- 岩波書店 (2020年2月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (372ページ) / ISBN・EAN: 9784006004170
作品紹介・あらすじ
貨幣の価値は一定であると我々は常識的に考えている。しかし、複数の通貨が存在して評価が多元的であるという事例は、歴史上、さまざまな地域、時代にあった。交換という行い自体が多様である以上、貨幣も多様にならざるを得ない――。謎に満ちた貨幣現象を、世界史の中で根本から問い直す。
感想・レビュー・書評
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もともとは世界歴史選書の一冊として2003年に刊行。2014年には増補新版が出て、本書はそれを底本とした現代文庫版となる。世界歴史叢書のほうもだいぶ以前に読んだが、今回、あらためて増補新版を読んだのは、先に『銀の流通と中国・東南アジア』を読んだからである。あらためて読んでみて、また非常に勉強になった。
本書は、「あとがき」(p.293)にもあるように「歴史的経験より貨幣の何たるかを帰納する試みである」である。世界史的に広がる貨幣の様々な態様を描きつつ、貨幣理論では常識とされているものが成り立たない世界の方が歴史的には常態であること浮かび上がらせている。現代の我々が当然のように想定している世界が歴史的にみてかなり特殊なケースなのだということだ。たとえば貨幣数量説の「常識」にしたがえば、貨幣数量が増加すれば(他の条件が等しければ)物価は上昇する。逆はその逆。しかし、実際の歴史のなかでは非常にしばしば理論的想定を裏切ることが起こっている。これはなぜか。あるいは「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則。実際には良貨であるがゆえに交換手段として機能するケースも多い。なぜか。
本位貨幣制度が世界を席巻する19世紀の末から20世紀にかけて、本書が考察の対象としている多元的で多様な貨幣が相互に補完し合いながら空間的・時間的広がりをもつ世界は失われつつあったが、それでも第1章で取り上げられているマリア・テレジア銀貨などを見ていくとその不思議な世界がほんのつい最近まであったことがよくわかる。「あとがき」によれば、第1章の元になっている論文は欧米圏の研究者にもピンときやすい事例として、中国史が専門の著者があえて選んだ事例ということだが、その効果は非常によく出ているように思う。つかみはOKというやつである。
それを踏まえて第2章では貨幣が本源的に空間的をともなうものであるが、「狭い空間の内側で平衡しようとする動機と、不安定さをともないながら広義の兌換性を築き上げようとする動機がせめぎあってきた過程であり、その衝突はさまざまな社会システムの興亡と結びついていた」(p.83)と貨幣の世界史全体の見通しが述べられている。
以下、第3章では貨幣の競存性が18世紀末のベンガルと中国を事例に論じられ、第4章では貨幣の画一性と多様性について中国貨幣の事例から考察されている。第5章は海を越えた銭貨流通を支えた共同体の構造とその解体についてで、日本の中世における銭貨流通も取り上げられる(この部分は補論「東アジア貨幣史の中の中世後期日本」でも詳しく論じられている)。第6章では社会制度、市場と貨幣の関係がさまざまな歴史事例に照らしながら類型化されていく。第7章は本位制の勝利と名づけられてはいるが、本当にめでたい勝利なのか……。第7章最後の節は「脱現地通貨化と恐慌」である。
そして終章は、全体のまとめとしての「貨幣の非対称性」となっているが、「あとがき」を読むと筆者の見解は「非対称性」よりも「貨幣の補完性」にその強調したい点が移ってきているようなので、そのように読んだ方がわかりやすいかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022I217 337.2/Ku
配架書架:A4 -
経済学はおカネの学問だと言われますが、貨幣は経済学にとってまさに鬼門です。ありとあらゆる貨幣論が乱立しています。しかし、貨幣論をやらずして経済学をやったとは言えません。本書は、混沌とした貨幣論の世界に踏み込むための一つの足掛かりになります。
(選定年度:2023~) -
東2法経図・6F開架:B1/8-1/417/K
黒田明伸の作品
