ロールズ政治哲学史講義 I (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006004200

作品紹介・あらすじ

ロールズが退職するまで三十年間ハーバード大学で行った「近代政治哲学」講座の講義録。自らの〈公正としての正義〉という構想に照らして、リベラリズムの伝統をつくった八人の理論家(ホッブズ、ロック、ヒューム、ルソー、ミル、マルクス、シジウィック、バトラー)を取り上げて解説する。『正義論』読解に不可欠の書。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:B1/8-1/420/K

  • タイトルの通り、ロールズが政治哲学史についての講義をまとめたものである。
    政治哲学を、あのロールズが語ったものなのである。とてもロールズらしさが出ていていい内容だった。具体的にいうと、①政治哲学史における主要な思想を、一つ一つ丁寧に読み解いて整理しながら解説しているところ②ロールズの主張や意見はあまり出さずに、正確に各人の思想を読み解こうとする姿勢がとても伝わってくるところだ。

    ものすごい本だった。めちゃくちゃ深く書かれていた。それゆえに自分自身理解が及んでいないところは各所あるかもしれないが、それを差し引いてもとても内容が素晴らしく、勉強になる本だった。
    また、訳も良かった。最初は直訳気味な訳文に多少は嫌気がさしたものの、読むにつれて逆にこの直訳気味な訳文が、逆説的に意訳せず丁寧な訳を心がけているということだと気づき、その価値に気付かされた。確かに直訳だと読みにくく感じるところもあるかもしれないが、その分ロールズの説明を正確に我々に伝えてくれることになる。そして、きっと直訳気味の中でもきっとわかりやすく訳してくれたのだと思う。

    面白いものの、難しい内容が499ページにもわたったため、正直最後は気合いで読んでいた。下巻も先日購入したが、少し英気を養ってから読むこととしたい。

  • 【書誌情報】
    原題:Lectures on the History of Political Philosophy (Harvard University Press, 2007)
    著者:John Bordley Rawls(1921-2002)
    編者:Samuel Freeman (unknown)
     〈https://web.sas.upenn.edu/sfreeman/
    訳者:齋藤 純一[さいとう・じゅんいち] (1958-)
    訳者:佐藤 正志[さとう・せいし] (1948-)
    訳者:山岡 龍一[やまおか・りゅういち] (1963-)
    訳者:谷澤 正嗣[やざわ・まさし] (1967-)
    訳者:高山 裕二[たかやま・ゆうじ] (1979-)
    訳者:小田川 大典[おだがわ・だいすけ] (1967-)

    出版社:岩波書店
    定価:本体1,880円+税
    通し番号:学術 420
    刊行日:2020/04/16
    ISBN:9784006004200
    版型:A6版 並製
    頁数:499 + xlii
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b505585.html


    【I巻 目次】
    献辞 [iii]
    編者の緒言(サミュエル・フリーマン) [v-xxi]
    序言(ジョン・ロールズ) [xxiii-xxv]
    目次 [xxvii-xxxv]
    凡例 [xxxvii-xxxviii]
    引用文献 [xxxix-xli]


    序論――政治哲学についての見解 001
      第一節 政治哲学をめぐる四つの問い 001
      第二節 政治哲学の四つの役割 018
      第三節 リベラリズムの主要な観念――その源泉と内容 020
      第四節 リベラリズムの中心テーゼ 024
      第五節 初期状況 029
    注 038


    □HOBBES 043

    講義I ホッブズの世俗的道徳主義と社会契約の役割 044
      第一節 序論 
      第二節 ホッブズの世俗的道徳主義
      第三節 自然状態と社会契約の解釈
      補遺A 自然状態を不安定にする人間性の特徴(ハンドアウト)
      補遺B
      補遺C 寛大な本性の理念に関連した箇所
    注 078

    講義II 人間性と自然状態 081
      第一節 はじめに
      第二節 人間性の主要な特徴
      第三節 ホッブズの命題のための議論
      補遺A  自然状態→戦争状態というホッブズの主張のアウトライン(ハンドアウト)

    講義III 実践的推論についてのホッブズの説明 104
      第一節 理に適っていることと合理的であること
      第二節 市民和合の理に適った条項の合理的基礎
      補遺A  ホッブズにおいて道徳的義務は存在するかどうか
      補遺B  ホッブズの自然法――『リヴァイアサン』第14-15章
    注 144

    講義IV 主権者の役割と権力 146
      ホッブズと立憲デモクラシーについての結語
      補遺A 主権者の役割と権力(ハンドアウト)
      補遺B 『市民論』と『リヴァイアサン』の対照について――主権者の再-制度化
    注 187

    補遺 ホッブズ索引 [188-199]


    □LOCKE 201

    講義I ロックの自然法の教義 202
      第一節 序言
      第二節 自然法の意味
      第三節 根本的自然法
      第四節 平等の状態としての自然状態
      第五節 根本的自然法の内容
      第六節 自然権の基礎としての根本的自然法 
    注 237

    講義II 正統な体制に関するロックの解釈 245
      第一節 混合政体下における抵抗
      第二節 正統性に関するロックの基本的な論点
      第三節 正統な政治体制をめぐるロックの基準
      第四節 個々人の政治的義務
      第五節 憲法制定権力と政府の解体
    注 277

    講義III 所有権と階級国家 281
      第一節 問題の提示
      第二節 問題の背景
      第三節 ロックによるフィルマーへの返答I ――第4章
      第四節 ロックによるフィルマーへの返答II ――第5章
      第五節 階級国家という問題
      第六節 階級国家の起源に合わせた物語
    注 319



    □HUME 323

    講義I 「原初契約について」 324
      第一節 序言 
      第二節 ロックの社会契約に対するヒュームの批判 
    注 353

    講義II 効用,正義,そして賢明な観察者 354
      第一節 効用の原理についての所見 
      第二節 正義という人為的徳 
      第三節 賢明な観察者 
    注 381


    □ROUSSEAU 385

    講義I 社会契約――その問題 386
      第一節 序論
      第二節 政治社会前史の諸段階
      第三節 政治社会と政治的権威の段階
      第四節 社会契約との関連
      補遺A ルソー――人間本性の自然な善性の教義
      補遺B
    参考文献 425
    注 427

    講義II 社会契約――諸仮定と一般意志(一) 431
      第一節 序 論
      第二節 社会契約
      第三節 一般意志
    注 458

    講義III 一般意志(二)と安定性の問題 460
      第一節 一般意志の観点
      第二節 一般意志――法の支配,正義,平等
      第三節 一般意志と道徳的・政治的自由
      第四節 一般意志と安定性
      第五節 自由と社会契約
      第六節 ルソーの平等に関する諸観念――どの点に特色があるか 
    注 498


    【II巻 目次】
    目次 [iii-xiii]
    凡例 [xv-xvi]
    引用文献 [xvii-xix]


    □MILL 501
    講義I ミルの効用の考え方 502
      第一節 序言――ジョン・ステュアート・ミル(1806-1873年)
      第二節 ミルの功利主義を読む一つの仕方
      第三節 最終目的としての幸福
      第四節 確固とした選好の基準
      第五節 確固とした選好の基準についてのさらなるコメント
      第六節 ミルの根底にある心理学
    注 531

    講義II 正義についてのミルの説明 532
      第一節 ミルに対する私たちのアプローチ
      第二節 ミルによる正義の説明
      第三節 道徳性における正義の位置
      第四節 ミルにおける道徳的権利の特徴
      第五節 ミルの二面的基準
      第六節 他者と一体であろうとする欲求
    注 566

    講義III 自由原理 570
      第一節 『自由論』(1859年)の問題
      第二節 ミルの原理についての予備的な論点
      第三節 ミルの述べる自由原理
      第四節 自然権(抽象的権利)について
      結論
    注 595

    講義IV 全体として見たミルの教義 597
      第一節 序論
      第二節 ミルの教義の枠組み
      第三節 人類の恒久的利益の最初の二つ
      第四節 他の二つの恒久的利益
      第五節 確固とした選好の基準との関係
      第六節 個性との関係
      第七節 卓越主義的な価値の位置
    注 631

    補遺 ミルの社会理論についての意見 632
      A 予備的な意見――社会理論の背景 
      B 『代議制統治論――理想的に見て最良の政体と進歩の目標』 
      C 『経済学原理』 


    □MARX 639
    講義I 社会システムとしての資本主義に関するマルクスの見解 640
      第一節 はじめに
      第二節 社会システムとしての資本主義のいくつかの特徴
      第三節 労働価値説
      補遺
    注 671

    講義II 権利と正義についてのマルクスの構想 675
      第一節 正義についてのマルクスの見解におけるパラドックス
      第二節 法律的構想としての正義
      第三節 マルクスは資本主義を不正義として非難している
      第四節 分配についての限界生産性理論との関係
      第五節 価格のもつ配分的役割と分配的役割
    注 713

    講義III マルクスの理想――自由に連合した生産者たちの社会 716
      第一節 正義についてのマルクスの考えは一貫しているか
      第二節 なぜマルクスは正義についての考えを明示的に議論しないのか
      第三節 イデオロギー意識の消滅
      第四節 疎外のない社会
      第五節 搾取の不在
      第六節 完全な共産主義――社会主義の初期の欠陥の克服
      第七節 完全な共産主義――分業の克服
      第八節 共産主義の高次の段階とは正義を超えた社会なのか
      むすび 
    注 756


    □補遺 APPENDIXES 759

    ヘンリー・シジウィック四講 760
    第一講 シジウィック『倫理学の方法』 760
      第一節 はじめに
      第二節 『倫理学の方法』の議論の構造
    第二講 正義と古典的効用原理についてのシジウィックの見解 780
      第一節 正義についてのシジウィックの説明
      第二節 古典的効用原理についての説明
      第三節 効用の個人間比較(IP比較)についてのコメント
      第四節 合理的な倫理学の方法の第一原理として見た場合の効用原理の特徴
      第五節 説明のための事例としての自然的自由に対する批判
      第六節 効用原理の定義についての補足
    第三講 シジウィックの功利主義 795
      第一節 功利主義についての序論 
      第二節 古典的効用原理についての説明(シジウィック) 
      第三節 効用の個人間比較についてのいくつかのポイント 
      第四節 個人間比較の十分な測定単位にとっての哲学的な制約 
      第五節 最大多数の最大幸福,ならびに総効用最大化説と平均効用最大化説の対立について 
      第六節 むすび 
      補遺 基数的な個人間比較について828
    第四講 功利主義の要約 832
    注 839

    ジョゼフ・バトラー五講 846
    第一講 人間本性の道徳的な構成原理 846
      第一節 序論――バトラーの生涯(1692-1752年),作品,ねらい
      第二節 バトラーの敵対者
      第三節 人間本性の道徳的な構成原理
    第二講 良心の本性と権威 858
      第一節 序論
      第二節 私たちの道徳的能力の特徴
      第三節 良心の権威についてのバトラーの議論の概要――第二説教
      第四節 良心の権威についてのバトラーの議論の要約
    第三講 情念の有機的組織 882
      第一節 序論 
      第二節 バトラーの方法
      第三節 同情の役割――人間の社会的本性の一部としての 
    第四講 利己主義に対するバトラーの反論 896
      第一節 序論
      第二節 快楽主義的利己主義に対するバトラーの異論
    第五講 良心と自己愛の間に想定される葛藤 911
      第一節 序論
      第二節 バトラーの議論が首尾一貫してないと見なされる理由――良心と自己愛について
      第三節 バトラーの道徳的心理学のいくつかの原理
    補遺 バトラーについての補足事項 924
    注 937

    講義概要 940


    訳者あとがき(二〇一一年八月 訳者を代表して 齋藤純一) [945-953]
    訳者あとがき(二〇二〇年三月 齋藤純一) [955-959]
    人名索引 [18-22]
    事項索引 [1-17]

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著者プロフィール

ジョン・ロールズ (John Rawls)
1921-2002年。アメリカの倫理学者。元ハーヴァード大学教授。1950年プリンストン大学にて「倫理の知の諸根拠に関する研究」で博士号取得。コーネル大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)を経て、1962年ハーヴァード大学哲学部教授に就任、哲学科主任を経て、1991年より名誉教授。ほかの著書に『正義論』(改訂版、川本隆史・福間聡・神島裕子訳、紀伊國屋書店、2010年)、『万民の法』(中山竜一訳、岩波書店、2006年)、『公正としての正義 再説』(エリン・ケリー編、田中成明ほか訳、岩波現代文庫、2020年)、『ロールズ政治哲学史講義』(Ⅰ・Ⅱ、サミュエル・フリーマン編、齋藤純一ほか訳、2020年)などがある。

「2022年 『政治的リベラリズム 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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