貧困と飢饉 (岩波現代文庫 学術 366)

  • 岩波書店 (2017年7月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784006003661

みんなの感想まとめ

飢餓の原因を新たな視点から探求する本書は、食糧供給量の減少だけではなく、特定層の人々が食糧を得る権利が奪われることが飢餓を引き起こすと指摘します。この斬新なアプローチは、権原の概念を通じて、経済的能力...

感想・レビュー・書評

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  • 飢餓はなぜ起きるか。一国の食糧の供給量が減少すると飢餓は起きる、という1970年代までの通説に直接的な関連性がないことを示す。供給量が落ちていなくても、特定層の人々が十分な食糧を手に入れるための「権原(所得などの経済的能力と資格、entitlement)」が剥奪されると飢餓が起こるとしている。また、本書ではないが、センは民主主義では飢餓は起きない、誰もが発言を恐れない社会の重要性を解いている。

  • この分野に詳しくないので、最初は難しかったが、全体を読んでみて、なるほどと思った。昔の経済学の基礎的な本には出てこなかった話だ。貧困をどう定義するか、飢饉はどうして発生するのか、そして飢饉をどうやって防ぐのかという話。飢饉は権原(エンタイトルメント)が剝奪状態となることが原因で、それまで一般に信じられていた食料の不足が原因ではないと論じる。
    「権原」という言葉が、すんなり入ってこなかったが、例えば、資本主義の世界なら「所得」等を意味する(厳密にはそれだけではないのだが)。正しく理解できているかわからないが、要は、所得が減るなり、食料の価格が上がるなりして、食料が買えなくなるというのが、飢饉の原因で、必ずしも食料が足りないから飢饉が起きるわけではないという話。ベンガル大飢饉、エチオピア飢饉、サヘル地域の旱魃と飢饉、バングラデシュ飢饉という4つの飢饉を取り上げ、飢饉の原因を検証している。
    そこから、飢饉への対応策としては、炊き出しといった食料の直接的な供給だけでなく、権原を失った層の公共部門による雇用といった策などが重要と説く。
    本書は1970年代の研究の集成に、1990年の講演を加えたもので、その後の研究の発展については、訳者が本書の最後に解説しており、それも参考になった。

  • 飢饉を定義から問い直し、飢饉を一般的に・単純に考えられる食料不足からもたらされるものではなく、権原(自分が所有するもの、交換可能性)によってもたらされるという着眼点は斬新。権限は単なる所得や購買力ではなく、雇用制度や社会保障、相互扶助など公共政策も重要。1つの現象を定期から問い直し、その原因やメカニズムを事例をもとに分析して1つのアプローチに帰結させるという考え方はとても勉強になった

  • 貧しい国も貧しいうちは保健と教育に投資した方が良い。「(貧しい国が保健と教育に多くを支出する余裕があるのか)多くの貧しい国々――スリランカ、中国、コスタリカ、インドのケーララ州他――がまさしくそれに成功したという、実証的な事実について述べるだけではなく、裕福な国より貧しい国の方が公衆衛生・医療サービスや基礎教育制度を提供するコストがはるかに安いという、一般的な事実を理解する必要もある。その理由は、保健も教育も労働集約的な活動であり、貧しい国の方が賃金が低いために保健や教育のコストがずっと安くなるからである。(中略)国が非常に貧しいうちは、これらのサービスに支払わなければならないお金もまた、著しく小さいのだ。」

    日本の徳川時代と明治時代の比較研究までも引用している。かなり勉強になった。権原という訳語が少し難解だが、それ以外はわかりやすい。

  • 食料があるのに、人はなぜ飢えるのか? 世界各地の「大飢饉」の原因は、食料供給量の不足ではなく人々が食料を入手する能力と資格の?奪にあることを実証した画期的な書。原書刊行後の研究成果をまとめた講演も併録。〔2000年刊の訳文を改訂〕【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40251266

  • 飢饉は食料不足で起こるのではなく、交換権限写像の不足によって起こるのだということが全編を通して語られている。

    「好況が不平等な経済活動の拡大を伴っている場合、たとえば都市住民に有利に働き、農村の労働者を取り残す場合、好況のプロセスそれ自体が主要な役割を果たす。食料を得るための闘いは、他人のことは構わない世界であり、あるグループが他のグループの繁栄ゆえに苦しむこともあり得るのである。」

    1943年にベンガルに飢饉を引き起こしたメカニズム
    「当時の都市住民は戦時景気の恩恵を受けていた。日本軍が間近に迫っており、イギリスとインドの国防費はカルカッタを含むベンガルの都市部で集中的に支出されていた。いったん米価が高騰し始めると人々のパニックと投機的操作の影響によって米価はとどまるところを知らずに上昇していき、ベンガル農村部のほとんどの住民にとって手の届かないものとなった。」

    まるで今の日本のような話。戦争危機を煽り、一部の成長産業と軍拡のみに税金を注ぎ込む高市政権の下では、れいわ飢饉もそう遠くない未来の話なのかもしれない。

  • 開発目標2:飢餓をゼロに
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50068377

  • 簡単なメモ

    ・飢餓は食料供給の減少からなるというアプローチでは飢餓の十分な説明にはならず、所有の権限からのアプローチで飢餓を捕らえた方が有効なケースが多い。例えば供給量が十分でも、ある層の所得が急上昇して食料需要が上がり価格が上昇すると、それに取り残された少ない?権限しか持たない貧困層は食料を得られる機会が減少する。

    ・今、世界は気候変動で食料供給の不確実性が増しており世界中で同時に不作が起こるケースがあった場合、この権限アプローチは有効性を持つのだろうか?要するに、他国から食料を調達費用が急上昇した場合である。そのような場合、市場原理よりも政府含む公共部門が本書で述べられてる以上の役割を果たす必要があるのだろうか?

    ・農業品を国家の戦略物資にしているアメリカやロシアのような大国の農業品に対する価格優位が高まった場合、市場原理を重視したグローバル化が加速していくと現地生産が減少するだろう。コロナウイルスで見られたような国境封鎖が行われた場合、一気に食料不安が勃発する可能性も考えられる。農業品は、生産されるまで時間がかかり短期間で超過需要を満たすことは難しい。そのような集中化により脆弱性が高まることはないだろうか?

    ・農業品の市場化を押し進めると、民間の商人が価格を操作し価格を釣り上げる可能性も出てくる。本書で述べられているように備蓄量の増加はそれに対応する意味で必要である。日本に置いてもコメ先物が再開するかもという報道を目にした。為替相場の安定のためドル等外国通貨を大量に保有するように、相場の安定のために米の十分な備蓄が求められる。

  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/649509

  • 4.11/141
    内容(「BOOK」データベースより)
    『二〇世紀に世界各地で発生した「大飢饉」の原因とは、何だったのか。本書は、それが一国レベルの食料総供給量の不足によるものであるという通説を否定し、人々が十分な食料を手に入れる権原(能力と資格)が損なわれた結果であるということを実証的に解明している。開発経済学に新たな地平を切り拓き、後の「不平等理論」にも影響を与えた画期的な書。原書刊行後の研究成果をまとめた講演「飢餓撲滅のための公共行動」も併録。一九九八年ノーベル経済学賞受賞者の主著の一つ。』

    原書名:『Poverty and Famines』
    著者:アマルティア・セン (Amartya Sen) 
    訳者:黒崎 卓, 山崎 幸治
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎448ページ

  • インド生まれ、1998年にノーベル経済学賞を取ったアマルティア・センの著書。
    「飢饉」が何故起きるのかと探り、食料総供給量の減少によるという従来の通説(FAD)を、原因としてそれだけでは説明できないとして退け、或る階層の人々が食料を手に入れる権原が損なわれるためである、という自説を展開する(権原アプローチ)。
    実際の大飢饉、ベンガル、エチオピア、サヘル地域、バングラディッシュでの統計データに基づいて、詳しく分析しているのだが、数値データを経由して、現実界の様相がそれとはかけ離れた抽象的な学の論理へと跳躍するさまは、デリダなんぞを待つまでもなく脱構築的なスリリングさだ。経済学は社会学的観察から遠い数学的理論に突き進むというこの飛躍・断絶ゆえに面白い。
    もっとも、経済学の場合、抽象的理論に留まることなく、常にそれによって政策を導出しようという効用性が重要となる。ケインズの書物がこの実態を明瞭に示している。
    センの本書では、大飢饉という悲惨において、「実は国家全体としては食料供給量は十分な状態であり、あまつさえ食料を他国に輸出している状況にありながら、一部の国民はその食料が入手できずに餓死していく」という理不尽な現実を解明する試みとなっている。
    その後この経済学説が、学会においてどのように受容されているのか知らないが、少なくともこの本はひとつの「意外な知見」へと導かれるその道程によって面白い。
    もちろん、センはFADを全く否定しているわけではなく、「それとは別の仕方で」飢餓の原因にアプローチするひとつの手法を呈示しているのだと理解する。

  • 原書名:POVERTY AND FAMINES

    第1章 貧困と権原
    第2章 貧困の概念
    第3章 貧困―特定と集計
    第4章 飢餓と飢饉
    第5章 権原アプローチ
    第6章 ベンガル大飢饉
    第7章 エチオピア飢饉
    第8章 サヘル地域の旱魃と飢饉
    第9章 バングラデシュ飢饉
    第10章 権原と剥奪
    講演 飢餓撲滅のための公共行動

    著者:アマルティア・セン(Sen, Amartya, 1933-、インド、経済学)
    訳者:黒崎卓(1964-、宇都宮市、経済学)、山崎幸治(1962-、経済学)

  • 東2法経図・開架 B1/8-1/366/K

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著者プロフィール

1933年、インドのベンガル州シャンティニケタンに生まれる。カルカッタのプレジデンシー・カレッジからケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジに進み、1959年に経済学博士号を取得。デリー・スクール・オブ・エコノミクス、オックスフォード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ハーバード大学などで教鞭をとり、1998年から2004年にかけて、トリニティ・カレッジの学寮長を務める。1998年には、厚生経済学と社会的選択の理論への多大な貢献によってノーベル経済学賞を受賞。2004年以降、ハーバード大学教授。主な邦訳書に、『福祉の経済学』(岩波書店、1988年)、『貧困と飢饉』(岩波書店、2000年)、『不平等の経済学』(東洋経済新報社、2000年)、『議論好きなインド人』(明石書店、2008年)、『正義のアイデア』(明石書店、2011年)、『アイデンティティと暴力』(勁草書房、2011年)などがある。

「2015年 『開発なき成長の限界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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