フロイトとユング――精神分析運動とヨーロッパ知識社会 (岩波現代文庫)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (570ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006003166

感想・レビュー・書評

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  • 精神医学でも臨床心理学でもなく社会思想史の本。科学と宗教の揺らぎのなかで二人がどう時代とかかわってきたか。彼らはまぎれもない時代の子であるが継子だったかもしれない。大学や医学の主流から逸脱しながら諸学に通暁し考古学、人類学、神話学を鍵とする。学問への尽きせぬ探求心は本書そのものの有り様でもある。あらゆる資料の渉猟と考察、想像力。ボリュームも内容も手応え十分な一冊。しかもこの先生法学者なんだよね。

  • 『神話と科学』(岩波現代文庫)とならんで、ヨーロッパの世紀転換期に関する著者の思想史的研究をまとめた本です。

    フロイトの思想には、アドラーやフランクル、フロムらとくらべると、きわめて理解しがたい側面があるように思います。もちろんユングの思想も難解といえるかもしれませんが、ユングのばあいは彼の考えていた集合的無意識へ沈潜していくことがむずかしいのであって、理論の構成そのものはむしろわかりやすいように思います。また、ビンスワンガーやボス、ミンコフスキーらの難解さは、彼らの議論の背景となっているハイデガーやベルクソンの哲学の難解さに由来するもので、フロイトのむずかしさとはかなり種類が異なるように感じます。

    本書は、かならずしもフロイトの思想のそうした難解さを主題としているものではありませんが、フロイトを取り巻く世紀末ウィーンの思想風土を広く紹介することで、フロイトを理解するためのさまざまな視点を提示しているように感じました。現代ではさまざまな夾雑物を除いたかたちで理解されているダーウィニズムが、当時においてはヘッケルやゲーテの形態学と複雑な関係のなかに置かれていたことや、当時のユダヤ思想の展開を参照することでフロイトがエディプス・コンプレックスを発見することになった道筋が照らし出されるなど、いくつもの興味深い論点が提出されています。科学者としての立場を守りつづけたフロイトですが、その思想が一筋縄では理解できないようなものになったことの理由が、同時代のさまざまな文脈を見ていくことでしだいに明らかにされていて、たいへんおもしろく読みました。

  • 学術的考察が微視化されたことで見えなくなった「森」を鳥瞰するためには、これだけの資料を読破し、アタマで整理し、著述していかなければならないのだなぁ。
    まさに知的巨人と呼ぶにふさわしい。
    法学者だからこそできたことかもしれない。

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