世界史の構造 (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006003234

作品紹介・あらすじ

資本=ネーション=国家が世界を覆い尽くした現在、私たちはどんな未来も構想し得ないでいる。しかし本書は、世界史を交換様式の観点から根本的にとらえ直し、人類社会の秘められた次元を浮かび上がらせることで、私たちの前に未来に対する想像力と実践の領域を切り開いて見せた。英語版に基づいて改訂した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 8 資本と国家に対する対抗運動は一定のレベルを超えると必ず分断されてしまう。

    23 貨幣(交換様式C)に基づく力は、互酬性や再分配に基づく力とは異なっている。それは、他者を物理的・心理的に強制することなく、同意に基づく交換によって使役することができる。

    33 産業資本は労働者を搾取するだけでなく、いわば自然をも搾取=開発(exploit)している。しかし、この「人間と自然の関係」は人間と人間の交換関係に根ざしている。ゆえに、人間を収奪する国家が最初にあり、それが自然の収奪に繋がることを見ないかぎり、本質的ではない。

    45 互酬的交換Aが支配的な共同体の種類
    農業共同体、宗教的共同体、想像された平等共同体(ネーション)

    54 遊動採取民(バンド)→定住化→農業・灌漑の発展

    第一部 第一章
    互酬性交換の諸様態
    家族内交換、共同寄託、血讐、沈黙交易、外婚制、略奪婚、呪術

  • 産業資本の本質はあくまで、「労働力の商品化」にある(本書p.319)
    ここにはカールポランニーの悪魔の碾き臼をさらにわかりやすくしている。土地、資本、労働力(労働ではない)の商品化のうち、土地や資本の商品化は昔からあったが労働力の商品化によって全面的な商品化が可能となる。万物の商品化とウォーラーステインの指摘とも一致する。
    「そして信用とは商品交換の困難をとりあえず超える手段」(p319)
    信用創造という機能を銀行が持つこと、それは誰かの借金でなければならないこと。
    信用は儚いものである、誰かの借金と誰かの返済能力は労働力商品の評価という会計的に非常に困難な人的価値の評価を含んでいるからだ。価値の評価は難しい。

    また恐慌は資本主義の発展に必要だから起こる暴力的な現象で、失敗というより必然であり、必然的に中小の資本家や労働者は淘汰される。320〜321

    景気循環をもたらすのは労働力商品に固有の性格。

  • 本屋でふと目につき、あまり深く考えずに購入しました。その意味では本当に偶然の出会いで、お恥ずかしい話著者のこともまったく知らずに「題名が面白そう」ということだけで購入しました。しかし本書は本当に面白かったです。これだけ読み応えのある本は久しぶりでした。世界史をダラダラと時系列に記述している本は巷にいくつかあるのですが、本書はまさに題名にあるように世界史の「構造」ということで、フレームを通じて世界史を分析されています。具体的には交換様式A、B、C、Dという4つの形式から世界史を紐解いていて、私自身このフレームには初めて触れましたがユニークなだけでなく説得力があるとも思いました。2016年におこったブレクジット、米国トランプ政権の誕生なども念頭に置きながら本書を読むと、なおさらその説得力の高さに驚かされます。
    本書はなるべく読者の読みやすさを意識して書かれているとは思いますが、用語やフレームに慣れないとなかなか読み進められませんが、後半部になるとスラスラ頭に入ってきます。その意味では、もう一度頭から読み直してみると、さらに理解度が深まりそうだと感じましたので、早速2回目読み始めています。

  • 「交換様式」から世界史を見つめ直す。
    主に、カント、ヘーゲル、マルクスの史観と著者の新しい視点を比較しながら、これまでの世界史の流れを再構築し再解釈されていく。
    25歳の誕生日に出会った本だが、もう少し早く読みたかった。でも、いつだって今日が1番若いのだから大人になってからこの本に出会った意味を考えて、今後の人生に投影していきたい。
    私に影響を与えてくれたのは、本の中身ではなくこの本との出会い方なのかもしれないが、私の人生にとってとても大事な1冊となった。

  • 歴史の本ですが、交換様式という構造で世界史の流れを捉えているのが、興味深い内容でした。歴史上の出来事を断片とせず、背景を様々に考察し、共通項として読み取れることを交換様式というフレームでまとめていくことの面白さ。物量ともに骨のある内容で、通読するのにある程度の時間を要しますが、年末年始という長い休みには良いものでした。

  • 交換様式のあり方から社会の形を紐解いていく。なるほどこうやって世界を見ていく方法があったんだと。世界が一致団結するために何が出来るのか、どのようなスタイルを取っていくのか、この本を通じて考えたい。まだまだ読み込みが足りないので、関連図書をめぐってまた読み直そう。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/719228

  • 「理数系武士団」
    初めて聞いたワードだが非常に心惹かれた。

    歴史が頭に入っていないためあまり本書の内容を理解できなかったが、flier要約で以下のような説明があった。
    もしかしたら今後、この理数系武士団が活躍し、日本は新たな活躍の場を見つけることができるのかもしれない…と何となくワクワクした。

    flier要約の内容を一部抜粋する。
    ■flier要約抜粋
    【日本では国難の折に「理数系武士団」とでも呼べる集団が出現し、大きな力を国に与えていたのではなかろうか。かれらが独創的なビジョンで国を先導していたということだ。突出した発想力を持つ島津斉彬や自発的な育成機関となった緒方洪庵の適塾、理系的発想の忠実な伝道者となった坂本龍馬などがその代表例といえる。

    現代でも「理数系武士団」は、資金量とスピードに勝る米中などと向き合うための、日本が隠し持つ秘密の武器なのだ。】

    【鍵を握るのは、理数系武士団だ。かれらは人数が非常に少なく、普段はモノづくり技術者として文系集団に使われているに過ぎない。しかし、国難が訪れると自分たちの必要性を感じて結束し、政府やメディアに制圧されることなく、独自の行動によって大きな成果をあげる。

    理数系武士団が、「通常では日本社会に受け入れられない突出したビジョンを定着化させていく」ことができれば、日本社会に「歴史に参加している」という強い感覚を生み出すことも期待できる。そのとき、「日本人には越えられない」と思っている壁を乗り越えられるに違いない。】

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    ジャンル:グローバル リベラルアーツ
    出版社:PHP研究所
    定価:1,870円(税込)
    出版日:2022年07月04日

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    長沼伸一郎(ながぬま しんいちろう)
    1961年東京生まれ。早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)卒業後、同大学理工学部大学院中退。1987年、自費出版『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社)の出版によって、理系世界に一躍名を知られる。その後も組織には属さず仲間と一緒に研究生活を送っている。
    著書に『物理数学の直観的方法 普及版』『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(いずれも講談社ブルーバックス)、『現代経済学の直観的方法』(講談社)など。

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    flier要約
    https://www.flierinc.com/summary/3136

  • ある世代にとっての知識人の典型例が吉本隆明であるように、2000年代に人文社会科学を専攻した私のような世代にとってはの典型例は柄谷行人なのではないかと思っている。本書は2010年に出版された柄谷行人の大仕事であり、『日本近代文学の起源』に並ぶ氏の代表作であろう。

    2006年に出版された『世界共和国へ』では、近代社会が、資本=ネーション=国家の三位一体により強固な構成体になっていることを指摘した。本書ではその理論をさらに推し進める。その理論の中心となるのは、マルクスの思想を”生産”ではなく、実際に価値が生まれる”交換”に着目(どんな生産物も、それが交換されなければそこに価値は生じず、むしろ廃棄物として余計なコストを産むだけである)する交換様式論である。

    この交換様式に着目し、著者は世界史における交換様式と代表的な政治形態を以下のように整理する。

    ・A:互酬制(贈与と返礼)→ローマ帝国等の古代社会におけるネーション
    ・B:略取と再分配(支配と保護)→封建制を採用した国家
    ・C:商品交換(貨幣と商品)→大航海時代以降の資本主義
    ・D:X

    この整理学の最大のポイントは資本主義に続く、象限DにおけるXである。A〜Cの象限が実在の概念であるのに対して、このXは未だに実在せず、あくまで理論上の存在であるが、古代社会における交換様式のAが否定されつつも高次元で回帰するものだと説明される。その具体的なイメージは普遍宗教・アソシエーションである。

    本書で示されたように交換様式Cの資本主義がアウフヘーベンされて、交換様式Dのアソシエーションが成立するか、と問われればその可能性はほぼゼロであろう。その点で、この思想を空想の産物として否定することは容易い。しかしながら、我々が自明のものとしている民主主義社会というのは、果たして完璧なものなのかと問われれば、もちろんそうではなく、だからこそ、そのプロセスを少しでも目指すべき理念に近づけようと、近代社会は努力を続ける。そういう意味において、交換様式Dの世界が、少しでも我々の現実社会を理想に近づけるための思考の補助線となるのであれば、十分にこうした概念の理論的価値は存在するように思う。

  • これは文庫ではなく単行本やったかなあ。ベッドサイドの本棚にまだ並んでいる。(途中ということ)

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著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。1991年から2002年まで季刊誌『批評空間』を編集。著書に『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社 2021)、『世界史の構造』(岩波現代文庫 2015)、『トランスクリティーク』(岩波現代文庫 2010)他多数。

「2022年 『談 no.123』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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