- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006003111
作品紹介・あらすじ
「原因物質が究明されないかぎり因果関係があるとは言えない」。水俣病など公害事件や薬害事件において無数の被害者を、学者はデータに基づかない非科学的な論理で切り捨ててきた。多額の研究費の支給を受けた学者の発言や行動とそれを生んだ学界構造と官僚機構を、多数の資料や記録をもとに検証した単行本に、その後の情報も加えた改訂版。
感想・レビュー・書評
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「恐ろしいほどの科学的・社会的・精神的な後進性を引きずる国に我々は住んでいることを自覚する必要がある。多くの先進国では、科学的根拠に基づいた政策立案という方法論が学問上も実際上も進んでいる。その一方、井戸端会議によって決定した科学的には誤った政策が、無謬性ゆえに公的研究費を用いて医学者先生たちを動員して堂々と維持され、いつまでも変えられずにうやむやにされようとする国に私たちは住んでいるのである。」
という指摘は、まるで今まさにこの国で行われているCOVID-19に対する行き当たりばったりの政策のことのようだ。
水俣病が発見された1950年代から何も変わっていない、何も学んでいない国に住んでいる、という絶望感。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「権威」と呼ばれる人たちがいる。公害事件や薬害事件が起きると
必ずと言っていいほど、「〇〇の権威」なる人物が登場する。
無条件で信じてしまうよね。だって、ある分野に突出して詳しい人
なのだと思うから。「〇〇先生がこう言っているのから間違いは
ないだろう」ってなっちゃうよね。
でも、この権威の先生が加害者側が出して来た人物ならどうだろう。
国や企業側の意に沿うような恣意的なデータや、手が加えられた資料
を元に被害者を切り捨てるような説を開陳していのなら、その人物を
信用できるだろうか。
本書では疫学者の視点から主に水俣病事件をテーマに、被害者を切り
捨てる為の論を展開して来た学者先生たちを批判している。
有機水銀に汚染された水俣湾産の魚介類を口にしたことが発祥の原因と
早い時点で判明していたのだから、その時点で食中毒事件として熊本県
や国が対応していたのなら被害の拡大は防げたし、認定基準なしですべて
の被害者を救済できたはずだとの論には目から鱗だった。
この考えはなかった。指摘されればそうなのだ。なのに、県は、国は
食品衛生法に添った対応はせず、認定基準を設けて救済の幅を狭めて
来た。
それも「救済してやるから今後は裁判なんて起こすなよ」と条件までを
つけて。まるで「見舞金をやるから一切の賠償を求めるな」とやった
原因企業チッソそのままだ。
御用学者はいかにして生まれるのか、その御用学者の理論がいかに破綻
しているのか、官僚と御用学者の関りなどを鋭く批判している。
ただ、本書発行後に著者が福島第一原子力発電所の事故関連で福島県で
の甲状腺がん多発と発表した論文には「過剰診断」との批判も多いよう
なので、本書の内容とは切り離して考えた方がいいのかな。
しかし、専門的な知識のない我々一般人は何を信じればいいか分からない
よね。水俣病の権威と言うなら、やっぱり亡くなった原田正純氏だと
思うのだが、被害者側に立った研究者は「権威」とは呼ばれないの
かしらね。 -
▼福島大学附属図書館の貸出状況
http://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&bibid=TB90301072
水俣病があれだけ大きな広がりを持ち,未だに解決できないでいることの裏にある医学者と官僚の言動を,疫学者が疫学者ならではの視点をもってまとめたのがこの本だ.フクシマとミナマタの類似性を指摘するものが出現してきた今,福島に居るものにとって,一読の価値がある本だ.また,共生システム理工学類に所属するものにとっては,科学者や技術者は社会に対してどのように振る舞うべきであるのかを考えるための手掛かりにもなる本でもある。
(推薦者:経済経営学類 永幡 幸司先生) -
B498.48-ツダ 300369071
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「因果関係はない」と専門家が言う。その専門家たちは責任を取らず、国からよいポストをもらう。これらは過去の出来事であり、似たような状況は起きないと言えるだろうか。
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まえがきの義憤から書くのではないと宣言されてから、文庫本あとがきに至るまで、猛スピードで告発。
難しい学術的な部分も、お偉い方をバッサリ切っていただくことで、どんどん読み進める。
東大出の官僚やお医者様を、バカ、まぬけ呼ばわりできるのは津田先生だけでしょうね。
正義は強し。矢でも鉄砲でも持ってきやがれ、タイマンでも何でもはってやる・・・っていのか、著者の意気込み。よし。気にいった。