのは収穫でした。
    ただ、後半で筆者の提案する解決策については、さすがにちょっとアメリカを感情的に敵視しすぎている感じで、ややついて行けない部分がありました。が、それなりに納得度は高いです。少なくとも、今の国の外交政策よりは建設的な提案のように思えました。

  • 安倍首相や石原都知事は、どうしてわざわざ隣国の感情を逆撫でするようなことをするのだろうか。尖閣問題は一時、中国側から棚上げの意思があったのだから、そのときその意思を受け入れて、台湾も含めて周辺海域を共同で開発したほうがよほど賢い選択だったと思うのですが。領土問題に関心があるのは、政治家と右寄りの人たちであって、市井の人々の日常生活にはなんら影響はしないのでは。漁業に関しても三国で協定を結べば良いのだし。海上保安庁の哨戒には多額の税金が使われているのだし。それにしてもマスコミは悪感情を煽っている。

  •  豊下氏によれば、尖閣諸島というのは、テレビで放映される三つの島だけではなく、さらに久場島、大正島、がある。なのに、石原氏がこの2島に触れないのはなぜかというところから問題を提起する。それは、この2島が沖縄返還後アメリカ軍の演習場になっており、演習が行われなくなった後も、日本は返還を迫っていない。したがって、石原氏はアメリカで、都民の税金を使って尖閣は日本領という前に、尖閣を日本に返せとアメリカに要求すべきであるし、日中の間にあって中立を決め込むアメリカの無責任さを追求すべきだと主張するのである。豊下氏は石原問題を出発点に、日本にとって安全保障のあり方を問いかける。尖閣問題を考えるにあたって真っ先に読むべき本である。

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