歴史を哲学する――七日間の集中講義 (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006003425

作品紹介・あらすじ

過去の事実はどのようにして知ることができるのか。私たちは過去を想起し、その痕跡から歴史的事実に迫ろうとするが、そのとき唯一の客観的な「歴史的事実」とは何であるのか。「歴史の物語り論」「歴史修正主義論争」など歴史認識の問題を、科学哲学・分析哲学の立場から、七日間の講義という形式でわかりやすく解説する。現代文庫版では、「補講2」として歴史学者・遅塚忠躬の「歴史の物語り論」に対する批判にこたえた反批判も収録。人文科学の在り方を問い直す、知的刺激に満ちた本。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史(学)は科学か?物語か?有名な歴史学者との論争の反論が補講として追加。両者は対立しているように見えて、それほど違いはないのではないか?とも思える。講義内容は哲学・歴史学には無関係な一般学生向けなのでそれほど難しいものではない。ただし表面的説明に留まっているので、これは決着のつかないテーマへの探究の入口でしかないだろう。それにしても7日間の集中講義が1000円で数時間で繰り返し確認できるとは、あらためて本のコスパは最強だなって思う。

  • 「歴史は過ぎ去った過去の出来事の記述である以上、その出来事を直接に知覚することはできず、言葉による『語り(narrative)』を媒介にせざるをえない」(p.183)
    これがどういうことなのかを、かなり丁寧に解説してくれます。

    ただ、解説が平易でも、色々な学説を広く引っぱってきているので、読者への要求水準は高めかもしれません。
    著者が分析哲学(科学哲学)の人だから科学哲学だけ押さえておけばいいというわけではなくて、解釈学、現象学、心理学…も知っている必要があります。
    ただ、同じことについて別の視点から語っていることが多く(それこそ複数の射映を提示して志向的統一に至るということを読者に体験させようとしているようにも思われます)、一部が分からなくても要旨は分かるような本になっています。

    真理の対応説があまりに素朴であるが故に、整合説に立って論を展開する本書はどうしても直感に反するようなところがあるのですが、複数の射映によって分からせてくれようとするのはありがたいです。

  • 最近本を通読できない自分が何としても読了したいと思って頑張った1冊。薄くて講義形式なのでなんとか行けるかと思ったけれど、やはり歴史学や哲学、言語学に対する基礎知識がないので、専門用語が出てくるたびに意味を調べたり(しかもその時は理解したつもりになってもすぐ忘れて、あとになって出てくると再度調べなおしたり(汗))、感覚的にするっと読み進められる部分とそうでない部分とで濃淡はあったけれど、最後はだんだんと慣れてきて読めたかなという感じ。
    絶対的な客観的実存としての歴史は存在しない、という著者の歴史に対する基本的なスタンスは若いころに思いを巡らせた時間とか宇宙とかに対する認識・実在をめぐる問題(といっても当時哲学的に思考を深めたわけではないけれど)と通底するものがあったなーと思いだしながら読んで、それなりに納得するものはあったけれど、なんというか、哲学とか学術の世界における議論って、言葉をこういう使い方でしか言い表せないのか?と思うことはある。まあ、難解な言葉を使うのが学術であり哲学なんだけどね。
    でも、知性を鍛えるためにもこういう本を読み続けなければね。

  • 『物語の哲学』と合わせて。哲学塾の一冊の文庫化だが、このシリーズ、見た目よりけっこう難しめのが多い気がする。

  • 歴史の認識論をテーマに、歴史科の諸問題を扱っていました。この本を読んでよかったと思えた点が二つあります。一つは歴史について考える材料を得られたこと。少なくとも歴史について考える場合には「歴史はフィクションか」と「唯一の正しい歴史」が争点となるようです。もう一つは「科学とは何か」というより大きな問いへ向かうきっかけがこの本を通して得られること。『歴史は科学か』という主要な問いのなかで、科学哲学のいくつかの知見を分かりやすく解説しています。興味を持った議論を深堀りできるような仕方で解説しているので、参考文献などを通して知識を深めることができそうです。私自身は歴史科でも歴史に特に興味を抱いている者でもないですが、この本を読んでわかりやすくて、おもしろいなと思いました。また一方で、「どういった態度で研究しているのか」と実際の歴史研究者に尋ねてみると、また異なった意見が得られそうだなと思います。

  • 学術書(講義録だからそこまで厳密なものでもないけれど)を一気読みしたのはいつ以来だろう。本当におもしろかった。裏表紙の案内文に「人文科学の在り方を問い直す、知的刺激に満ちた本」とある通りだと思う。

    でもそれは文字通りの意味で「人文科学の在り方」に興味がないとたぶんあんまりおもしろくない(そもそも講義ってことは、語りかけの対象が人文科学の学生になるってことだし)と思う。

    逆に言えば人文研究を志す大学生には是非読んでほしい本と言えるんじゃないかと思う(参考図書の紹介も豊富だし。とりあえず僕は武田泰淳の『司馬遷』は読んでみようと思います)。少なくとも僕は学生時代にこの本を読みたかったです。

    そんな本。

  • 歴史はナラティブであるという説得力があり、わかりやすい解説です

  • 歴史哲学入門

    歴史は科学か
    という問いと
    デザインは科学か
    という問いは同型のように思った。
    よく考えたい。

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著者プロフィール

東北大学名誉教授,総長特命教授

「2016年 『現代哲学キーワード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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