コロンブスからカストロまで――カリブ海域史、1492-1969(II) (岩波現代文庫)
- 岩波書店 (2014年2月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006003081
作品紹介・あらすじ
コロンブスの「発見」事業は、奴隷制と砂糖プランテーションに道を開くが、アメリカ独立革命とハイチ革命がそれらを崩しはじめる。分冊(2)は、奴隷解放後のカリブ海域の民衆、同地域を自国の「地中海」としてゆく砂糖王国アメリカの政策、それに正面から挑戦したカストロ革命、同地域のゆくえなどを主題とする。
感想・レビュー・書評
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奴隷制は廃止されたが経済的な混迷はむしろ加速し、砂糖による支配構造は変わらなかった。大戦の混迷のなか多くの国は独立を果たしたが、それは平和よりも独裁と結びつくことが多く、カストロとチェ・ゲバラがいたキューバは唯一西の支配から逃れたが、東側の援助なしには立ちゆかず、多くの失敗と直面した。本書が語る1969年までの内容は、そんな不安定な状況で終わる。
政治的、経済的分裂主義と国制の多様性。経済的、心理的、文化的、さらに政治的な対外依存性および大量の失業と潜在失業。経済不安、未解決の人種対立、潜在的な宗教紛争。
諸島地域がこれほどまでに混迷極まる要因が分裂した国土と関連するならば、技術の発達により距離はどこまで縮められるのだろうか。いや、隣国同士は仲が悪いのが世界の常とするならば、多数の他国に囲まれる諸島諸国においては、物理的な距離よりも先に、文化的・心理的な距離を先に縮める必要があるのだろう。しかし、ほとんどの国は、それぞれ別の西欧諸国による支配の影響が独立後も色濃く残っている。
険悪な競争から脱するには、健全な協業から得られるメリットを明らかにする必要があり、それは砂糖と奴隷貿易が生み出した以前の世界経済システムとは全く別のシステムだ。先に進む一歩として、まず過去のシステムを正しく理解するために、本書は大いに役立つことだろう。
ただ、読みにくさは前巻と変わらず。1960年代以降の砂糖生産量の変化の話をさんざん述べたと思った後に、『決定的な段階を迎えたのは1959年のことであった』と巻き戻るから混乱する。数多く示される数字は細やかだが、一般にわかりやすく示すことを放棄した結果、論文みたいで読みにくい。
というわけで誰にでも気安く進められる本ではないが、カリブ海を語る上では、捨て置くわけにはいかない一冊だろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
半世紀近く前の本なんですね。
翻訳の方法なのかもしれないし、原典もそうなのかもしれませんが「切れ目のない」文章が、全体として歴史の流れをアタマに印象付けてくれた。
発見から、奴隷売買、奴隷制、奴隷解放、砂糖キビ、貧困、差別、植民地主義・・・・。
もう、暗くて暗くての世紀。
唯一・・・、カストロのキューバが光になっているのでしょうか。